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天使の生まれだけど下界で生活することになりました  作者: 叶音ゆい
第一章 下界へ堕ちてきました
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第五節 初めましての再会

お話は下界に戻りまして、視点もユイちゃんに戻ります

前回みたいな例外はたまに作るかもね

 明確な理由があるというわけではない、ボクはここしばらく獣人の里の周辺を散策している。というのも最近この辺で不思議な力を感じる気がするのだ。

「ユイちゃん、変なキノコ食べさせたのは謝るからもうやめない......?」

 サラお姉ちゃんも弱気になっている。でも......

「確かに感じたんだ、強大な力を」

「いやいや、魔族の国が近いわけでもないし大きな魔力は感じないよ?」

「そう、やっぱり気のせいなのか......」

「こっちにもそれっぽい手がかりありませんでしたよ」

「アオイ兄さんの方もダメだったのか」

 ボクは狼族の兄弟のアオイとミドリを兄さんと呼んでいる。頼れるし助けてくれる。

「そういえばミドリ兄さんは?」

「あの子は近くの人間の国にまた呼ばれてるみたいです。なんでも大きな式典があるとかでシェフとして呼ばれたんですって」

 そう。ミドリ兄さんの料理の腕はすごい。事実こうして依頼が来ることが多い。本人はとても面倒くさそうにするんだけど。

「珍しいね? 私の記憶ではここまで積極的にそういうのに参加するような子じゃなかったと思うんだけど?」

 しばらく獣人の里にお世話になっているが、どうやらサラお姉ちゃんと彼らはすごく長い付き合いらしい。詳しいことを聞くとみんな話逸らされちゃうんだけどね。

「新しい武器を欲しがっていたので、ついでに探しているのかもしれませんね。さ、もう暗くなるので今日はもう帰りましょうか?」

「そうね、私お腹すいたわ」

 今日の晩御飯、今度はどんなキノコを入れるつもりなんだろう。そして今もなお感じている大きな力の正体は何なのだろう。帰り道ではそんなことをずっと考えて歩いていた。


「ふぅ......やっと見つけた」

「ん?」

 背後から声が聞こえた気がする。

 が、暗くて何も見えなかった。


 翌日。

 昨日よりもずっと近くに大きな力を感じて飛び起きた。

「どうしたの、朝からバタバタと......」

 パジャマのままのサラお姉ちゃんが寝ぼけ眼で声をかけてきた。

「サラお姉ちゃん、ごめんなさい。昨日より強く近くに感じたから見に行こうかなって」

「そう、後で合流するわね」

「うん! じゃあいってきま」

「その必要はなーい!」

 大きな女性の声がした。と同時に強大な力と安心感も感じた。

 声の方向には羽を3対持つ天使、大天使のお姉さんが立っていた。

「初めまして。えっと......どちら様?」

「えー、忘れちゃったの~? お姉さんショックだよ......」

 およよ......。という感じに泣いている。

「えっ、あの......ごめんなさい」

「えっへへ、いいよ~。やっぱりユイちゃんはかわいいな~」

 力いっぱい抱擁された。なんだかいい匂いがする、そしておっぱいがデカい。

「ねぇあなた。誰なの? 人の家に勝手に入ってくる大天使がいるなんて、どういう了見で?あと、ユイちゃんから離れなさい!」

 いつの間にか着替えたサラお姉ちゃんがブチギレている。

「あら、ごめんなさい」

 解放されたボクを見てもサラお姉ちゃんの怒りは収まらない様子だ。

「ボクの名前はヒカリ・エルトライト。見てわかる通り大天使だよ」

「大天使様が何の用なのよ?」

 グイッとサラお姉ちゃんに引き寄せられた。大天使のお姉さんはすごく悲しそうな顔をしている。

「あ、思い出した!」

「ユイちゃんこの人と知り合い?」

「うん。天界にいた時、両親との関係が悪くてよく夜中に逃げ出してたんだけど、その時にお世話になっていた大天使のお姉さんのヒカリさん」

「そうだよ~! ボクのこと思い出してくれてよかった~」

 そういえば下界に堕ちてすぐ思い出した記憶の中にいたのはこの人だったのか。

「ヒカリさん......翼の先が黒くなってる」

「あぁ、思ったより早いんだねボクの堕天」

 天界の住民の翼が黒くなることを階級問わず堕天という。

 その要因は様々であり、例えば神に逆らうことや度重なる命令の無視などがある。下界に長いこといることも堕天につながるらしいが、折翼者(しゃくよくしゃ)は下界追放が絶対だから堕天しようがしまいがあまり関係はない。ほとんどの人間にも忌み嫌われるだけだ。

 折れた翼でも堕天するのかな? 自分じゃ見ることないし誰も何も教えてくれない。少なくともヒカリさんが何も言わないということはまだ無事だと思うけど。

「で、具体的に何が目的で来たの? ユイちゃんのことを奪いに来たの?」

「違う違う、警告と守護よ」

「警告?」

「守護?」

 ボクとサラお姉ちゃんは別の疑問を持った。

「ややこしいのは警告だから守護についてだけど、里ごと護るから安心してね」

 何やら話の規模が大きくなったな

「里ごと護るって、ヒカリさん何か良くないことでも起こるの?」

「あぁ......ちょっとね、ボクも追われる身になっちゃって......」

 その後の展開ってもしかして、

「”15年の壁”ってユイちゃん知ってる?」

「いや、わからない」

「俺は知ってるぞ」

 緑色の目の狼族がいつの間にか部屋にいた。ミドリだ。ちょっとこの家のセキュリティ甘くないか?

「天使族の下界での生涯、15年未満」

「おぉ! 狼族の青年よく知っているね。でもそれだけじゃないの、これはある程度の階級がないと知らないんだけど......」

「15年の壁を超える前に審判神によって殺されてることか? 速いと翌日なんてこともあるとか」

「え、なんでそこまで?」

 ミドリ兄さんなんかすっごい詳しい。でもボクにも分かることはある。

「ヒカリさん、この里は折翼者の崖の真下からそこまで遠くないの」

「あぁ、確かにユイちゃんを見つけるまでにそんなにかからなかったな」

「それにしてもこの里は良いところだね」

 なんだかヒカリさんの息遣いが荒くなっている。顔も紅潮しているし。獲物を狙う目をしている。

「おい、ユイ。この大天使俺のこと狙っている気がするんだが気のせいか?」

 ヒカリさんのことでまた一つ思い出したことがある。それは......

「ごめん。ヒカリさんは重度のケモナーなの」

「そういうのは先に言えー!!」

 ミドリ兄さんは逃げて行った。

 しょんぼりした顔のヒカリさんと、威嚇のような顔をしながらボクを抱いて離さないサラお姉ちゃんと、そんな状況に身を任せるしかないボクを置いて。

 あぁ、これはこれから騒がしくなる予感がするなぁ。

ここまで読んで下さりありがとうございます!


~ひとくちプチ情報~

ヒカリさんは個人的にお気に入りの子です

そして、ユイちゃんの名付け親です

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