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第二十一話 根城

「――纏まった金も入ったし、これなら部屋借りれそうじゃないか」


[物にも依りますが、宿に料金を支払い続けるよりは安上がりでしょうし、使い勝手も宜しいかと思われます]


 独り言のように思った事を口にすると、イヴからも賛同の声が上がった。

 これから色々と物も多くなれば手狭な宿では置き場にも困るだろうし、元浮浪児としてもキチンとした自分の城という物に興味があって(しか)るべきだろう。


「こういう時って、直接不動産やに向かっても、市民向けの所じゃ相手にしてくれない可能性もあるよ」


[普段の買い物であっても、発掘者や傭兵ではローンも組むことは出来ませんので。部屋を貸したは良いが、家賃を貰う前に荒野で死んでいたら回収し損ねてしまうという懸念も多くあるのでしょう]


「そりゃそうだ。もし俺が大家でも、何処でおっ死んでるか解らん与太者(よたもの)になんて、絶対に部屋は貸さないね」


 と、なると――。

 何処ぞから口添えを貰うか、発掘者の様な明日の知れない者にすら貸してくれる先を探す必要がありそうだ。


 無論、貧民街のアパートメントなんかであれば、銭の先払いで月単位の貸借は可能だろう。

 しかしながら、偶にメシを食いに行くくらいならばまだしも。

 折角こうして脱した以上、住居というような形にてあの空気の中には身を置きたくないのも事実である。


 ――そんなこんなで、少しばかり悩んだ挙句。

 管理組合の方を頼ってみれば、発掘者でも審査の通る不動産屋をすんなりと紹介して貰えることになったのであった。


 当然、素行が著しく悪かったり、収入の怪しい者では紹介すら難しいと言われた。

 では、何故駆け出しにも拘らずダヴィデが良しとされたのかと言えば、恐らくは初日の遺構での内部データ提出の成果が大きいのだと聞かされた。


 あの後、組合側からも中堅の発掘者を遣って調査に乗り出したとの次第であったが、一部分のみとは言え、ダヴィデの差し出した情報に誤りなどはなかったのである。

 したがって、情報の正確さや事実上手付かずであった遺構への可能性に加え、あの場所から無傷で十二分な戦利品を持ち帰ったことが評価されたのでは無かろうか。


 いずれにせよ。

 ダヴィデが得た評価であれば、何ら問題なく利用させて貰っても良いだろう。


[へへっ、手間が省けたな]


[何時の世も、信用に勝る財産は御座いませんので]


 積み上げるのには苦労が(ともな)うが、崩れ去るのは一瞬である。

 ダヴィデもそれを改めて胸へと刻み、更に上を目指して二本の脚で歩かねばならない。


[この先荷物も増えるだろうし、部屋数は幾らか多い方が良いかな]


[利便性や健康面を考慮し――浴室トイレ付は当たり前として、各種ゴーレムを入手した際のガレージがあっても損にはならないでしょう]


[自宅を持つこと自体夢見たいもんだけど、銭湯にすら通わずに風呂に入れることになるなんてなぁ……。てか、ガレージとかは気が早すぎじゃないのか]


[マスターが徒党に所属しない限り、戦闘においても遺構での発掘作業でも人手という面では問題が生じます。その際に、己の手足を増やすには手っ取り早くゴーレムを所有するのが最良かと思わます]


[でも、移動用の脚にしろ戦闘補助にしろ――決して、安くはないだろ]


[えぇ、ですが先の収入があれば、都市から遺構まで移動する際の車輪系統は購入可能かと]


 確かに、今までのように乗り合いの足では、決まった時間にしか利用することも出来ないのだ。

 資金に余裕が出来たのであれば、先行投資として買ってしまうのも良いかもしれない。


 兎にも角にも、初志貫徹。

 まずは新たな(ねぐら)を見付けなければ、と。


 ダヴィデは(したた)めて貰った紹介状を握り締め、指定された不動産屋へと足を運んだ。

 とは言え、やはり提携している店舗は、便宜上の問題も考慮されてるのだろう。

 管理組合の事務所から徒歩数分の場所へと、件の店は構えられているようであった。


 同じく、オフィス街とは離れているものの。

 大通りに面した不動産屋は、外観的にもしっかりとした出で立ちで建っていよう。

 外からでも足を止めることを考慮してか、入り口近くの大振りな窓や外壁には無数のビラによって、数々の物件が広告のように記載されている。


 但し、事前情報通りに。

 この店は一般市民では無く、ちょいと安定を見せたか小金を持ち、拠点を構えんと考えた発掘者や傭兵をターゲットにしているようで。

 所謂、お高く留まったような雰囲気は、微塵も感じられ無い。


 入店し、従業員に組合からの紹介状を見せると。

 効果は覿面(てきめん)とばかりに、トントン拍子で話は進む。


 立地、環境、部屋間取り、ガレージの有無にオプションなどなど……。

 凡そ前()ってイヴと共に考えていた為、それを伝えれば店側もすぐに保有物件のデータを弾き出してくれるのだ。


 ダヴィデも今日は、時間もあるため。

 不動産屋の案内の下、候補となった幾つかの部屋を巡ることにする。


[部屋数も多く、浴室トイレキッチンも完備、ライフラインも問題無し。家具はある程度備え付けで、敷地内には専用の大型ガレージも付属しております]


[組合事務所にもそう遠くないし、周りもそこそこ収入が安定した発掘者向けの住居エリアみたいだから、治安面もそれほど酷くは無さそうだ]


「えぇ、食い詰めた(くす)ぶる底辺がトチ狂って強盗に来るようなケースもほとんど考えられ無いでしょう」


[近くの店にも余裕で歩いていけるし、ココで良いんじゃないかな]


[相場より少々高めの家賃も、物件の条件や発掘者への賃貸と考えれば、左程可笑しくもありませんね]


 ――即断即決。

 二、三見て回ったが、中々の好条件の物件を引くことが出来た。


 したがって、ダヴィデとイブの双方に文句も生じなかった為、すぐに部屋を決めるに至ったのであった。

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