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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第14章:ポリネシア・始源の島にて【2029年12月25日】
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第166話:陰謀

挿絵(By みてみん)


左眼(この)島の浜辺で目覚めた時、私は自分の身体の異変に気付いていました。脳が、燃えるように熱く感じていたからです。それは、まさに姉が言っていた伝染病の初期症状にそっくりでした」


 ヒナがこめかみを抑える。


「遅かった……。私はそう悟りました。()()()()()()()()()()()()()、未知の病を伝染させるわけにはいきません。だから私は、打ち上げられたボートの傍らで再び目を閉じました。誰にも会わず、ここで静かに命を閉じようと決意したのです」


 ――わたしは、どこか漫然と生きていた18歳の時の自分を思い出す。

 どういう人生を歩めば、こんな心境に至れるんだろう。


「それから何時間ほど経ったのかは分かりません。わたしは、夢の中で、暗い洞窟の中を歩いていました。そしてその先に、眩い光のようなものが見え、そちらに向かっていこうとしたとき――。不意に私の体が、強い力で持ち上げられたのです」


「初めはそれが夢なのか現実なのか、判然としませんでした。ただ、明らかに人間でない黒くて太い腕や、首筋に感じるふわふわとした体毛の感触が、こちらこそが現実だと物語っていました」


 そこまで言うと、ヒナは歩き出し、ぼんやりと浮かび上がるゴリラのホログラフに触れた。

「それが、この子、Ngahere(ンガヘレ) Ruru(ルル)」だったのです」


 ――ンガヘレ……?


 聞き覚えのないことばに思わず戸惑う。


「ンガヘレ・ルルというのは、私たちの言葉でいう『森の保護者』という意味なんです。ゴリラは、聡明な上に、人の10倍もの力を持っていますから。すぐ気を失ってしまったので、それが、ルカ様が操るアンドロイドだったってことに気づくのは、ずっと後になってからですけど……」


 ルカが言葉を継ぐ。

「ヒナが運ばれてきた時点では、病はまだ初期症状だった。だが、ヴィクラムの知識を得た私にさえ、その症状を目にしたことは一度もなかった。世界中の医療データベースをハックしてさえ、同様の症例は見当たらなかったのだ」


 宙に、18歳(当時)のヒナと思われる女性が、手術台に上に横たわる映像が流れる。

 赤く火照った顔に、大粒の汗を滲ませながらも、何かをずっと呟いている。


 明らかに高熱を発しているにもかかわらず、その表情には微かな笑みさえ浮かんでいる。


「この時の私は、ずっと夢の中で、祖父母や両親、そして姉と会っていたんです。他愛もない話を言い合い、笑っていました。もしかしたら、ここが天国ってやつなのかなって……」


 ルカが言う。

「病の原因を究明するため、右眼島にドローンを飛ばし、状況を把握しようとした。ドローンの映像に映し出されていたのは、全身を防護服に身を包んだ男たちが、村があった場所をくまなく消毒し、百体もの遺体をどこかに移送しようとしている姿だった」


 ――え?

 ま、まさか……。


「この一連の伝染病は、”奴ら”によって仕組まれたバイオテロだったのだ」


挿絵(By みてみん)

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