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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第18章:モロッコ・赤と青の世界【2030年1月3日】
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第236話:赤の都市

挿絵(By みてみん)


「なんで、マラケシュは″赤の都市″と呼ばれているの?」

 モロッコの首都・マラケシュ行きの機内で、アレクに尋ねてみる。


「マラケシュは、11世紀にアルモラヴィド朝によって建設された。その時代の建築物には、赤い土が使われたものが多いんだ」


 そう言ってアレクは、グラスに注がれた赤ワインを、手の中で弄ぶ。


 ――っていうか、この男(アレク)、昨晩から飲み続けている気がするんだけど、大丈夫だろうか?


「スペイン人にとって、ワインは水みたいなもんなんだよ。ま、到着すれば分かるさ。特に、夕陽に染まるマラケシュの美しさは格別だよ」

 そういって、再びワインを口に含む。


「そろそろ到着だ。着陸態勢に入ってくれ」

 シルバの声が社内に響く。


「本当に、アフリカまで1時間もかからないで到着するんだね」

 ”音速超え”という、ボンバルディアの最新鋭機の売り文句は、どうやら伊達じゃないらしい。


 わたしは、ぐっとお腹に力を入れ、着陸の衝動に耐えた。


 **********

 2030年1月3日 モロッコ・マラケシュ


「ここが、赤の都市……」

 わたしは眼前の情景に目を奪われる。


 夕陽が射し始めたマラケシュは、その名にふさわしい色合いを湛えていた。

 赤土で固められた建物は、深紅の夕陽に照らされ、さらにその色を濃くしていく。


「あれって、何て山?」

 冠雪が山頂を純白に彩る山脈を指さし、わたしは星に尋ねる。


 どうやら彼は、父親の創さんに連れられ、地質調査でこの地に来たことがあるらしい。


「アトラス山脈だよ」

 アフリカと雪、というとイメージが上手く結びつかないけど、ポルトガルから1時間と考えると、むしろヨーロッパ気候の方が近いのかもしれない。


「アトラスというのは、巨人を意味しているんだ。かつて、あの山脈を見たギリシャ人やローマ人が、『天を支える巨人』に例えたことから、そう名付けられたと言われている」


 その時代の人にとっては、あの山脈は決して越えられない存在だったのだろう。


 あの山の先には、何があるんだろうか――。

 わたしは、かつて古代ギリシャ人が何度もよぎった思いに耽る。


 そのとき、後ろでミゲーラが気の抜けた声を出した。

「お、お腹減ったぁ……」


 そういえば、昼から何も食べていない。


 夕陽が地平線に落ち、すっかり夜が更けてきた。

 もう、夕ご飯の時間だ。


 星が笑いながら言う。

「マラケシュで一番賑わっている夜市に、モロッコ名物を食べにいこうか?」


挿絵(By みてみん)

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