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第二十四話 駆除

「――取り敢えず、脚の確保でもしておくか」


[車両ゴーレムの購入も考慮している最中でしたし、タイミングとしては悪くなかったのかもしれませんね]


 目的地への地図は渡されている為、あとは其処まで向かえば良いだけである。

 但し、場所と目的がアレな為、今回は組合からの送迎で仕事を行う訳には行かないだろう。


 夜盗に察知されない位置までしかゴーレムにて乗り付けることは出来無いし、其処からは如何にか自分の脚で乗り込まざるを得ないことが予想出来る。

 要するに――無駄に騒がしい様相で向かわず、最悪車両を降りて一キロ其処らは歩く必要が出ると思われた。


「まぁ、良いや。じゃあ、早速ショップに向かって良さ気なの買っちゃおうか」


[これから先を考えると、いずれはマスターが纏うタイプの装甲ゴーレムも欲しいところですが……。此度は、(しばら)くは使えそうな車両タイプの物を推奨致します]


「現場までの脚と、今までは量的に諦めてた戦利品とかの荷物運びがメインだからな」


 勿論、毎度抱え切れないほどの山のようなお宝が手に入る訳でも無いだろうが――。

 それでもやはり、折角得られたかもしれないものは溢したくない。


 故にそのまま。

 ダヴィデは大通りへと戻り、車輪専門のゴーレムショップへと足を運んだ。


 巨大な整備工場の併設された店の中で従業員へと声を掛けると、様々な種類の車両を紹介される。


[イヴ……俺、正直全く詳しくないんだが、結局どういうのが良いんだ]


[はい、マスター。サイズは中型、馬力も強度も充分な装甲車両タイプが推奨されます]


[荷物たくさん運ぶこと考えたら、あのデカイ箱みたいな荷台の付いたトラック型とやらの方が良くないか?]


[いいえ。あれは、装甲車両ゴーレムで護衛された状態で都市間を行き来する――商会などが主に用いるタイプのものです。荒野には当然魔獣も徘徊しており、マスターのようにお一人で仕事を行う型には、荒事の際に不利となるトラック型では使い勝手が宜しくないかと]


[成程ねー……]


 ――確かに。

 ショップの従業員にも各種スペックについて確認してみるが、イヴよりのの進言があった通り、現状ソロでの仕事がメインとなれば――同じく、装甲車両型のゴーレムを勧められたのであった。


 文字通りゴーレムの車体は頑丈な装甲で覆われており、速度もトラックタイプより遥かに早く荒野を駆けることが出来るらしい。

 加えて、頭脳殻へ搭載可能な魔導精霊の種類もまた、有事の際に戦闘モードに対応可能な幅がある種類のものを組み込めると聞かされた。


 そうなれば、身内からのアドバイスに加え、店の専門家からも太鼓判を押される方へ従っても問題は無いだろう。

 残りは、懐の具合から鑑みる予算次第と相談し――買うことの出来る中で、そこそこの性能を有するゴーレムを購入することとなった。


 朝も早よから、結構な売り上げとなったのであろう。

 上機嫌で見送る店員を背に、ダヴィデは買ったばかりの車両で荒野へ向けて走り出した。


「――これで、荷物で困ることも無いだろうな」


[後に別に車輪ゴーレムを購入して運転することになったとしましても、此方は此方で設定通りに追従させる機能もありますので]


「今更だけど、魔導精霊ってすごいモンなんだなぁ……」


[元は、人工知能――人間を模倣した知性を創り上げる上での産物で御座います故に。より高度な物であれば、人間並みかそれ以上のスペックを有する個体も存在致します]


「はははっ、その内の一人(・・)がイヴなんだろ」


[えぇ、僭越ながらその程度の自負は御座います。したがって、マスターが仮に意識を落としてお眠りになっていたとしても、この装甲車両の魔導精霊にトラブルが発生したとしても、代わりに私がゴーレムを操縦する事も、当然可能となっております]


 何処か誇らしげに言う彼女からは、それこそ人間の様な声色を感じるものである。


 しかし。

 自動操縦も可能となる知能を保持する魔導精霊を搭載しているが、この車両運転用のものであれば、当然のようにイヴ程のレベルの高さは有していなかったので――やはり、現代の一般的な魔導精霊はそれぞれ専門が決まって運用されているものなのだろう。


 故に、よりイヴの希少性を垣間見ることとなったのだろう。

 なんて――ダヴィデは、改めで考えさせられることとなっていた。


 そうこうしている内にも、自身で操縦桿を握りながら只管荒野を走って往く。


 地表は土と砂と岩と石が剥き出しの荒れ地であるが、ゴーレムに備わった衝撃吸収の性能がそれなりに活きているのか。

 運転のしやすさはおろか、乗り心地にも特別の不満を抱かぬ内に――目的地を前に、ダヴィデは車両を停めていた。


 このまま突っ込むなど、愚の骨頂。

 ゴーレムより降車し、ダヴィデは適当な大岩の影から目的である遺構を観察し始めた。


「デカい建物は見えたけど……。さてさて、どんな備えがしてあるのかなっと」


[事前情報では、恐らく二十人もいないような――分隊規模の野良犬共と言っておりましたね]


「でも、単なる食い詰め者じゃなくて、その幾分がシャーマンだ。使役してる魔獣の数と種類にも因るけど、単なるチンピラの集まりよりは脅威だってことに変わりはない筈だ」


[えぇ、マスター。それをご理解頂いているならば、私から申し上げることは御座いません。出来ることから、着実にこなして参りましょう]


「あちらさんも、コッチが一人で今すぐに攻め込んでくるなんて微塵も考えていないだろうよ情報アドバンテージは、間違いなく俺たちにあるんだ」


 ――覚悟なんて、当の昔に完了している。

 故に、言うや否や。


知覚(プリセ)……拡大(マグノ)……検分(インス)……! 地上の出入り口に槍を担いだ見張りが二人と、犬っぽい魔獣が四頭放し飼い。おっと、屋上にも二人弓持ちが立ってるな」


[とは言え、装備も何もあまり上等なものではありませんね。あとは、外に止めてあるトラックゴーレム二台と粗末な装甲型が一台だけでしょう]


 視野を拡大して観察すると、見目としては調練も積んでいない様な破落戸が、暇そうにぶらぶらしているのみである。

 此処まで離れていれば、探知の範囲外なのか。魔獣も各々、寝そべり緊張している様子は見られない。


「ゴーレムの質はコッチのが上だろうけど、中にはまだ仲間も魔獣も居るんだろうよ。遺構の外壁の阻害機能がまだ生きてるのか、中まで見ようとしても透視の精度が落ちそうだ」


[いずれにせよ、まずは外から見える範囲の見張りを処理致しましょう。突入する前からバレてしまっては、総出で待ち構えられてしまいます]


「あぁ、勿論――確実に往こう」


 内なる魔力を循環させながら、ダヴィデはイヴへと頷いたのであった。

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