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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第15章:南米・とある文明の誕生と消滅【2029年12月26日】
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第183話:揺ぎ無いもの

 挿絵(By みてみん)


 ――”揺ぎない心の礎”(いしずえ)……。

 わたしは、十萌さんの言葉を反芻する。


 思えば、わたしは今までの人生において、一度もそれを持てたことがなかった。

 同じ年なのに自分の道を突き進む星やカイを見ると、羨ましいと思うとともに、ずっと自分自身に負い目を感じていた。


 だからこそ、”揺ぎ無い自分”を求めてインドに独り旅をしたはずなのに、結局は、脳を刺されて気を失い、梨沙さんたちに救助される始末だ。


「一体、どうしたら揺ぎ無い自我に至れるんですか?」


 十萌さんは首を振る。

「残念ながら、それは私にも分からない。仏教でいう”悟り”かもしれないし、キリスト教の”啓示”なのかもしれない。あるいはまったく別の道が存在している可能性もある」


「で、でも、氷河期到来が事実が公になって、世界が大混乱に陥るまで、あと数カ月しかないんですよね。だったら、そんな悠長なことをやっている場合じゃないんじゃ……」


 ―――でも”答えに近いもの”があるんだったら、それを教えてほしい。


 そう訴えるわたしに、珍しく十萌さんが語気を強めた。

「安易に答えを求めようとする心、それこそが、”魂を支配する者(教団)たち”に付け入られる隙になるわ。だから、たとえ周り道に思えても、あなたと、そしてあなたの隣にいる人を信じてあげて」


 星がわたしの手に、暖かい掌を重ねてくれる。


 ――そうだ。

 今は自分のことは信じられなくても、星のことは信じよう。

 わたしは、強くその手を握り返した。


「二人のこと、信じているわ」


 十萌さんが、慈愛に満ちた表情を浮かべる。

 わたしには、それこそが女神の微笑みのように見えた。


挿絵(By みてみん)

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