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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第19章:中国・過去と未来の交錯地【2030年1月6日】
255/294

第255話:脳波操作力

挿絵(By みてみん)


わたしは夢華に問う。

「まさか、あの変面のアバター、あなたが脳波操作(コントロール)していたの?」


夢華は汗をぬぐい、そしてワインを口に含んだ。

「ええ、そうよ」


人型アバターを操作して、あそこまで繊細な動きができるなんて……。

数か月前は、お互いぴくりとも動かせなかったのに、まさかここまで実力差が開いてしまったんだろう。


アレクも驚きを隠せない。

変面(あれ)は、相当な修行を積んだ人にしかできない技のはずだ。ましてやそれを、アバターでやるなんて、一体どんな魔法を使ったんだ?」


「簡単な話です。夢華さんは、″選ばれた人"ですから」

さっきまで太鼓を叩いていた、長髪の白化粧の男性が、突如口を開いた。


――え、誰?


そういえば、北京ダックを運んできた料理人はとっくに退室したのに、彼だけは部屋に留まり続けている。


「君は?」

アレクが、珍しく少し棘のある口調でいう。


「ああ、申し遅れました」

彼は頭の宝冠を外すと、一緒に黒髪もすぽっと外れ、下から短髪が現れる。


どうやら、宝冠と長髪のウィッグがセットになった被り物だったらしい。

彼が、その顔を濡れタオルでゴシゴシと落とすと、ようやく地の顔が顕わになる。


――あれ、この顔ってどこかで……。


知り合いではないはずだけど、うっすらと見覚えがある。


男は、明瞭な日本語でわたしに言った。

「リンさんには、一度ご挨拶させていただいたはずです。エチオピアのアディスアベバでね」


……あ、そういえば。

アフリカ連合会議のすぐ前に、どこからともなく現れて、自己紹介だけして風のように去っていった男がいた。


星が言うには、たしか世界で最も勢いのある、ロボット製造ベンチャーの創業者だった


「アレクサンダーさん、初めまして。天機科技のCEOの(ウェイ)(ジィエン)(フォン)です」

そう言って、アレクに握手を求める。


少し戸惑いながらも差し出されたアレクの手を、彼は両の掌で包みこみながら、こう言った。


「あの、変面のアバターは、私の会社が作ったものです。よろしければ、アレクサンダーさんの分もご準備しますよ。射手(アーチャー)に特化したバージョンをね」


――どうやら、わたしたちのことを相当調べ上げているようだ。


ここで、夢華が口を開いた。

「十萌さんから、事情は聞いているわ。アバター操作、踊り場(スランプ)に差し掛かっているってね」


わたしは思いっきり首を縦に振る。

そもそも、中国(ここ)に来たのも、踊り場(スランプ)から抜け出すためだ。


「そもそも、アバターの操作力というのは3つの要素の掛け合わせで決まるってこと、知ってた?」


夢華の問いに、わたしは首を振る。


「一つ目は操作者の能力、二つ目は増幅器(ブースター)の性能、そして三つ目が受け手としてのアバターの性能。この三要素のシンクロ率で、アバターの脳波操作力が決定するの」


――そうか。

だからこそ星は、増幅器(ブースター)の研究をしていたのだろう。


夢華が、建峰をちらりと見て言う。

「彼の会社のアバターの生産力は、世界でも群を抜いている。だからこそ、私とも限りなくシンクロ率を高められるの」


挿絵(By みてみん)

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