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天使の生まれだけど下界で生活することになりました  作者: 叶音ゆい
第一章 下界へ堕ちてきました
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第二節 天使族とナイトメア

 天の国アヴェイロンには五禁則(ごきんそく)という厳しいルールがある。

  その1 左利きでの生活の禁止

  その2 階級間の接触は要人同士以外禁止

  その3 下界の使者との接触は大天使以上

  その4 下界の知的生命体の血肉の摂取を禁止

  その5 下界に降りることを禁止

 破った者は折翼者(しゃくよくしゃ)となり天界を()()永久に追放される。

 これは天界では誰しもが習い、誰しもが従う絶対のルール。

 ただ、下界との接触はほとんど大天使が行っているからアヴェイロンでは下界に対する知識がとても浅い。

 そして天界には神、大天使、天使、堕天使、折翼者の5つの階級が存在する。

 ボクことヒカリ・エルトライトは大天使であり、下界の獣人が大好きなの。特に猫が好き!

 それと同じくユイちゃんが好き!

 だから、あの子を助けに行かなきゃ......!

「えーと、折翼者の崖から落ちたらこの辺に......」

 葉の大きい木々の生い茂る森へと降りてゆく。

「早くしないと、あの子もまだ小さい子供だし......」

 森の地面へと降りたち、匂いや神力(しんりょく)の痕跡をたどりながら探していく。

 3日経った。いまだに見つからない。神力の痕跡は探し始めてすぐに別の魔法力によってかき消されてしまった。

「......頭から落ちたからね」

 誰か女性の話声がする。同じ方向から莫大な魔法力を感じる。

 腰を落とし隠れながら声の方向へと向かう。

「......人間ですか?」

 聞き覚えのある声。ボクの大好きなユイちゃんの声。見慣れた後ろ姿も少し遠くに見えた。その場に隠れながら盗み聞きを続ける。

「ボクは......」

 少し長い沈黙。何かを思い出したいような素振り。どうやらユイちゃんは天界での記憶のほとんどを凍結されているらしい。

「ボクが助けてあげないと」

 小さく呟いてユイちゃんに腕を伸ばす。

「少しだけ......今はまだ、少しだけだけど」

 記憶修繕の魔法を放った。ガサガサという物音が出てしまった

「ごめんね、まだ少し上でやる事残っているから......」

 ボクは天界への帰路へ着いた。この時はまだ堕天化が少しずつ進行していることには気が付かなかった。



 チュンチュン

 小鳥の鳴き声がする。朝だ。

 昨夜はサラお姉ちゃんが優しく背中を撫でてくれたおかげかよく眠れた。

 なんだかボクを助けに来るような夢を見た気がするけどアレは誰なんだろうか。

 それにしても

「天界のルール、狂ってるわね......」

 ん? わね?

「あ! ユイちゃんおはよ~。その様子、昨日のきのこは効いたみたいね」

「サラさ......サラお姉ちゃん、おはよ。昨日のきのこってどういうこと?」

「ほら、昨日あなたに料理あげたでしょう? あの中にニョタイカタケっていう毒キノコがあってね。あのキ」

「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待ってよ!? どんな毒キノコだって?」

 身の毛もよだつ思いで話を遮って立ち上がってしまった。

 あ、サラお姉ちゃん身長高い。って違う違う。今の話によるとボクは毒キノコを食べたことになる。

「あっはは、安心して。別に死んだりしないし半日後には元通りだから」

 いやいや全然安心できないが??不安しかないが??

「ごめんね~。君を看病してるときにかわいい顔だなぁって思ってさ」

 医療系詳しいからって面白がってことされそうだなこりゃ。

「まぁいいや、思い出せていないことも多いし。変なキノコで思い出せるかもしれないからね」

「ちょっとー! 変なキノコって言ったね!? 私好みの女の子にしちゃうぞ~?」

 あ、ちょっと興味あるかもしれない。

「ふふ、冗談よ。まだ小さい子供にあまり変なことはできないからね。これからこの近くの獣人の里に行くんだけど、一緒においで?」

「獣人......」

 夢で見た内容が気になった。獣人好きでボクを助けに来たっぽいあのお姉さんだけでなく、他にも何か引っかかるような気がする......

「早くしないと置いてくよー?」

 いつの間にかサラお姉ちゃんは茂みの奥にいた。

「いまいくよ~」

 ひとまずサラお姉ちゃんについていきながらいろいろ考えることにした。

ここまで読んで下さりありがとうございます!

ユイちゃんを助けに来ようとしたお姉さん

一体何者なんだ...!

そのお姉さんの登場をお楽しみに!


~ひとくちプチ情報~

サラさんはキノコに詳しいお姉さんで、毒キノコを食べることもあるそう

本人曰く、痺れるくらいが快感に感じて良いらしい

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