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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第15章:南米・とある文明の誕生と消滅【2029年12月26日】
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第192話:虹の山

挿絵(By みてみん)


「アルパカも、私達を歓迎してくれているみたい」

ルミがそう言って微笑む。


白と茶色のアルパカたちは、まるでキスするくらいに顔を近づけてくる。

茶色のアルパカが、ぺろっと星の顔をなめる。


――さすが星。動物にまで愛されている。


「アルパカの毛は、防寒具として使われてるんだ。もっとも、12月()はまだ、夏だからいらないだろうけど……」

星がそう言いながら、アルパカのモコモコした毛を撫でる。


……そっか。

よく考えると南半球であるペルーは、日本とは季節が反対なんだ。

そんなシンプルなことも、実際に来てみないと実感が湧かない。


(今の季節)でも、Vinicunca(ビクニンカ)あたりは、夜は氷点下にまで下がるわ」


――ビクニンカって?

わたしはサラに訊ねる。


Vinicunca(ビクニンカ)というのは、虹の山と呼ばれる名所だよ」


そう言って、サラが画像をいくつか投影してくれる。


「え!? こんな山がほんとに実在するの?」


わたしが思わずそう呟いてしまうほど、その景色は非現実的だった。

“虹の山”とは、比喩的な呼び名ではなく、地表そのもののが虹色に彩られていたのだ。


「標高は5000メートルを超えてるから、冬になるとマイナス10度にまで下がるんだ」

サラがそう教えてくる。


あまりにも美しいその外観からは想像もつかないけど、虹の山(そこ)もまた、厳しい自然の一つなんだ。


「アルパカは、インカの時代から、ケチュア族にとって生活に欠かせない存在なんです。かつてはインカの王族の衣裳として使われていた高級素材ですし、それにお肉も美味しいんですよ」


え、食べるの?

――こんな可愛い生き物を……と言おうとして思いとどまる。


日本人が普段食べている牛や豚だって、他の文化の人からみたら”可愛い動物”なのかもしれないから……。


わたしが、その肉の味を想像していると、白い方のアルパカが、突然わたしの方に向かって唾を吐いてきた。


「え、な、なに?」

わたしがすんでのところで唾を躱すと、ルミが笑いながら言う。


「あ、アルパカ(彼ら)、怒ると唾を吐くので気を付けてくださいね」


――このアルパカ、もしや人間の気持ちが分かるんじゃ……。


そう思いながらルミの方を見ると、その手には、いつの間にか花束が握られていた。

「サクサイワ(あの地)マンに眠る、ご先祖たちに供えるんです」


そう言って、彼女は2匹のアルパカに声をかける。

「さ、案内して。わたし達の聖地に」


挿絵(By みてみん)

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