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第三話「人形の国のハガネ」2/3

 =珠川 紅利のお話=


《現在、市内に、巨人が、現れました。市民の皆さんは、最寄りの、地下避難所に、避難を開始してください。繰り返します…》


 戦闘警報の中、学校のみんなでエレベータに乗り込んで、校内地下のシェルターに降りる。

 訓練の時は、わざわざ非常階段を使ったりするから、むしろ楽だったかもしれない。


 シェルターは天井の高さはそれほどでもないけれど、一部屋で体育館いくつか分の広さがある。

 ここは昔の戦争の時の、タイリョウハカイ兵器が落ちてくるときの備えとして作られて、実際に大勢の命を救ったのだという。

 大人連れで入る市民シェルターと違って子供ばかりだからか、低学年の子供たちはきゃっきゃと遠足気分みたい。


 央介くん達は――


 ――あれ? 一緒に避難してきてる。

 巨人が出てきているのに、ハガネは戦いに行かなくていいのかな?


「お、ニュースでやってるぜ!」


 朝のケンカの空気を何処かへやった狭山さんが、備え付けのテレビモニターに食いつく。


 画面端にLIVE-自衛軍ドローンカメラとテロップの付いたその映像の中心には、見慣れた中央公園前の交差点と、そこに佇む非現実的な“ドレスの女の子”が映っていた。

 それは、女の子の姿をしていて、でも交差点と比較すると大きい。

 やっぱり、巨人だ。


「なんだ、前の馬男とは全然違うな? お姫様みたいな恰好しやがって」


 たしかに、央介くんのハガネも含めて巨人は見た目に共通点がない。

 巨人というだけあって大きい、ぐらいかな?


 ――それでも、この巨人はハガネや馬の巨人より小さいような気がする。

 ハガネに持ち上げられた時の高さは、その辺のお家の二階と同じぐらいの高さだった。

 頭の高さも考えればもう少しあったはず。


 比べて、このお姫様巨人は、立っている交差点の模様からすれば、その半分もない。

 多分、自動車を立たせたぐらい。


 ……まさか、巨人の子供?

 巨人も成長して大きくなる?

 あれ? そもそも、巨人って、いったいなんなのだろう?


 央介くん達のハガネは、央介くんがペンダントの青い結晶を使ったら、その場に現れた。

 じゃあ、他の巨人も、央介くんみたいに誰かが現れさせている、ということ?


 ――そうだ、央介くん達に直接聞いてみよう。

 全部を答えてくれるとは限らないけれど、ヒントぐらいは貰えるかもしれない。

 壁際に居る二人を見つけて、呼びかける。


「多々良くん、あの……」


 ……あ、でもまた悲しい顔をされたらどうしよう。

 言えない事は辛い事みたいだったし。


「珠川さん、どうかしたの?」


 私が招いて私が迷ったタイミングで二人がこちらに歩いてきてしまった。

 えーと、えーと、別の話にしよう。


「その……、巨人、出てきてるね」


 いや、いくらなんでもこの話題は無いかな。

 私が後悔して、でも央介くんは普通に頷いて。


「うん、ちょっと怖いかな」


 ……あれ? 央介くん?


「俺は怖くないかな。二人とも守ってみせるぜ?」


 佐介くんはいつも通りのような、それでも何か噛み合わないような?

 ひょっとして、周囲の人に気付かれないような、演技?

 周りを見回して、聞こえそうにない程度の小声で、話しかけてみる。


「ええと……その、巨人と戦いに行かないの?」


 聞いた一瞬、央介くんと佐介くんが不自然に止まった。

 一瞬だけで、すぐに元通りになったけれど。


 ――ううん?


「お! ハガネ来たぜ!」


 狭山さんの大声。

 学年を問わずに男子がテレビモニターに集まる。


 映像では、お姫様巨人の立っている場所から離れて、坂の上の方にハガネが立っていた。

 あれ? じゃあここにいる央介くんと佐介くんは?

 それとも……ハガネってたくさんいるの?


「あの、央介くん?」


《ごめんなさい、突然だけど、驚かないでね。珠川 紅利ちゃん。》


 いきなり、耳元で声がした。

 大人の、男の人の声?

 慌てて周りを見ても、それらしき人はいない。


《この音声は、君の耳に向けて発振してるから、他の人には聞こえない》


 央介くんと、佐介くんがこっちを見ているのに気づく。

 この声は……。


《今、君の目の前にいる、多々良 央介君と佐介君は、我々が遠隔操作している――まあ偽物のロボット、なんだ》


 佐介くん? が、手を揚げてひらひらと振ってみせる。

 あっけにとられた私は、それでも説明を求めた。

 なるべく、小声で。


「えっと……どういうこと、でしょうか?」


《こちらは、県警の、外部組織協力課……わかりにくいかな》


《央介君達の協力者、ということで理解してくれる?》


 二人の男の子の姿をした、大人の人たち。

 私は、ぎこちなく、ちいさく、うなずく。


《ありがとう。簡単に言えば、ハガネが出ると央介君達が居ないってなると、最悪バレちゃうからね》


 ――ああ、なるほど。


《なので、事情を知ってるあなたも、なるべく話を合わせてくれると助かるのだけれど、いいかしら?》


 今度はしっかりうなずく。


 ――偽物。

 一体、いつの間に本物の二人とすり替わったのだろう?

 私が二人がすり替われそうな時間があったか考えていたその時。


「二対一かよ! ……あ? ……三、……四対一!? ずるい!」


 また狭山さんの声で、視線がそっちに引っ張られる。

 モニターに映るお姫様巨人は、さっきとは別の場所に立っていた。

 丁度ハガネの立っていた場所からは後ろにあたる、国道の高架下。


 画面が切り替わって、これは、さっきの交差点。

 お姫様巨人は……あれ、移動したのかと思ったけど、ここにもいる。


 これ、お姫様巨人はあっちにもこっちにも……。


 ――巨人が、いっぱいいる!?


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