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第6話 ベリスフォード王太子視点

私は生まれつき魔力がゼロだった。国王の息子としてこの世に生を受けて魔力を持たないなどとは、とても世間に発表できるものではない。高貴な血筋の者ほど魔力量が多いという認識のこの世界で、王太子である私が魔力を持たないなど、あってはならないことなのだ。父上と母上には私しか子供はおらず、私はこの二人から溺愛されていた。




「ベリスフォード、心配することはありません。魔力量を膨大に持つ優れた魔道士から、その魔力をもらえば良いのです。人から人に魔力を移動させることは人間にはできませんが、きっと魔王ならば可能でしょう。なんとか願いを聞いていただきましょう」




「まさか、魔王と取引をしようというのですか?」




「そうですとも。このままではベリスフォードは王位を継げませんし、一生公の場に出られないのですよ。魔力がゼロだとばれたら民衆が騒ぎ出します」




「それは確かに困りますね。この病弱な身体も魔力がないせいなのでしょうか?」




「もちろんです。膨大な魔力を持つ者を魔法学園に集めて、最も優秀な者の魔力を奪いましょう。そうすれば、ベリスフォードは王位に就けるし、魔力が満ちればその身体も丈夫になります」




 父上と母上は民衆にばれないように真夜中に魔族が住むという魔の森に向かった。そうして、白い貴石が嵌め込まれた魔法の指輪を持ち帰ったのだった。




「この指輪は周囲の魔力を感知し、貴石に蓄積することができます。持ち主の意思で制御できて、蓄積された魔力は貴石に輝くように蓄えられるのですって。蓄えられた魔力によって色が変わるなんて素敵でしょう?」




「こんなすごいものをよく魔王からもらえましたね? いったい、どうやってこれを手に入れたのですか?」




「見目麗しい若い女を50人ほど差し出しました。そうしたら、喜んでこれをくれました」




「若い女? その者たちはどうなるのですか?」




「奴隷や身寄りのない平民の女など、どうなろうと知ったことではないわ。ラザフォードは、そのような者のことを気にする必要はありませんよ。あの者たちも王太子の役に立ったのです。光栄に思うべきなのよ」




「そうだとも。儂らは選ばれた民、いや、神なのだ。その女たちは王族のために命を捧げる栄誉を得たのだ。少しも気にかけることはないわい」




 魔族は人を喰らうとも聞いている。きっと、その者たちは殺されてしまうのかもしれない。でも、父上や母上はそれを名誉ある死であると言い切った。私もなんの疑問も感じない。むしろ、納得できる内容だった。私は王太子で次期国王になる尊い身分なのだから。母上から渡された指輪を右手の中指につけると、指輪が私の指のサイズに自動的にリサイズされた。




 あぁ、早く私に魔力をくれる魔道士がみつからないかな。待ち遠しくてわくわくするよ。その者から魔力を奪い元気になったら、なにをしようかな。森を思いっきり走り回ったり、食事を心から楽しんだり、観劇もしたい。今の身体のままではできないことばかりだ。でも、いずれはそれができるようになると思えば、いくらでも待てる。




 最高に素晴らしい魔法を使える者よ。私のために『栄誉ある死』を受け入れてくれ!



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