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2.過去:妖物化病と死の足おと



 ――あれは竜胆が小学6年生の頃だったか。

「おい、あれを見ろよリンドー!」

 校舎の外壁に張っているナメクジを見つけたのは、幼馴染の更科翔摩(さらしなしょうま)だった。活発さを絵に描いたような性格で、整える気のない茶色の癖ッ毛が特徴の活発なヤツだ。割と考えなしなのが珠にキズだが、この年頃の児童はだいたいがそんなものだろう。

 そして、どちらが言い出したのかは思い出せないが、交互に石を投げてナメクジを潰そうという話になった。

 ――ガッチャアァァン!

 早速、翔摩の大外れの一投目が廊下の窓ガラスを粉砕した。

「何やってんだよショーマ!全然方向が違うじゃねーか!」

「あいつがフェイントをかけてきやがったんだよ!」

「嘘つけ!――見てろよ!」

 竜胆は投球モーションに入った。投擲は大得意だ。遠くから土煙を上げて疾走してくる青筋立てた教師を目視した翔摩が、尻に帆掛けて逃げて行ったのにも一向に気にせず気付かず、集中の世界に入った竜胆は残像を描く流麗な動きで石を持った手を大きく振り上げ、美しいフォームで腰を捻ると流れるように腕を振った。投擲とはすなわち距離感覚と身体制御。注視すべきは目標ではなく、それへと至る弾道のみ。完璧であれば望んだ軌跡を物は飛ぶ。あとはその先に目標さえあればいい。石ならば風向きなどの考慮は不要、ビュッと飛んだ竜胆の投擲石は、あやまたずナメクジに直撃して、グチャッと肉片を撒き散らした。

「よっし!」

「何が、よっし!だ馬鹿タレ!」

 ゴツンッ!とゲンコツが竜胆の頭に直撃した。「ッ~~!」

 竜胆は痛みにしゃがみこみ、教師は続けて走っていって翔摩をゲンコツで殴り飛ばした。さすが元軍人の担任教師、体罰に躊躇なんて言葉はない。軍事政権が今だ幅を利かす現代日本では、実に見慣れた光景だ。

 ――悪魔警戒警報のサイレンが鳴ったのはそんな時だった。


「お前らな~。ナメクジにも命があるんだぞ~?むやみに殺していいもんじゃない。知らんかぁ?一寸の虫にも五分の魂って言うだろぉ~?」

 悪魔が出てきたおかげで学校はめでたくも昼休みで休校、急遽集団下校と相成ったが、引率するのは当然ゲンコツ担任教師だった。おまけに、竜胆と翔摩を傍に置いて離さない。

「それって、小さい虫は魂も小さいって言ってるんですよね。差別じゃないですか?」竜胆はぼそぼそと言い返した。

「あぁん?」

「大きいと魂も大きいんですか?象は人間よりも魂が大きいということでしょうか。詰まるところ、人類が万物の霊長と言うのも嘘なんでしょうか」

「やめろリンドー。刺激するんじゃアない。そっと、そっとしておくんだ。また暴れだしたら手が付けられねーぞ?」

「お前らな……」

「でもナメクジって植物を枯らしてしまいますよね。害虫みたいなものじゃないんですか?」

 尚も言い募る竜胆に、教師は鼻で笑った。

「ナメクジは虫じゃないだろ」

「言葉のあやです先生。そんなことも分かりませんか?」

「……てめ~」

「それに魂があるから大事にしろってことなら、先生は手に止まった蚊をパチンッてしないんですか?ハエがご飯に止まって手をこすり合わせてたら、合掌を返してやるんですか?ゴキブリが先生の家の台所を高速で散歩していても、『今日も元気だねっ』て手を振って明るく見送ってあげるんですか?」

「……」顔が赤くなっていく教師の顔色を見て、翔摩は気遣うように竜胆の肩に手を置いた。

「だからやめろって!頭で勝負してやるな。気の毒だろぉ?」

 ゴンッ!

「イッテェェ~!なんで俺にィ?やり込めたのはリンドーですよね?」

「うるさい」

 機嫌悪い教師の後を、二人はしばらく黙って後をついていった。さらに後ろをついてくる児童たちは、次々と自宅の門をくぐって去っていく。しかし、竜胆と翔摩の家は詩々魅(しじみ)町市営住宅の端の端。教師から離れられるのはグループの最後の最後になってしまう。

 不機嫌そうにぼそっと翔摩が言った。「……先生はいつまでついてくるんですか」

「はぁ?おまっ、これは集団下校だろ」またクソ面倒な、みたいな顔で嫌そうに教師が応じる。

「先生ってストーカーですか?」

「悪い子のな」

「認めましたね」小さく竜胆が追従した。

「うるさい。黙って歩け」

 だが、広い交差点に差し掛かり、重厚な車両が猛スピードで曲がって行ったのを見た翔摩は目を輝かせた。幌のついた軍用車両だ。悪魔退治に興味津々な竜胆と共に、コロッセオ近辺を遊び場にしている翔摩にとって、それは馴染みの軍用車両だった。

「うおッ!戦闘トラックだぜ!追いかけてみよーぜリンドー!」

「やめんか!」

 面倒くさそうに教師が翔摩の肩を掴んで止めた。反対側の肩を掴んでいるのは竜胆だ。

「信号赤だろ?飛び出したら危ないぞ」

「そ、そう、その通りだ」

 賛同してくれた竜胆に教師はほっとしたように頷いた。

 だが、次の瞬間、猫がしなやかに車道を駆け渡って行くのを見つけた竜胆が、

「猫が――!」の一言で全力ダッシュしていくのに、教師はワンテンポ遅れた。

「あぶねぇッ!」

 間に合ったのは翔摩だ。彼のタックルに竜胆は押し倒され、その目前を乗用車が走り去っていく。

 急ブレーキをかけたドライバーが睨んでくるのを、教師が慌てて頭を下げた。

「アブねーだろリンドー!」

 翔摩が兄風を吹かすようにたしなめた。「猫を見たら突撃するのはやめろ。これで何度目だ?」

 だが、竜胆は聞いてなどいなかった。通りを渡っていく猫の姿に釘づけだったからだ。そして無事に最後まで渡り切ったのを見届けて、ようやく安心して親友の顔を振り返る。「ん?なんだショーマ」

「天草ぁ!」ずんずんと教師が怒り顔で近づいてくる。

「おお!ショーマ!なんでか怒ってるが!」

「せっかく頭を下げたのに、頭のてっぺんキズが気付かれなかったからだぜリンドー!そのために頭を剃ってるのに――ぁイテェッ!」

「元遠征陸軍軍人の嗜みで剃ってるんだバカモノ!そもそも下げなくても分かるんだよ。……いいかお前ら」

 翔摩を殴った教師は剃り跡青々しい頭を赤くして震える指を突き付けた。

 よく見ると、この教師の眉間から頭頂部にかけて赤い傷跡が残っている。繰り返し聞かされた自慢話では、中東まで出張った作戦中に狙撃された跡らしい。鉄帽を貫通し肌の表面を削ったが、そのまま血を流したままで作戦を続けたとか。ごくいっとき英雄的に報じられ、その新聞記事のコピーを今だに教室に張ってもいる。退役後もわざわざ丸坊主にしているのは他人に傷に気付いてもらって、持て囃されたいためだ。まさに自慢以外の何物でもないものが、そんな傷と頭と厳つい顔に加え筋肉粒々で迫られる恐怖に、2人の児童は身を縮めた。

 だが、教師はゲンコツを落とさなかった。

「交通ルールは守れ。お前らが怪我をしたらつらいのはお前らだけじゃなく、家族もなんだからな!何が大事か考えろ!」

 てっきり殴られると思った竜胆は、ちょっと感動した。「分かりました。先生っていい人ですね……」

「俺は問答無用に殴られたけどなっ」

「お前らといると疲れるわ……」

 竜胆の言葉で毒気を抜かれたように、教師は目を逸らして、やれやれと立ち上がった。「労わってくれよ、もうトシなんだからさ……」

「それはまごうことなくトシの所為ですね」翔摩が笑顔で頷いた。

「ビタミンは摂れてますか」そう気づかわしげに訊いたのは竜胆だ。「摂取した栄養を全身に運ぶのに必要なものですよ。猫なら日向ぼっこをしたら体毛にビタミンDが生じて舐めることによって摂取できますが、先生は……その、毛が」

「生えてても舐められねーよ!」

 ゴンッ!

「ぁいッたーッ!」

 竜胆にゲンコツを振るったところで、教師の懐から電子音が鳴った。

「はいもしもし」

 頭を押さえて呻く竜胆の横で教師はスマホを耳に当てた。それからしばらくふんふんと聞いていたが、

「オゥみんな」教師は、眉毛を開いて野太く声を張り上げた。「悪魔はコロッセオ内で退治されたようだぞ!」

「おお~!」

 とどよめく児童たち。翔摩だけがノリで「え~!」と不満そうな声を上げたので、竜胆は軽く頭を叩いておいた。

 『悪魔』。

 人類が暮らす地表のはるか真下、途方もなく深い地下に存在すると言われる『地獄』に棲まう異形の住人。TVに顔を出す学者曰く、ヒトをはるかに圧倒する力を持つ、人類の絶対敵対者、らしい。

 らしい、というのは、竜胆が悪魔をじかに見たことがなかったからだ。ただ、去年軍隊に入った――軍とは違う組織らしいが、違いなんて分からない――紫苑叔父の悪魔との戦闘譚を胸を躍らせて聞いている。叔父も、今日の悪魔と戦ったのだろうか?

 戦いの危険に思い至ることなく、竜胆はあこがれに、ほう、となった。

 悪魔は時折、自分達が地上に穿った穴から這い出て来、軍隊によって阻止されている。時々は今日のように悪魔警戒警報が市内全域に鳴り響くが、それでも大体は被害を出さずに退治される。退治しきれないほど強力な悪魔が現れた時は、大規模自然災害同様に、『悪魔災害』と呼称される。とはいえ、そうそう起こったりはしないようだ。

 ――数少ない児童たちがざわざわするなか、

「今夜、うちの街がニュースになるかなぁ!」翔摩はわくわくしていた。

「取材が来るかもな!」

「『コロッセオ』に行こうぜ!」

「いいな、それ」竜胆は話に乗った。「悪魔の残骸も拾えるかもしれないしな」

「リンドーは猫を見つけても走り出すなよ」

「ショーマに言われたくないし!」

「いや~リンドーは絶対猫で人生が狂うタイプだって」

「おおッ!分かってんな」明らかに揶揄の語調だったが、竜胆には逆効果だった。「オレの夢は猫カフェを開くことだからな!」

 だが、まだスマホを眺めている教師に目が留まって、竜胆は不安になった。

「なんだよ」

「悪魔が退治されたので、臨時休校はナシ、ってなるかもしれないぞ」内緒話をするように竜胆は囁いた。

「え~今さら?」翔摩は心底嫌そうな顔だ。

 だが、さすがに中断は昼休みだったこともあり、そのまま集団下校も解散となって、竜胆達は歓声を上げて自宅へ向けて走り出した。

 本音を言うと直接コロッセオに向かいたかった。だが、ランドセルを背負ったままだと大人に怒られるし、おやつも持っていきたい。

 そうだ、悪魔の残骸を拾った時に、持って帰られるカバンも用意しておかないと!

 実に普段通りの日常――彼もまた、少年ならまず誰もが持っている悪魔図鑑を眺め、うっとりと悪魔を退治する空想に浸る様な、ごく普通の子供だったのだ――この時はまだ。

 悪魔なんて所詮、どこか遠い、別世界の出来事のようにも思っていたのだった。

 一方、翔摩は教師に一言貰っていた。

「おい更科!さっきの戦闘トラックという呼び名はなんだ!せめてガントラックと言え!」

「先生も好きですねぇ」


「……ただいま~」

 囁くように暗い屋内に囁くと、竜胆はそっと玄関の扉を閉めた。両親の不在は分かっている。妹もまだ帰ってきてはいないらしい。

 だが、姉がいる。

 引き籠り中の姉と出くわすのは厄介だった。最近理不尽な怒りをよく家族に向けてくる。元から理不尽なヤツなので、刺激しないに限るのだ。

 だが、手を洗おうと洗面台に向かうと、浴室のガラス戸にシャワーが当たっていた。

 まずい。一瞬、手を洗わずに離れようかと思ったが、まあ、静かにしていれば気付かれずに済むだろう、と足音を忍ばせて蛇口を捻ろうとした。

 シャワーの音が止み、がちゃりとガラス戸が開いたのはその時だ。

 びくりと震え、鼓動を早めながら静かに洗面所を出ようとした竜胆は、次に見たものに凍り付いていた。

 ――浴室から、妙なものが伸びている。

 妙としか言い様がなかった。なんと――珊瑚のような質感と色をした真っ赤な棒切れが、長くにょっきりと伸びてきているのだ。

(……え?)

 しかも、それは腕のようだった。先端には5本の指らしきものがある。

 だけれども、棒きれのような腕に比べると、手首から先の造形はあまりにも巨大過ぎるものだった。

「……」

 息を呑む竜胆の前で、そいつはついに1メートルほども伸びた。そして有り得ないほどに長い指を器用に折り曲げ、棚を開けて姉の青紫のバスタオルを摘まむと浴室へと戻ろうとする――。

「~~~~◆〇■✖▲▲□■●~~~~!!!!」

 どんな悲鳴を上げたか、竜胆は覚えていない。ただ、空想の存在の様に半ば思っていた悪魔が現実に在って、それが人知れず我が家に入り込んだのだと誤解したのは確かだった。

「!」

 『悪魔』の指は、ビクッとタオルを取り落とした。が、すぐにそれを鷲掴むと風を切って浴室に消えた。

 やがて――凍り付いたままの竜胆の前で再び扉が開き、頭までタオルにくるまった人のカタチが、のたりとした足取りで踏み出して来た。

 それを目の当たりにして、竜胆はもう一度悲鳴を上げた――さっきとは異なる意味で。

 だって、見下ろす冷たい視線が、姉のものだったから。

 姉は――

「……」

 へたり込んだ竜胆から物静かに目を逸らすと、のしのしと横を通り過ぎ、彼女の自室を開け閉めする音ののち、やがて玄関から出て行った。

 そこでようやく竜胆は金縛りが解けた――危険なものが、家を出て行ってくれた、そう感じて。

 だが、同時に深い後悔が胸を渦巻いた。

 あれは姉の目をしていた。

 だから、あれはきっと、姉だった。

 ならば、今――

 (オレは、姉を追い出しちゃったんじゃ……ないだろうか)

 あんなに嫌な姉だったけど――

 性悪で口うるさくて暴力的で小言を言いまくるイヤなイヤな姉だったけど――

 だけどもう、彼女とは二度と会えないのではないか、という不安がみしみしと心を苛み始めたのである。

 

 実際に――姉はそれきり姿を消した。なんと、軍人の警戒する『コロッセオ』へとまんまと入り込み、『悪魔の出現孔(キャザム)』を通って地獄へと潜って行ったらしい。自殺の手段としては、この上ない完璧な方法と言えた。

 這い出てきた悪魔の絶対阻止こそ『要塞(コロッセオ)』唯一の機能にして軍の本分、人の侵入は想定外だ。修理業者の物資の搬入と設備点検の合致した時期を突いたのは、抜け目ない姉の最期の本領発揮と言えなくもないが、その日に至るまでの3日もの間、どこぞに隠れていた姉がさて何を想い、何を考えていたかの心の裡を思い描くと、胸が張り裂けそうな哀切が今もって荒れ狂う。

 姉が、人体を悪魔のような何かに変えてしまう進行性の奇病『遷延性魔素分子凌化症候群』、通称『妖物化病』に罹患したと診断されたのは、遡ること数か月前のことらしい。ちょうど姉が引きこもり始めた頃だ。そして不治の病ゆえに戻る当てもない入院を3日後に控えた頃合いだったと継母に聞かされ、一切を教えてくれなかったことを竜胆はなじった。滅多にないことだったけれど。

 とはいえ、継母の判断は間違ってなどいなかった、と子供心にも分かっていた。

 竜胆の実母も同じ病気で亡くなっている。だからその気遣いから来る当然の判断だっただろうし、継母が本当に優しい、血の繋がらない子にも心の底から慮ってくれる人だということも、竜胆には理解できていた。

 だが、彼はその想いを是とできなかった。

 それから3年後。中学生最後の年の冬、竜胆自身も『妖物化病』に罹患したと知った。

 ――猫カフェを作る、という将来の夢が崩れ去った瞬間だった。

「今日新型ヘリが配備するらしいって!行こうぜ!」

 中学最高学年でも、相変わらずの翔摩。

「見学申請しておかないといかんだろ?リンドーに任せられるか?」

「……」

「……竜胆?」

 翔摩の訝し気な視線が眩しくも面映ゆく、竜胆は不自然な笑みを浮かべるだけだった。

 ――笑おうとしないと、泣いてしまいそうで。

 継母と妹は、卒業直後の入院を勧めていた。姉が入院するはずだった専門病棟だ。

 一般に、大病を患った者は、なぜ自分がこんな目に遭うのだと苦しみ、荒れる者も少なくないらしい。

 だが、竜胆は、

(やはり、そうなったか……)と、どこか当然のことのように受け入れた。あたかも生まれた時から決まっていた運命が、ただ明らかになっただけのように。

(バチが当たったんだ)

 母も姉も同じ病気に罹ったのだから、自分も罹患しても不思議ではないという覚悟はあった。

 でも、きっと最大の理由は――

(オレが、姉ちゃんを追い込んだから……)

 あの時に姉が入院したとしても、今日までは生きてはいまい。

 罹患して1年と生きていられるのが稀なこの病気は、いや、この呪いは、癌を含めたあらゆる難病、人類の病気の一切と異なり、進行すれば薬物は効果を失っていく。モルヒネのたぐいも効果は低下の一途を辿り、入院の如何にかかわらず、結局は肉体が非現実的な悪魔の形に成り替わっていく痛みと苦しみと恐怖とで泣き叫び、悶え苦しんだ挙句、物理的に命を絶たれるか、幾分か薬の効果のあるうちに安楽死させられるかのどちらかでしかない。

 ――しかし、自ら命を絶つほどの苦しみがあるだろうか。

 姉がどんな無念を呑んだのだろう、と考えると、死の恐怖に入れ替わるかのように、ああ、次は自分の番が回ってきたのだという内罰的な気持ちでどこか、救われたような気持ちになるのだった。

 竜胆は反抗の素振りも見せずにこっくりと頷いて入院を快諾した。

 そして、中学の卒業式を終えたその足で、独り密かに出奔した。

 そして1年――


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