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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第13章:インド・新たなる輪廻の環【2029年12月8日】
135/266

第135話:入滅の地へ

挿絵(By みてみん)


「2029年12月、つまりは今月の満月の日までに、”一なる女神”が見つからなかった場合、(ヴィクラム)は、ブッダが亡くなった地で、自ら死を選ぶということです」


 涅槃図の裏に隠されていた紙片のあまりの内容に、わたしはしばし言葉を失っていた。

 さっきまでは、正直、どこか非現実的なおとぎ話に聞こえた”預言の歌”が、この手紙の存在によって、急に現実味を帯びてきてしまったからだ。


 わたしは改めて、ヴィクラムのメモに書き記されていた文言を読む。


「2030年、末法の世が始まる前に、”一なる女神”の器を見つけ出さなければいけない。もし、その前年までに探し出せなければ……。満月の夜、わたしは、あの()()()()()()()()()()()()()()()()――」


「入滅するってことは、やっぱり死ぬってことなんですよね?」

「ええ、涅槃図とともにこの手紙が残されていたということは、そう考えるのが自然かと思います。満月の夜、というのも、ブッダが亡くなったと言われている日ですし」


 つまり、ヴィクラムは、残り数日の間で、自死を選ぶかもしれないということだ。

 ――いや、前年のいつまでとは言及していない以上、最悪の場合、既に亡くなっている可能性さえある。


 わたしは、背筋に冷たいものを感じながら、サラに訊ねる。

「今月の満月って、いつ?」

「12月21日だよ。この日は、日本もインドも皆既月食の日なんだ」


 わたしは、僅かに胸をなでおろす。

 今日は12月18日だから、まだ、3日間ある。


「ブッダが入滅した地、というのは分かっているのでしょうか?」


 わたしの問いに、シャルマさんが頷いた。

「はい、ブッダが入滅した地は、現在のインドのウッタル・プラデーシュ州のクシナガルと言われています」

「そこって、どれくらい人がいるんですか?」


「ウッタル・プラデーシュ州全体の人口は、2億人を超えています」

「……は?」

 そんなとこから、十五年前に行方不明になった男を探し出すのは、砂漠に混じった砂金を探すようなものだ。


 シャルマさんが慰めるかのように言う。

「ただ、ブッダの入滅した場所は、特定されています。ブッダは、クシナガラにあるにある"マハーパリニッバーナ寺"の近くの沙羅双樹の下で亡くなったといわれていますから」


 ――寺まで分かっているなら、何とかなるかもしれない。

 わたしは、なんだか申し訳ない気持ちで、ターニャの顔を見る。


 こんな厄介な旅に、彼女は引き続きついてきてくれるのだろうか?


 彼女は、そんなわたしを励ますかのように、わたしの肩を叩いてくれた。


「まだ希望は潰えていません。クシナガラなら、ここから北北西に、バスで10時間くらいです。一旦宿に戻って荷物をまとめて、すぐにでも出発しましょう」


挿絵(By みてみん)

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