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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第15章:南米・とある文明の誕生と消滅【2029年12月26日】
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第199話:四つの峰

挿絵(By みてみん)


 2029年12月29日 ペルー・アグアス・カリエンテス


「ふぁぁぁ」

 朝靄に煙るアグアス・カリエンテスのバス停で、わたしとはルミは、二人して大きなあくびをする。


 時計に目をやると、短針はまだ5と6の間をうろちょろしている。


 ――ね、眠い。


 昨晩、温泉で、あの酔っ払い痴漢野郎を撃退したわたしたちは、彼らのことを苦々しく思っていた他の観光客から是非にと誘われ、結局晩御飯を奢ってもらうことになった。


 宴は夜中まで続き、部屋に帰っても、ルミとのガールズトークに耽っていたせいで、深い眠りにつく前に、バスの出発時間になってしまったという感じだった。


「あ、あのバスだね」

 星が、変わらない元気さで、わたし達に声をかける。


 ブルブルブルと旧式のエンジン音を奏でるバスに乗り込むと、バスは真向いの山の方へと向かって走り出していく。


「え!? ”忘れられた都市”って、あの山にあるの!?」


 ルミが頷く。

「はい。だからこそ、長い間、外部の民に忘れ去られていたのです」


 揺れる山道を、三十分ほど登っていただろうか。

 バスが止り、そこから少しだけ歩くと、突如、その都市は現れた。


 わたしは、この光景を一生忘れないだろう。

 朝日が降り注ぐ空中都市は、まるで奇跡のような完璧さをもって、わたしの眼前に広がっていた。


 まるで絵画を描くかように、峰全体に巡らされた石像建築に、山や草の緑が映え、それに黄金の陽光が彩りを加えられている。


「これが”忘れられた都市”、マチュ・ピチュだよ」

 星が静かに言う。


 刻一刻と角度を変える陽光が、その瞬間ごとに異なる表情を演出する。

 わたしはその場に座りこみ、宝石のような風景に心を奪われていた。


 同じ景色を見ていたルミが口を開く。

「”マチュ・ピチュ”というのは、ケチュア語で言う”古き峰”という意味なんです。そして、北方に見えるのが、”新しい峰”を意味する、ワイナ・ピチュです」


 へえ。。。


「それに、南の”大いなる峰”・マチュピチュ山、東に位置する”幸せの峰”プティクシ……。この4つの峰で、それぞれインカの祭事が行われていたんです」


「てっきり、一つの山だけを指すのかと思ってた……」


「それぞれに、意味があるんです。北のワイナ・ピチュは『天界』を表し、南のマチュ・ピチュ山は地下界、すなわち『死と再生』を象徴しています。日が昇る東のプティクシは『新しい始まり』、そして今いるこのマチュ・ピチュは、『現世』を示しているんです」


 ……そ、そうなんだ。

 ちょっと情報量が多すぎて、頭がパンクしそうになってくる。


 ルミが、前方の”新しき峰(ワイナ・ピチュ)”を指差して言う。

「五感で感じた方がいいいかもしれません。今から一緒に、あの『天界』に登ってみませんか?」


挿絵(By みてみん)

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