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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第18章:モロッコ・赤と青の世界【2030年1月3日】
248/292

第248話:クロスロード

挿絵(By みてみん)


「本当に、それでいいの?」

 この基地に残るという星に、わたしは尋ねる。


 曲がりなりにも幼馴染だ。

 宇宙やメカエンジニアリングに賭ける、星の想いの強さは知っている。


 けれど、このモロッコの地に残って働くということは――。

 星が、カイの思い描く未来との決別することを意味するはずだ。


「カイは親友だよ。でも、だからこそ並び立ちたいんだ。彼の後を、一生追い続けるんじゃなくてね」


 ――リンも、分かるはずだよ?

 そう、その目が訴えかけている。


 何も言えなくなる。

 わたし自身、二人の天才、カイと星に取り残されまいと、ここまで必死で走ってきた。


 けれど、星もまた、カイに対して同じ想いを抱えているということなんだろう。

 むしろ、その才気ゆえに、カイとの距離の遠さが、より鮮明に視えているのかもしれない。


「でも、それだけじゃない。リンのことも、なんだ」


 ――へ、わたしのこと?

 思わず、瞬きする。


「リンの心の中には、ずっとカイがいた。それでいいと思っていた。でも、今は、それに嫉妬している自分に気付かされたんだ」


「は? え!?」

 今度は心の声が口から洩れた。


「だって、あの時――」


 かつて、思いの丈を込めて星に告白し、振られた時のセリフを思い出す。

「僕は、リンが好きだ。でもそれは、カイに抱く感情と一緒なんだ。だから、リンを選ぶことはできない」


 わたしは、その言葉を、『親友以上の特別な感情を抱けない』ということを、婉曲的に伝える断り文句だと捉えていた。


「僕にとって、リンはずっと、守らなければいけない相手だと思っていたんだ。でも、ペルーで、リンに救われたときに気付かされたんだ。カイだけでなく、リンもまた、とっくに僕の前を歩いていたんだってね」


「そ、そんな。わたしなんて」

 カイに対して劣等感を抱くのはまだ理解できる。でも、まさかわたしにまで……。


「だから、カイを好きなリンの気持ちを含めて、リンをそのまま愛せるような自信が欲しいんだ」

 そう言って、星の右の掌が、わたしの頬に触れる。


 わたしは、少しだけど、本当に少しだけど、身構えてしまっている自分に気づく。

 そうさせているのは、脳裏に浮かんだカイの顔だ。


 正直、わたしがカイを好きなのかは分からない。

 だけど、今、わたしの心に浮かんでいること自体は、否定できない事実だ。


 やがて星は手を離し、少しだけ寂しそうに笑った。

「やがて訪れる火と氷の未来で、僕らの道を再び交差させるために、僕はここに残るよ」


挿絵(By みてみん)

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