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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第18章:モロッコ・赤と青の世界【2030年1月3日】
244/291

第244話:遥かなるアトラス山脈

挿絵(By みてみん)


「月面基地建設のその先って……!?」

 ほとんど身を乗り出すような勢いで、星がシルバに尋ねる。


 何せ、メカ好きで、宇宙好きの彼にとって、寝食を忘れるくらい没頭しているテーマだ。


「そのプロトタイプに、今から案内するよ」

 シルバは星の背中をぽんと叩き、ジェットに乗り込むように促す。


 よほど興奮が抑えられないのだろう。

 機内の最前列の窓際に座ると、離陸後もずっと、喰いつくようにまどの外の景色を見つめ続けている。


 数十分ほど経ったころだろうか。

 シルバのアナウンスが機内に響く。


「これより、当機は、アトラス山頂付近を低空飛行する。ジェット気流が吹き荒れているから、しっかり掴まっててくれ」


 ――へ、なんでわざわざ?

 飛行機なんだから、高度を上げて気流を避ければいいだけなんじゃ……。


「つまり、そこに見せたいものがある――ということですね?」

 星が言う。


「ああ、あくまでその一部だがな」


 不意に、『ガタン』という音がしたかと思うと、機内が揺れだした。

 どうやら山頂の突風域に突入したらしい。


 やがて、機内のアラームがビービーと鳴り出し、人工音声がシートベルトを締めるように警告する。


「あれが、高きアトラス山(ハイ・アトラス)脈の頂点、トゥブカル山だ。標高4167メートルだ」

 そんな状況を全く意にも介さないように、シルバがアナウンスする。


 わたしは、シートベルトを握りしめながら、窓の外に目をやる。

 すると、山頂に限りなく近い、ゆるやかな傾斜面に、明らかな異物があった。


 ――あれは、基地?


 けれど、その形状は、普通のものとは程遠かった。

 なんだか、ハリウッドの映画にでてくる、ドーム状の近未来的な建物だ。


 ――え!?今、人影が見えたような。


 吹雪が吹き荒れているはずの、基地の外を出歩くなんて自殺行為だ。

 わたしは思わず目を擦ると、次の瞬間にはその人影は消えていた。


 きっと目の錯覚だったんだろう。


 やがて飛行機が雲の上まで再浮上すると、揺れが収まり始め、ようやくわたしはほっとする。

 正直、こんなところでは死にたくない。


 胸をなどおろしたのもつかぬ間、シルバが新たなアナウンスを行う。

「まもなく我々の目的地に到着する。着陸準備をしてくれ」


「え、でも、この周辺に滑走路なんて……」

「我々のチームメンバー以外では、初めてのゲストだ。着地(タッチダウン)を楽しんでくれ」


 そう言って、シルバは一機に高度を下げていく。再び機体がぐわんと揺れる。


 シルバが軍隊出身だからか、あるいはただの性格なのか――。

 どう見ても、スピードやリスクへの感覚が、一般人離れしている。


 さっきの雪景色から一転し、赤土の砂漠へと位相を変える。

 そのど真ん中に現れたのは、巨大な滑走路だった。


 ボンバルディアが跳ねるように着地(タッチダウン)し、シルバの声が機内に響く。

「火星移住計画の、最前線にようこそ」


挿絵(By みてみん)

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