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第8話 ベリスフォード王太子視点

 魔王からもらった指輪が次第に赤く染まっていく。それにつれて全身に力がみなぎり、食欲がでてきた。驚くほど身体も軽くて、これが膨大な魔力を持つ者の生命力なのだと実感した。




 同時に、なぜカトリーヌのような生粋の貴族でもない女がそんな力に恵まれたのか、とても不愉快になった。カトリーヌにはモクレール侯爵家の血が入っているが、半分は平民の血で汚されている。そんな者が持って良い魔力ではない。




 私のような王太子という身分の者にこそ、この偉大な力は相応しい。私に授けられるべきものだった魔法が、きっとなにかの間違いでカトリーヌに授けられてしまったのだ。だから、私がその魔力を返してもらうのは当然なことだと思う。




 これで王位に就けるし、なんでもできる。やった! あっははは!




 この指輪は私の意思を反映して、魔力を吸い取る相手を選ぶことができた。カトリーヌの身体に負担をかけないように奪う魔力量の調節することは可能だった。だが、私は魔力を全ていただくことにした。




 半分平民のくせに、こんな凄い魔法が使えていたなんて生意気だからな! それに艶やかな金髪に綺麗なコバルトブルーの瞳も美しすぎる。麗しくて有能な人間は私ひとりで充分なのだ。私は誰よりも優れていて、かつ美しくなくてはいけないのだ。私より優秀な人間などいらない。





 ☆彡 ★彡





 カトリーヌを捨ててから、私は多くの魔力量が宿った健康な身体で、今までできなかったことを満喫していた。思いっきり駆けることもそうだし、観劇や演奏会に出向くことも楽しかった。でも、もっと特別なことがしたい。スリルがあってわくわくすることさ。




 人間が住むエリアの北には、うっそうとした魔の森があり、そこには魔王が住んでいた。一方、南には妖精が住む花園が広がっている。もちろん、魔王は怖いから魔の森には行きたくないが、妖精の住むエリアの川岸や湖畔には水晶やダイヤなどの宝石がゴロゴロと転がっているらしい。それに、妖精は小さくて愛らしく手のひらサイズで、人間には友好的な存在だ。




 妖精たちを家来にして妖精王になってやろう!




 私は色とりどりの花々と輝く湖や川が織りなす、妖精たちの住む秘境に足を踏み入れた。風に乗って鳴る小さな鈴のような音や、流れる清らかな川のさざめきが、この場所に神秘的な響きを与えていた。初めて見る妖精は愛らしくとても美しかった。




 ペットとして可愛がってやるのも悪くないな。




 持ってきた虫取り網で捕獲し、籠に放り込んで持ち帰ろうとすると、私の前にひとりの美丈夫が立ちはだかる。銀髪でアメジストの惚れ惚れするぐらい綺麗な男だった。




「妖精をどこに連れていく? 人間の分際でこのようなふざけた真似をするとは許さんぞ」




 そいつは私が放った火魔法をあっさりと手のひらで受け止め消滅させた。圧倒的魔力。ここは妖精の住まうエリアだ。魔王はいないはずなのに・・・・・・




「お前は誰だよ? 妖精は皆、手のひらサイズなんじゃないのか? まさか魔王? なんでこんなところにいるんだ」




「魔王がいるなら妖精王もいるとは考えなかったのか? 手のひらサイズ? お前は馬鹿か? 俺はどんな姿にでも変身できる」




 姿を変えた妖精王は巨大な伝説の鳳凰になったがすぐに元の姿に戻ると、妖精に危害を加えようとした罪で私を裁こうとした。妖精王の裁きは多分人間界よりも重いに違いない。




「申し訳ありません。えぇっと、実はある女性のために世界樹の葉をいただきに来たのです。かつての婚約者が病にかかり、とても身体が弱ってしまい、私に妖精の秘境に行くように泣いて頼んできました。私は悪くありません。悪いのはカトリーヌです」




 良いことを考えついた。カトリーヌのせいにすれば良いんだ!




「では、そのカトリーヌとやらに会わせてもらおう。妖精を捕まえたのもその女の頼みか?」




「は、はい。その通りです。女は綺麗で可愛いものが大好きですからね。カトリーヌを捕らえて地下牢に入れてきつく罰します!」




 私を鋭い眼差しで睨み付けた妖精王は、カトリーヌを引き渡すように請求してきた。




 カトリーヌはどうせもうじき死ぬよ。だから、みんな、あいつのせいにすれば良い。ちょうど良い厄介払いができると、モクレール侯爵家も喜ぶはずさ。




 あぁ、でもあの妖精を一匹だけでもくれないかな? 小鳥を飼うより楽しそうなんだが・・・・・・

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