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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第18章:モロッコ・赤と青の世界【2030年1月3日】
251/291

第251話:朝の地平

挿絵(By みてみん)


「どう、一度、夢華のところに行ってみない?」

 十萌さんが優しく言う。


「夢華のところって……中国ってことですか?」

「ええ。エベレストでの挑戦を終えて、ちょうど明日、上海に戻るらしいから」


 急な申し出に迷っていると、隣のアレクが口を挟んできた。

「リン、君は夢華に会いに行くべきだ。もちろん、私も同行する。まだ私は、夢華から告白の返事もらっていないからね」


 ――はぁ!?


 わたしは思わず、椅子からずり落ちそうになった。

 たぶん、彼の言う『告白』というのは、鎌倉の最後のパーティーの時、ずっと口説いていたときのことだろう。


 ただ、傍目からても、夢華はいつもの塩対応だった。

 というよりも、アレク(イコール)プレーボーイというイメージが定着しすぎていて、単なる通常運転(ルーティーン)だと勘違いしていた節さえある。


「そうね。アレクも同行してくれるなら安心だわ」

 十萌さんが楽しそうに笑う。


「僕は、もう少しここに残って、実験を見ていくよ。『宇宙兄弟』の世界を体験できる、せっかくのチャンスだからね。それに……」


 そう言って、ミゲーラはわたしに軽くウィンクした。

「星のことは、しばらくは僕が見ておくから、安心して」


 ――確かにミゲーラもいてくれるなら安心だけど……。


 それにしても不思議な展開になってきた。

 一時的とはいえ、もともとシルバとの協力関係にあったアレクが去り、外から来た星とミゲーラがこの地に残るだなんて……。


 成り行きを見ていた梨沙さんが、こう結論づけた。

「じゃ、決まりだな。今夜はもう遅い。明日の早朝には、中国に飛べるように手配するから、出発の準備しておいてくれ」


**********

2030年1月6日 モロッコ・サハラ砂漠


 朝6時半。

 シルバ、星、そしてミゲーラに別れを告げたわたしとアレクは、梨沙さんが手配してくれた政府専用機に乗り込んだ。


 フライトアテンダントさんが毛布を持ってきてくれた。

「中国・上海までは、約12時間ほどの旅となります。どうぞ、ゆっくりとお休みになってください」


 モロッコの旅の見納めにと、窓の外に目をやる。


 ちょうど、日の出の時間になったのだろう。

 ぶ厚い雲と、砂丘の地平の隙間を縫うように、眩い朝日が砂漠を照らし始める。


 わたしは、この地平の遥か先にいる夢華()のことを想いながら、そっと目を瞑った。


挿絵(By みてみん)

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