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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第14章:ポリネシア・始源の島にて【2029年12月25日】
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第172話:侵攻

挿絵(By みてみん)


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 カイのこの言葉は、わたしの心臓をまっすぐに撃ち抜いた。

 あまりにも、図星過ぎたから。


 転生先という”運命”を、人工知能(AI)になんて決められたくない――人類の大半がそう思うはずだ。人間(カイ)に”神様のダイスを委ねたいと思うのは当然のことだろう。


 ”カイと離れたくない”という気持ちが、明らかにわたしから冷静さを奪っているのは、自覚はしていた。


 ――だけど。

 同時にこうも思う。


「大切な誰かを、他の人よりも大事にしたいと思うことって、そんなにいけないことのかな」

 わたしは、誰にも聞こえないように、ぽつりと呟く。


 その言葉は夜の闇を彷徨い、やがて行き場を失って消えていく。


 ぱぁぁぁぁん!

 不意に、遠くで爆発音のようなものが聞こえた。


 思わずその方角を見ると、右眼島の上空にかかる天の川銀河が、赤く染まって見えた。


「え、あれって?」

無人偵察(ステルス)機が侵入禁止空域を超えてきたので、閃光弾で威嚇射撃をしたんです」


 ――は? え?


 混乱するわたしたちに、ヒナが、焦る様子を寸分も見せずにさらっと言う。

「ドームに戻りましょう。あの中なら、万が一のことがあっても安全ですから」


 **********


 世界樹(ユグドラシル)の頂上の部屋に戻ると、ルカと創さんが右眼島上空で、閃光弾に照らされた飛行物体を見ながら、何かを話し合っていた。


 創さんが、わたし達が帰ってきことに気づくと手招きをする。

 カイと星と一緒に半円卓のテーブルに座ると、ヒナが、人数分の紅茶を用意してくれる。


 わたしは、飛行物体を指差しながら、カイに小声で訊ねる。

「あの偵察機って……」


「国籍は明かされていないが、恐らく合衆国のステルス機だろう」


 紅茶に口を運びながら、創さんがルカに訊ねる。

「アメリカ合衆国が、公に動きだすまで、後どれくらいの猶予がある?」


「もって数カ月だ。まだ水面下で動いている状態だが、準備が整い次第、大統領令が発令されるはずだ」


 そう言ってルカは、右指を動かすと、画面にアメリカ大統領と、その側近たちの肖像とデータが映し出される。そのどれも、ニュースで一度は見たことのある顔ぶれだ。


「現大統領は、前政権の反動で、今のところは国際協調ムードを打ち出そうとはしている。だが、例の急進派の存在もある。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 ――ぶ、武力侵攻?

 わたしは耳を疑う。


 アメリカが、他国に侵攻をしかけるなんて、あり得るのだろうか?

 いや……と、わたしは思い直す。


 2025年から始まった前政権は、平時にもかかわらず、関税を武器に、世界中に喧嘩を吹っかけていた。もっと極端なアクションに出る可能性だって、否定はできない。


「カイ、アメリカの国土の内、どれくらいが凍土化する見込みなの?」


 カイは、即座に答えた。

「10年以内に、ハワイを除くほぼ全域、つまり国土の95%以上は凍土に包まれるはずだ」


 ――え?

「今はまだ、パニックを避けるために情報統制している状態だ。だが、この氷河期到来のニュースが、一度世間に信じられたら最後、アメリカ世論は爆発する。そうなれば、全てを呑み込む雪崩のように、世界秩序(ワールドオーダー)が激変するだろう」


挿絵(By みてみん)

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