表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第14章:ポリネシア・始源の島にて【2029年12月25日】
164/266

第164話:伝染する病

挿絵(By みてみん)


 ――”意識と記憶”を有するヒューマノイド?


 わたしは思わず、ヒナを見つめると、彼女の大きな瞳が私を見つめ返す。


 確かに、見た目は人間そっくりだ。

 けれど、そんなことがあり得るのだろうか?

 

 星の声が上ずった声で訊ねる。

「もしかして、人工知能(AI)が、自律的な意識を持った――ということですか?」


 ルカは首を振る。

「違う。AIが意識を持ったという事例は、まだ一例たりとも確認されていない。それらしく振舞っている事例は、山ほどあるがな」


「では、ヒナ(彼女)の意識と記憶は、一体どこから……?」


「右眼島については聞いているか?」

 ルカが、星に問い返す。


「名前だけは……」


 わたしは、ついさっき、飛行機の窓からみた光景を思い出す。

 私達がいる「左眼島」と対をなすように、ほとんど同じ大きさの「右眼島」が海に浮かんでいた。


 でも、創さんはこう言っていた気がする。

右眼島(あそこ)は、すでに完全な無人島だから』と。


 ルカが口を開く。

「15年前までは、あの島にも100人ほどの部族が住んでいた。ヒナに宿っているのは、その最後の生き残りの少女の意識だ」


 ************


「2014年、ヴィクラムが私への”意識移植手術”を終え、この島から去って間もない頃だ。ある奇妙な伝染病が、右眼島を覆い尽くし始めたのは……」


 ルカが、抑揚のない声で語り始める。


「その病に罹患した患者は、7日間の間、高熱に苦しめられる。だがその間、様々な幻想を見るらしい。ただ、共通していたのは、死後の世界を見た――というものだ」


 ――し、死後の世界?

 なんだか、急にオカルトめいてきた。


「彼らの宗教では、現世はあくまでも仮の世界に過ぎず、亡くなると”ラウニカ”と呼ばれる死後の世界に行くと言われている。そして、彼らは約7日間の間、高熱にうなされながらも、そのラウニカで、先祖の霊と語り合っていたという」


「そしてちょうど7日後、彼らはまるでぷっつりと糸が切れたかのように、この世から去ってしまう。外部文明と接触するのが、月に一度、他島からの交易船だけだったというのも災いした。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「な、なら、ルカさんはどうして気が付けたんですか?」


 わたしの問いに、

「この先は、本人が語るべきだろう」

 と言い、ヒューマノイ(ヒナ)ドに目配せをする。


 ヒナは、まるで人間のような悲し気な表情を浮かべながら、口を開いた。

「私が、ルカ様に伝えたのです。死の縁を彷徨いながらも、どうにかこの島にたどり着いたときに」


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ