表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第14章:ポリネシア・始源の島にて【2029年12月25日】
168/267

第168話 : どうぶつのことば

挿絵(By みてみん)


「7日目の死の間際に、ヒナの意識と記憶を、当時まだ開発中だった人工頭脳搭載のヒューマノイド、”H1”へと移植したのだ」


 ――そうか。

 ヒナの反応が、人間に極めて似ている理由が、ようやく理解できた気がする。そもそも、彼女は人間だったのだから。


 ロボ好きの(さが)が抑えきれなくなったのか、星が喰い気味に質問してくる。

「ヒナの意識がヒューマノイドに移植されたのって、15年前ですよね? ということは、その間彼女の意識は消失せずに、保たれて続けているということですか?」


「確かに、広大な電脳ネットの海に”放流”するよりは、人工頭脳とヒューマノイドという、限定されボディーに閉じ込めた方が、意識の散逸スピードは遥かに遅い。だが、それにも限界はあるはずだ」


「つまり、アンドロイ(ヒナ)ドにもまた、寿命があるということでしょうか?」


「今のところは……だがな」

 そう言って、ルカは宙に浮かぶホログラムを操作する。


 ヒナが、『森の保護(ゴリラ)者』の肩に掴まって、15メートルほどのヤシの木に実っているココナッツをもいでいる映像が映し出される。


 画面がズームアップし、ヒナの口元にカメラが寄ると、彼女がゴリラに向かって何か言葉を発しているのが分かる。けれどそれは、低い、唸るような音で、人間の声とはとても思えなかった。


「あれは、ゴリラの言語だよ」


 横から、創さんが言う。

彼女(ヒナ)は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだ」


 ――え? 

 そんなことって、あり得るんだろうか?


「この島では全ての動物の一挙手一投足が、リアルタイムでデータベースに蓄積されている。ヒナは、それを読み込んで、音声を再現しているようなんだ。人間には声帯的に限界があるけど、ヒューマノイドなら自由自在だからね」


 確かに、あの唸り声は、どう考えても人間には出せない音だ。


「人間でも、『他者につながる』ことによって寿命が延びるということを裏付けるデータは多いんだ。つまり、多種多様なコミュニケーションを取ることが、結果としてヒナの意識に刺激を与え、その寿命を延ばしているのかもしれない」


「さ、最近のヒューマノイドって、進んでるんですね」

 わたしなんて、英語だけでも四苦八苦してるというのに……。


「いや、ヒナだけがなぜか例外なんだ。最新の人工頭脳を搭載しているはずの「K5」でさえも、そこまでの性能は有していない。だからこそ、彼女が存在が外部に知られたら、間違いなく誘拐されるだろう」


わたしは、三式島での悠くんの誘拐事件を思い出し、身震いする。


「でも、誘拐(それ)って誰に?」


「もちろん、あらゆる国の研究機関だ。だが、それよりも警戒すべきなのは、教団(奴ら)だ」

「あの、ドミナ……なんとかっていうやつだっけ?」


「Dominatores Ani(魂を支配する者たち)marumiという名が表している通り、彼らは、支配のために手段を選ばない。12歳の時、俺を誘拐し、”神の子”に仕立て上げようとしたように」


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ