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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第17章:ポルトガル・新大航海時代【2030年1月2日】
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第230話:カーネーション革命

挿絵(By みてみん)


「君たちはポルトガルは初めてか?」

 シルバは早い弾道のボールを、ミゲーラの方に蹴る。


「ええ」

 ミゲーラは難なくボールをトラップすると、シルバの方に蹴り返す。


「なら、連れていきたい場所がある」

 シルバが、更に強いボールをミゲーラに向かって放つ。


 ミゲーラはアクロバティックな体勢でボールを捌くと、かろうじてシルバに向かって弾を送り返す。


「カポエイラ仕込みか、面白い」

 シルバはニヤリと笑うと、渾身の力を込めたシュートを、ミゲーラに向かって放つ。


 間近で見るプロのサッカー選手のシュートは、ほとんど殺人級だ。

 トラップしようとしたミゲーラの右足がはじかれ、ボールが空へと舞う。


 ボールの落下予測地点に、シルバが身を置いたその時。


 ミ―ゲラが短く息を吐いた。

 ――ゾーンに入った。


 次の瞬間、ミゲーラの体は宙を舞っていた。


 ――あ、これ、まんま『キャプテン翼』じゃん。

 思わずそう呟いてしまうような、美しいオーバーヘッドキックだった。


 弧を描くかのように空気を裂いたボールは、ゴールポストに当たり、わたしに向かって跳ね返ってくる。同じくゾーンに入ったわたしも、見よう見まねで右足を振りぬく。


 翼の永遠のライバル、日向君のシュートのように、ゴールネットを突き破る―。


 そんな脳内イメージとは裏腹に、わたしが蹴ったボールは芯をとらえることはできなかった。ふらふらと空中を舞い、何度かバウンドをし、やがてコロコロと転がりながら、何とかゴールネットまで辿り着く。


 ――きっと夢華なら、カッコよく決めたんだろうな。

 そう思いながらも、笑顔で手を差し伸べてくれるミゲーラとハイタッチをする。


 わたしは自分に言い聞かせる。

 どんなに不細工でもいい。一歩一歩でも、ゴールにさえ進んでいけるのなら。


 **********


「あ、4月25日橋!」

 星が近づいてくる巨大な赤い橋を指さし、声を上げる。


 ――4月25日橋……!?

 奇妙すぎるその名前に、わたしは思わず問い返す。


「1974年4月25日に起こった、カーネーション革命にちなんだ通称だよ。40年間続いた独裁政権を無血で打倒した記念に、そう名付けられたんだ」


 星の言葉に、シルバが誇らし気に頷く。

「世界的に見ても、当時、無血革命は極めて稀だった。後のチェコのビロード革命や、東ドイツの平和革命の先駆けといっていい」


「ポルトガルって、いろいろな意味で開拓者だったんですね」


 シルバは、どこか遠い目をして言う。

「ヨーロッパ大陸の端の端だからな。前に進むしかないのさ」


 だからこそ、エンリケ航海王子や、ヴァスコ・ダ・ガマのような、開拓者が生まれたのかもしれない。 


 歴史に思いを馳せながら、視線を海の向こうに移すと、不意に、とんでもない大きさの像が飛び込んできた。


「え、あれって、もしかして……」


挿絵(By みてみん)

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