表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第19章:中国・過去と未来の交錯地【2030年1月6日】
252/293

第252話:魔都

挿絵(By みてみん)


 2030年1月6日 中国・上海


「ここが、魔都・上海……」

 わたしは、眼下に広がる光の洪水に圧倒される。


「あれが、浦東の近代ビル建築群です」

 飛行機の窓から見える景色を指差しながら、CAさんが笑顔で説明してくれる。


「でも、あの場所(ザ・バンド)をご自身で歩いたら、きっともっと驚かれるはずですよ」


 ――すでに十分驚いているんだけど……。

 と思いながらも、そこまで言われると否が応でも期待が高まる。


 1時間後。

 アレクとともに、実際にその地に降り立った時、その言葉が決して誇張ではなかったことを知った。


「こいつは、凄いな。”魔都”と呼ばれるだけのことはある」

 世界中の建築を見てきたアレクをして、そう呟かせるほど、その光景は圧巻だった。


 11の球体が連なる″東方明珠塔”と呼ばれるタワーをはじめ、極彩色の光を放つ近未来的な高層タワー群だけでも、十分に個性的だ。


 でも、こうして実際に黄浦江沿いを歩いてみると、それは上海の魅力のほんの一部に過ぎないことに気付く。


 むしろ真に独特(ユニーク)なのは、背後に広がっているクラシックな西洋建築群だ。

 19世紀に、イギリス、フランス、アメリカを中心とした列強に共同統治されていた上海は、その頃の空気が今も色濃く残っている。


 黄浦江を境に、近未来的なビルの群れと、租界時代の西欧建築群が混然一体となっている。

それこそが、サイバーパンク的な唯一無二の情景を生みだしているのだろう。


「……それにしても、恐ろしいまでの人だな」

 アレクが苦笑する。


 2023年にインドに抜かれたとはいえ、いまなお14億人もの人口を抱える中国全土から、この景色を一目みようと、ザ・バンド(この地)に押しかけているのだから無理もない。


 押し寄せる人波をどうにか滞留させまいと、何十人もの警備員が、大声で叫びながら必死に誘導している。


 ――渋谷のスクランブル交差点の人込みを、人口比に合わせて十二倍くらいにしたら、こんな感じになるのだろうか。


 そんなことを考えながら歩いていると、前方に緑色のピラミッド型の屋根を冠する西欧建築が目に入る。


「あ、あれのことかな?」

 アレクが頷く。


 夢華に指定されたレストラン(場所)は、和平飯店と呼ばれる外灘(ザ・バンド)に面するホテルの中のレストランだった。


「このファサードは、アールデコ様式だな」

 建築家のアレクが一目で見抜く。


 重厚な石造りのベージュ色の外壁が、夜のライトアップで暖かな金色に輝いている。


 玄関を抜けると、タキシードを着た長身の男性が、流暢な英語で話しかけてくる。

「深山リン様と、アレキサンダー・カサノヴァ様ですね。お待ちしておりました。8階で、夢華様がお待ちです」


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ