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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第14章:ポリネシア・始源の島にて【2029年12月25日】
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第173話:”一なる女神”の候補生

挿絵(By みてみん)


「この氷河期到来のニュースが、一度世間に信じられたら最後、アメリカ世論は爆発する。そうなれば、全てを呑み込む雪崩のように、世界秩序(ワールドオーダー)が激変するだろう」


――そ、それって、つまり、アメリカが、凍らない領土を求めて、アメリカの南の方の国に戦争を仕掛けるってこと?

 わたしは、思わずカイに尋ねる。


「経済と武力のカードを、どちらを先に切るかは分からない。が、確実に世界最強の軍事力という切り札(ジョーカー)をちらつかせてくるはずだ。覇権国というのは、例外なくそういうものだからな」


「南って、どこらへんに国だっけ?」

「手始めは国境が面するメキシコになる。だが、メキシコでさえも、国土の80%は凍土に覆われるんだ。だから、その後を見越して、中南米諸国にもその手を伸ばしていくはずだ」


「でも、世界の模範となるはずのアメリカが、そんなことをし始めたら……」

「アメリカの行動原理が、”世界の模範になること”であった例しはない。彼らの行動原理(プリンシパル)は唯一、”世界の中心であること”だ」


 カイはが続ける。


「氷河期が到来すれば、凍らずに残る陸地は、”地球の中心”である赤道付近だけになる。であれば、世界の中心(そこ)を奪おうと考えるのは、覇権国にとってはある意味当然の流れだ」


 創さんは厳しい表情で頷く。

「ああ。だからこそ、南米諸国をまとめ上げなくてはいけない。この後、僕と星は、この後、()()()()()()()()、南米大陸に飛ぶつもりなんだ」


 わたしは、再びカイを見る。

「カイは、日本に戻るの?」


「いや、日本は十萌さんに任せてあるから、当面は問題ない。俺は、この島で、量子コンピューター開発と双子の地球(デジタルツイン)の構築に専念するつもりだ」


 さっき、新輪廻計画の実現のためには、四つもの技術的超越が必要だと言っていた。


 人工頭脳、リアルアバター、双子の地球(デジタルツイン)、そして量子コンピューター。

 こんな研究を並行的に進めるなんて、世界広しと言えど、ルカとカイ(この天才親子)をおいて他にいないはずだ。


「リンはどうする?」

 星が訊いてくる。


「わたしは……」

 正直、カイのことは気になる。

 ただ、どう考えても、わたしがこの島にいても、役立たずどころか、邪魔にしかならないだろう。


 でも南米でなら、星や創さんのボディーガード役くらいにはなれるかしれない。

 二人は、コミュニケーション力は半端ないけど、反面、腕力となるとからっきしだから。


「わたしは、星たちと一緒に南米に行く」

 そう言って、わたしは両手でヒナの肩を掴む。


「カイのこと、お願いね。カイの代わりになれるのは、一の女神(あなた)だけなんだから」


 ヒナが、きょとんとした表情を浮かべる。


 ――こうしてみると、ほんとに人間っぽい。

 でも、この会話をしながら、数千もの動物たちをリアルタイムで観察(ウォッチ)しているんだから、とても人間業ではないんだけど……。


 星が、そんなわたしたちのやりとりを、じっと見つめている。

 ロボオタクの彼にとっては、ヒナの一挙手一投足が興味部いのだろう。


「将来、ヒナみたいな、人と見分けのつかないヒューマノイドが大勢造られたら、どんな社会になるんだろうね」

 そう、星に尋ねてみる。


「"人種間の違い"、というのが、今ほど気にならなくなるかもしれないね。今は、まず初めに『何人(なにじん)か』を気にしがちだけど、その前に『人間かどうか?』と考えるようになるだろうから」


挿絵(By みてみん)

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