第六節 ニョタイカダケの影響
これはひと月ほど前にFANBOXに先行投稿したSSに加筆修正したもの
時間軸的にはヒカリさんが合流して1か月とかのイメージ
「ねぇ、サラお姉ちゃん」
ふと疑問に思ったことがあるで聞いてみることにした。
「なにかしら?」
「なんでボクのご飯には定期的にニョタイカタケが入っているの?」
ギクッ!
そんな声が聞こえたような気がする。事実「なぜバレたんだ......」みたいな顔してるし。
初めて会ってからもう数か月。定期的に入っているソレによってボクはすっかり女の子の身体が馴染んできた。今もそのキノコのスープ食べてるし。
「そりゃもちろん女の子になったユイちゃんがかわいいんだもの!」
「かっ、かわいいだなんて。別にうれしくないし! 男の子に生まれたはずだもん!」
「まぁまぁ、男の子だとしてかわいいしそのキノコには魔法力も含まれてるからね」
そう。実はこのキノコを食べているおかげでいくつか魔法が使えるようにはなってきた。
天界ではそう言ったものをちゃんと勉強するよりも前に堕とされちゃったし。もともと持ってる神力がそんなに多くなく上手く扱えないのでこの点助かってはいる。
「俺はせめて毒抜きするけどな」
「こらこらミドリ、お二人のお食事を邪魔してはダメですよ」
狼族の兄弟のアオイとミドリもやってきた。
「ミドリ兄さん、毒抜きってどういうこと......?」
当然の疑問である。食べても問題ない毒キノコ、いやいや厳密には身体が女体化するんだから問題ではあるんだけど。
「そのキノコ、3日ほど煮込んで天日干しして乾燥させたものを粉末にすると......」
「魔力増幅薬になるのよ」
あ、また言葉の最後をサラお姉ちゃんが奪っていった。ミドリ兄さんもこれには慣れてきたようだ。出会った頃だったらカンカンに怒っていたのに。とても子供達には見せられないような大人のドロドロした喧嘩をしていた。
「ただ、継続的な摂取は良くないと聞きますよ。僕はこの分野はあまり詳しくないのですが、数か月単位での毒素の摂取は精神にも響いてしまい元の身体に戻れなくなることもあるとか」
ふんふんなるほど。アオイ兄さんは博学な知り合いも多いからきっと......って
「ええええええ!?」
あまりの衝撃的情報にすっ転ぶかと思った。サラお姉ちゃんが支えてくれて助かった。ちなみにスープは半分くらいこぼした。あー、勿体ない......。
ああもう、こういうところはかっこいいんだから。
「まってまって、戻れなくなる? マジで?」
「マジです」
返事をしたのはアオイ兄さんではなくてサラお姉ちゃんだった。
「ユイちゃんは天界から堕とされて、追手がいるかもしれないんでしょ? 少しでも見た目が違うほうがいいじゃない?」
まぁ一理ある。一理あるけどさぁ、同意を取ってよぉ。
「大丈夫! 上から来た使者たちはボクの姿を見てびっくりして逃げてくよ」
いつのまにか散歩から帰ってきたヒカリさんがいた。今日は何も持ち帰ってきていないことから察するに収穫はなかったみたい。釣りが最近の趣味なんだって。
「ヒカリさんは下に来てること上の人たちは知らないの?」
ヒカリさんは大天使だからいなくなったとあれば大騒ぎになっていてもおかしくはない。
「少なくともボクの家族は知ってるよ? 大喧嘩してきたからね。いろいろなところから情報は漏れてると思うけどね」
「大喧嘩って、大天使一族が大喧嘩したらひとたまりもないでしょうよ」
「あら、サラさんって結構天界にお詳しい?そうだよ、喧嘩の影響でボクの住んでた館は爆発してなくなっちゃったもん」
「グフッ、ゲホッ、なんだって? 爆発してなくなった!?」
あ、やべ、キノコ変なところに入った。
「今が平和ならいいじゃないですか。幸い獣人の里の結界は一部を除き天界の者も魔族の者も通しませんし、外から認知することは不可能ですから」
「俺たちの長老が優秀だからな、しばらく帰ってこないけど大丈夫なのか?」
「長老なら来週帰ってきますよ。盲目とは言え狐族の重鎮、お一人でも十分行動できるのでしょう」
実は獣人の里に来てから1度も会えていない。獣人たちの感じる時間軸だと半年いなくても不思議には感じないという。天界出身としてもそうなのだろうが、人間たちからしたら些かびっくりであろう。人間と比べたら天使族や獣人族は長命だから。
長老のこの外出が人間たちとの戦争の始まりになるとは、そしてそれに天界が関与しているとは、この時の一同は知る由もなかった。
ここまで読んで下さりありがとうございます!
~ひとくちプチ情報~
この作品時間軸の設定難しすぎる
構想上ではこの後一気に数年飛ぶ予定だけど、その前に2話くらい挟みたいかな。