表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第15章:南米・とある文明の誕生と消滅【2029年12月26日】
204/291

第204話:天罰

挿絵(By みてみん)


「そのアバターは、ちょっとばかり厄介だ。ゆっくりと俺の目の前まで下ろしてこい。そいつの眉間を撃ち抜いてて破壊してやる」


 上空に舞い上がったハヤブサ型アバ(ライトニング)ターが、脳波操作による戦闘用兵器であることを、既に男は知っている。


 星とルミを人質に取られている以上、急降下による不意打ちは通用しない。


 わたしはアバターをゆっくりと降下させながら、男に尋ねる。


「どうして、あのアバターのことを知ってるの?」

「サウジで、あんだけ目立ってれば、そりゃあな」

 リカルドが嗤う。


 あのテロの一件は、関係者だけの間で伏せられているはずだった。

 それを知っているということは、内通者がいるか、もしくは、教団(彼ら)自身が仕掛け人なのかのどちからだ。


 わたしは、教団の底知れぬ影響力に慄然とする。


 ライトニングが、5メートル頭上まで下りてくる。

 それをちらりと見ると、リカルドは言う。


「いい子だ。なら、そいつを、俺とお前の対角線上にまで下ろしてこい」


 やはり、相手はプロだ。

 対角線にアバターを置けば、仮にライトニングが弾丸を回避できたとしても、その弾丸はわたしに直撃する。


 リカルドの銃の標準が、アバターの眉間に合わさったとき。

 星が呻くように、()()()()いった。


(いかづち)……を」

 男の注意が一瞬だが、星の方へと逸れる。


 瞬間、わたしは、全力で脳波を飛ばす。

 耳をつんざくような高音が、アバターの口から発せられる。


 隼型アバター(ライトニング)の体内に蓄積されていた”衝撃波(ショックウェーブ)”が、前方に向かって放たれる。


 リカルドが引き金を引くよりも早く、その衝撃波が彼に直撃する。

 彼の体が、弾かれたように後ろに倒れる。


 手下の二人は、呆気にとられたようにこちらを見つめている。


「ライトニング!」

 ハヤブサの影が、星を足蹴にしたオールバックの髪の毛に掴みかかる。


 その隙にわたしは斜め前方に飛び、木の枝を掴むと、男の腹部に突きを喰らわせる。

 オールバックの男は、髪を振り乱しながら、身体を”くの字”にして崩れ落ちる。


 わたしは、そのまま棒を片手に、ルミをひょろりとした男の方に走っていく。

 男は呆然としていたが、やがて状況を理解したらしく、声を震わせながら叫ぶ。


「こ、この女がどうなっても……」

 その言葉が終わらないうちに、男の側頭部を殴りつける。彼の横に吹っ飛ぶ。


 男の束縛が解かれ、倒れかかったルミを受け止めると、ゆっくりと地面に座らせる。


 リカルドの呻き声が聞こえる。

 わたしは彼の元に駆け寄り、その手からすかさず銃を奪うとともに、巨木から垂れていた蔓を引きちぎり、それで三人を両手を後ろで縛り上げた。


 わたしは、ライトニングを自らの肩に泊まらせる。

 その身体は、衝撃波生成の余波なのか、仄かに熱い。


 サクサイワマンで受け取った、梨沙さんのメッセージを思い出す。

「こいつには、もう一つ新機能が搭載されてるんだ。それは……”サンダージェネレー(雷生成機能)ター”だ」


 全く意味が分かっていないわたしに、サラが仕組みと使い方を解説してくれる。

「つまり、アバター体内で空気を圧縮し、衝撃波に変えて、前方の敵に発射する機能だよ。銃と違って、相手に致命傷を与えるリスクはない。せいぜい、一時的に行動不能にする程度の威力なんだ」


 有難い……と、その時に、素直に思った。

 いくら世界の危機が目前に迫ろうとも、自ら人を殺めるなんてことは絶対にしたくない。


 ――けれど。

 わたしは、目の前にうずくまるリカルドを見て、どす黒い気持ちが抑えられずにいた。


 こいつは、わたしを、星を、ルミを暴力で従えようとした。そして、この男の祖先(ピサロ)たちは、アタワルパを謀殺し、インカ文明そのものを破壊したのだ。


 そんな奴らが天罰を喰らわないなんて、果たしてこの世は公平だと言えるのだろうか……。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ