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3、もしも、モモがサンタクロースだったら 

 桃子は美形さんこと、バルさんの黒くて大きなバイクの前に乗せてもらっていた。固いお腹にしがみついていれば、景色が横にびゅんびゅんと通り過ぎていく。そうして道を走っていたバイクは、ある家の前で止まった。


「地図を見た限り、一番近いのはここだな。この家には煙突はないようだがどこから入るんだ、モモ?」


「サンタクロースには魔法があるんだよ、見ててね!」


 桃子は赤い帽子をしっかりとかぶり直すとぽんぽんと自分の胸元を叩く。そうして息を吸うとふぬっと気合いを入れた。途端に身体の周りがきらきらと輝きだす。


 そのきらきらに全身を覆われたまま、てくてくと歩き出した桃子が、お家のドアに指で触れると手がすり抜けた。


 ね? 大丈夫だったでしょ? と振り返ると、バルさんが感心したように頷いていた。無表情だけど、目が興味深そうにしてた。ちょっと可愛い。


 桃子は手を振り振りドアをすり抜けてお家の中にお邪魔する。てってってっと走って一階を見て回る。トイレとお風呂にキッチンがあって、ここは書庫だねぇ? プレゼントを渡す子は二階みたい。


 桃子は階段をよいしょよいしょと上がっていくと、ケティと名前のプレートがぶら下がったドアをそうっと開いた。内側にくるっと髪の毛が巻かれた可愛い女の子がベッドですやすやと眠っている。そろそろと近づいて、下げられた大きな靴下にリュックに入れられたプレゼントを入れてあげた。


 はいっ、これで一件目のお仕事が完了! 桃子は来た道をこそこそと戻っていくと、玄関から再び外に出た。この間、およそ七分くらいである。優秀なサンタクロースはもっと速いよ!


「終わったよぅ。いい子で寝ててくれたから助かっちゃった」


「起きている場合はどうするんだ?」


「そういう時は魔法で寝てもらうの。サンタクロースは子供に姿を見られちゃいけないからね!」


 …本当は大人にもダメなんだけど。ううっ、今回は事故だから仕方ないけど後でギャルタスさんに怒られちゃうかも。そんな心配をしつつも、桃子はバルさんに手伝ってもらいながら順調にプレゼントを配っていく。時には子供が途中で起きちゃって大慌てしたり、時には大人と子供がリビングで眠りこんでいて、プレゼントを置く場所に迷ったりと、小さなハプニングはあったものの、桃子は順調にプレゼントを配り続けた。

 

 そうして、最後のプレゼントを無事に配り終えることが出来た。桃子は最後のお家の前でバルさんを見上げる。


「ここまでありがとう、バルさん! おかげで全部のプレゼントを配り終えることが出来たよ」


「よかったな。……もう二時過ぎか。これからどうする?」


 バルさんが腕時計で時間を確認していると、桃子のお腹がグウッと鳴った。恥ずかしいけど、空腹は隠せない。みんなきっともうパーティを開いてるよねぇ? それに……トナカイがいないと帰れないよぅ。桃子がお腹を抱えて考え込んでいるとバルさんが聞いてくれた。


「ひとまずなにか食べるか? もし帰れないのならしばらくオレの家に来るといい。部屋なら十分ある」


「ほっ、本当? すんごく助かるよ。実はこれからどうしようかと思っていたの。ご恩は働いてお返しするね!」


「気にしなくていい」


 なんとか桃子の今後の方針が立った時、背後からひょいっと抱っこされた。本日二度目! 太い腕の感触に振り仰いだ桃子は目を丸くすることになった。


「こらっ、年頃の女の子が軽率に返事をしちゃダメだろ?」


「え? え? どうしてギャルタスさんがここに?」


「オレだけじゃないさ。サンタ仲間はみんな帰ってこないモモちゃんのことを探してたんだよ。ギルのしたことはオレがこってり絞っておいたからな」


「……誰だ?」


「サンタクロース頭目のギャルタスさんだよ。私達の中で一番偉い人なの」


 見知った顔を見てすっかり安心した桃子はギャルタスさんの腕をぺちぺちと叩いて、地面に下ろしてもらう。そうして改めてお世話になったバルさんにお礼を伝える。


「お迎えがきちゃったのはちょっぴり残念だけど、あの、バルさんのところにまた会いに来ても……」


「モモちゃん、それはダメだ。サンタクロース禁止事項に当てはまる。今後は会うことは許されないぞ」


「……どうしてもですか?」


「ルールだからな。さぁ、別れの挨拶をしよう」


 桃子はしょんぼりと肩を落としながら、ふぬっと気合いを入れて成長した姿になる。バルさんは変化した桃子に僅かに目を見開くと、じっとこちらを見つめてきた。なんか、そんな熱視線を向けられちゃうと照れちゃう!


「今日は助けてくれて、ありがとう。ちゃんと配達を出来るか不安だったから、バルさんがいてくれて本当に心強かったよ」


「待て、オレは最後にするつもりはない。ギャルタス、取引をしないか? 働きに対して報酬を払うのはサンタクロースの世界も同じだろう? オレはタダ働きに当たるはずだ。モモを手伝った正当な対価が欲しい」


 バルさんの言葉は予想外のものだったけど、当然の主張だ。桃子はそこに気づかなかった自分を恥ずかしく思いながら慌てて口を開く。


「あ、あの、それじゃあ私からなにか……」


「いや、これは雇い主であるギャルタスが払うべきものだ。それとも払えないか?」


「まったく頭のいい男だな。いいだろう、なにが欲しい?」


「その前に確認するが、モモはこの姿が本来のものなのか? いくつなんだ?」


「今は十六歳だよ。サンタクロースはね、十七歳になると大きな姿をいつでも取れるようになるんだよ。それまでは疲れちゃうからほとんどお子様の姿で過ごすの」


「そうか。ならば、オレはモモとのこれからの時間を対価に求めるとしよう。それでは報酬が大き過ぎるというのであれば、不足分はこれからの協力を約束する。今後サンタクロースの世界で困りごとがあれば、オレが人間側として力になろう。どうだ?」


「ふむ、同盟ということか。悪くない話だな。正直、ミニサンタクロース達はまだ子供だからプレゼント先を間違えたりすることもあるんだ。手は多いほど助かる」


「では、それで構わないな?」


「わかった。受け入れよう。ただし、サンタクロースの正体は他言無用で頼むぜ。子供の夢を壊したくはないからな」


「了解した」


「あの、じゃあ、私はまたバルさんに会いに来てもいいってことですか?」


「そういうことだ。協力者となるってことだからな、オレが特例で許可しよう。ただし、今夜は連れて帰るぞ! うちの奴等が心配してる」


「わかっている」


 バルさんとギャルタスさんの視線に、バチバチって攻防を感じるのは気のせい? でも、なにはともあれ一番嬉しい形でおさまったのなら、よかったよね! 桃子はわくわくした目をバルさんに向ける。


「バルさん、近いうちに遊びに行かせてもらってもいいかなぁ?」


「歓迎する。明日、親しい者達と小さなパーティを開く。良ければ家に来るといい。今日出会った場所で夜の七時に待っている」


「絶対に行くよ! 約束ね?」


 すっかり安心した桃子はしゅるんとお子様に戻ると、どこか熱のある瞳で目を細めるバルさんに雪にも霞まない笑顔を向けたのであった。



                                  

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― 新着の感想 ―
[一言] モモとバル様のまた違った感じの出会いで、この後の二人が少しずつラブラブになってくれないかなぁ~って思いながら読ませていただきました。 その後がすごく気になります。 是非、続きを❗楽しみにして…
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