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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第14章:ポリネシア・始源の島にて【2029年12月25日】
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第157話:世界樹の中

挿絵(By みてみん) 


 緑の気配が濃くなってくる。

 辺りの草木は、もはや身長ほどまで生い茂っている。


 ――ここが、外界とは切り離されたドームの中だなんて、とても思えない。


 道なき道をを搔き分けるように、わたし達4人は、ヒナの後ろを進んでいく。

「こんな不安定な道もバランスを崩さずに歩けるなんて……。一体、どんな動作系になっているんだろう」


 隣で星が、まじまじとヒナの後ろ姿を見つめている。

 相手がヒューマノイドだとは言え、ちょっとだけ妬ける。


 やがて、視界の向こうに、幹だけでも直系5メートルはあるだろう巨木が現れる。

 縦横無尽に伸び、一帯を屋根のように覆っている大木に、わたしは思わずため息を漏らす。


「こちらが、ユグドラシルです」

 ヒナが言う。


 ――ユグド……なに?


 わたしが訊ねようとする前に、星が口を開く。


「ユグドラシルって、北欧神話に出てくる『9つの世界を繋ぐ』という世界樹の名前ですね?」

「ええ、この樹の頂上で、ご主人(ルカ)様がお待ちです」


 ――え、この樹の上で!?


 わたしが訊き返す前に、ヒナが何かを呟いた。

 "E te ao, tuwhera!"


 すると、不意に、世界樹の根元の部分が光り出した。

 そして次の瞬間、幹だったはずの部分に、白色のドアが現れていた。


 わたしは自分の眼を疑った。

 ――一体、何が起きたんだろう。


「もともとあった島一番の巨木をくりぬいて強化した上で、内部にエレベーターを作っているんだ。普段は、動物たちが警戒しないように、木の幹に同化するようなホログラフィーを施してあるけどね」


 創さんがエレベーターに乗り込みながら言う。


「さっきの、E te ao(世界よ), tuwhera(開け)!"という言葉(パスワード)で、一時的にホログラフィーが解除され、ドアが現れたってわけさ」


 創さん、わたし、星、カイを乗せたエレベーターは、ほとんど音もなく昇っていく。

 次第に視界が高くなっていき、おそらくは50メートルほど上昇したとき、エレベーターが止った。


「こちらが最上階です」

 そう言って、ヒナがわたしたちを案内する。


 世界樹のほとんど頂上に位置するその部屋は、想像よりも薄暗かった。

 生い茂る世界樹の枝や葉が無数の影をなし、照り付ける人口太陽の光をも遮っている。


 ただそれよりも目を引いたのは、部屋の至るところに投影されている、多彩な動物のホログラムだ。


 わたしの目の前には、蒼白い光を放つゴリラのホログラムが、身体を揺らしている。

 隣に浮かび上がっているモニターには、体温や骨格、DNAっぽいものまで、様々なデータが並んでいる。


「アバターからの映像に加えて、島の至るところに仕掛けられたカメラで、ホログラムをリアルタイムで生成してるんだ」


「すごいんですね、ホログラムって……」

 星の隣で、わたしは感嘆の声を上げる。映画館で3D映画は観たことはあるけど、目の前の等身大のゴリラは、圧倒的な存在感がある。


 ゴリラの横には、人間のホログラムまであった。

 興味本位で覗き込んだわたしは、息を呑む。


 ――え、これって……。


 そこには、ヒナのホログラムが映し出されていた。


「ええ、私のホログラフィックモデルです。私もまた、この地で育ったアンドロイドなのですから」


挿絵(By みてみん)

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