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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第14章:ポリネシア・始源の島にて【2029年12月25日】
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第167話:魂を支配する者たち

挿絵(By みてみん)


「この一連の伝染病は、”奴ら”によって仕組まれたバイオテロだったのだ」


 全身を戦慄が駆け巡る。

 一つの部族を根絶やしにするほどのテロだなんて……。


「一体、何のために……?」

 わたしは思わず呟く。


「”奴ら”にとっては、実験に過ぎなかったはずだ」


「”奴ら”って、一体……?」


 カイが言っていた”更なる大きな敵”というのは、もしかしてその”奴ら”ことなのだろうか?


 僅かな沈黙の後、ルカは凍てつくような声で言い放った。

「Dominator(ドミナトーレス)es Animarum(アニマールム)i。紀元前6世紀前に成立した、オルフェウス教団に源流を持つ組織だ」


 ――ドミナトーレス? オルフェウス教団?


 分からない単語が多すぎて、全く頭に入ってこない。


 そんなわたしに、創さんが解説してくれる。


「オルフェウス教団は、『魂と肉体の二元論、輪廻転生、来世での救済』を教義としていた2500年以上前の、古代ギリシャの教団だよ。Dominator(ドミナトーレス)es Animarum(アニマールム)iは、ラテン語で『魂を支配する者たち』という意味で、そのオルフェウス教の流れを汲んでいるんだ」


 ……ぶっちゃけ、説明を聞いても全く分からない。


「でも、そんなに長く続いている宗教なのに、あまり知られていなんですね」

「その後のヨーロッパの宗教の主流は、キリスト教になったからね。ただ、多神教の彼らは、ずっと歴史の影に隠れて存在し続けていたらしい」


 カイが怒気を孕んだ口調で言う。


「奴らは科学を濫用し、デジタルツイ(新世界)ンの住人の意識をハックし、あらゆる宗教を塗り替えようとしているんだ」


 デジタルツイン(双子の地球)……。

 つまり、世界の人々の意識がアップロードされる”新世界”に、統一宗教を強制的に埋めこもうとしているのだろうか。


「でも、あらゆる宗教を塗り替える……って、そんなこと可能なの?」

 世界宗教と呼ばれる、キリスト教、イスラム教、仏教でさえ、そんなことはできなかったはずだ。


「まさにそれが右眼島で起こったことだ。奴らは、ウィルスという科学兵器を用い、脳をハックしようとしたんだ。()()()姿()()()()()()()()()()ことによってね」


「え、じゃあ、ヒナの部族の人たちが、先祖の霊に出会ったっていうのは、このウィルスが引き起こした夢みたいなものってこと?」


「断言はできない。だが、状況証拠がそう物語っている」


 カイがそう言って、指を動かすと、今度は目の前の画面に、脳波の映像が映し出される。

「これは、手術室に運び込まれた当時の、ヒナの脳波パターンだ。視覚野と前頭前皮質の過剰活性化、そしてドーパミンの増加が顕著になっている。これは、特定の種類の麻薬によってもたらされる症状に酷似しているんだ」


「確かに、”天国を見た”っていう麻薬摂取者(ジャンキー)は多いけど……けど、ウィルスでそんなことができるなんて――」


「実際には麻薬よりも遥かにタチが悪い。なんせ、たった7日間で、確実に死に至るんだからな」

カイが吐き捨てる。


「じゃあ、ヒナは……」


ルカが口を開く。

「ワクチン開発は到底間に合わなかった。だから、7日目の死の間際に、ヒナの意識と記憶を、当時まだ開発中だった人工頭脳搭載のヒューマノイド、”H1”へと移植したのだ」


挿絵(By みてみん)

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