表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第14章:ポリネシア・始源の島にて【2029年12月25日】
160/266

第160話:技術的超越

挿絵(By みてみん)


「ああ。電脳ネットにアップロードされた人類一人ひとりの意識を、”新たな別の頭脳”へとダウンロードする――。それこそが、新輪廻計画と呼ばれるものだ」


 ルカの言葉を聞いた星は、声を弾ませながら、カイの背中を叩く。

「そっか……。そのために、人口頭脳搭載のアバターを開発していたんだね」


 確かに、カイが私たちをバイトに誘ったとき、こう話していた。

 ――『研究所(そこ)で、人工頭脳を搭載した、世界初の実体を持つ(リアル)アバターを生み出したい。アイロニクス社(うちの会社)の技術と資金を、全力でぶちこんでね』と。


「で、でも、意識をネットにアップロードするって、怖くない?」


 今でさえ、ハッキングや脅迫事件が絶えないインターネットに、”自分の意識”をアップロードして、犯罪者に乗っ取られてしまったらどうするんだろう。


 カイが言う。

「確かに、現状のパスワード認証では、セキュリティーなど存在しないに等しい。だからこそ、アイロニクスのカスタマイズAI経由で、光彩認証アクセスすることで、本人認証を担保するんだ」


 確かに、パスワードだったら、いくらでもマネができる。

 ただ、まるで家族のように、ほとんど毎日接している、カスタマイズ(サラ)AIなら、わたしのことを間違いなく認識してくれるだろう。


「アップロード先は、双子の地球(デジタルツイン)ってこと?」

 星の問いに、カイが頷く。


「”身体性”、そして”他者との繋がり”を持たない意識は、やがて減衰していってしまう。だからこそ、そのデジタル上に、この世界と同じ双子の地球を再現しようとしているんだ」


 確かに、火龍の舞のためにデジタルツインに入ったとき、その没入感に圧倒された覚えがある。

 普通に暮らすこともできれば、魔法のように瞬間移動もできるあの世界なら、充分に刺激的かもしれない。


「デジタルツイ(そこ)ンでなら、ずっと意識を保てるの?」


 カイは首を振る。

「デジタル上でどんな刺激的な空間を生み出し、他者との繋がりを生み出しても、身体性がなければ、やがてその刺激に慣れてしまう。個体差はあれど、10年程度で消滅に向かうだろう。だからこそ、人工頭脳を搭載した”個体としてのアバター”に、意識をダウンロードすることが必要となんだ」


「ま、間に合うの?」

 あと10年の間に、地表の8割が氷河に覆われるのだ。


 カイの表情が曇る。

「正直、まだ分からない。新輪廻計画を実現するためには、4つの超えるべき技術的障壁があるんだ」

 そう言って、空中に投影されたブラックボードに、文字を書き連ねる。


 ①意識の受け皿としての「人工頭脳」

 ②身体性を持たせるための「リアルアバター」

 ③他者と繋がる空間としての「双子の地球(デジタルツイン)

 ④意識情報を並列処理するための「量子コンピューター」


「これらを10年以内に実現させるためには、超越的な技術進化が必要になるんだ」


 ルカの声が響いた。


「テクノロジーの進化は、汎用人工知(AGI)能がいずれ成し遂げる。だが、それ以前に、人類そのものが変化しなければならない。もしこのまま新世界に突入すれば、人工頭脳も、リアルアバターも、一部の資本家が独占し、貧しきものは見捨てられるだろう」


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ