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第三話「人形の国のハガネ」1/3

 =どこかだれかのお話=


「はい、ここと、ここにサインをお願いします」


 その言葉に従って、誂えの良いオフィスに硬筆の音が響く。

 それを取り巻くほとんどの人物は軍服を着ていた。


「責任者、多々良 上太郎、と。…はい、これで文書は整いました。あとは我々にお任せください」


 この中では少数派なスーツ着用の、いかにも公務員といった男性は、記名された書類を整え、一礼して席を外す。

 わざわざ室外へ書類を持ち出すのは、その内容がこの軍人ばかりの部屋だけでは決着しない――複数の組織に跨っているためだ。


「よろしく、お願いします」


 筆をおいた背の高い男、多々良上太郎は、男性を送るように深々とお辞儀をした。

 書類がもたらす将来もあって、その表情は明るいものではない。

 そこへ、犬の顔に軍服の男性、大神一佐がすぐ隣から声をかける。


「……気を楽にしてください、と言える状況ではありませんな」


 背の高い男、上太郎は彼に向き直り、辛さを隠さない表情を見せる。

 そこへ、長い尻尾の女性軍人、狭山一尉が自嘲気味に言う。


「子供を戦場に出す、そんな書類を書くことになった親にかける言葉なんて、そうはありませんよ」


 その言葉を聞いた、場にいる親らはそれぞれの会話を止め、わずかに俯く。


「うむ……私のように、人扱いされなかった子供らが武器を持ち、戦い、死んでいく、そういう時代に育っていれば覚悟も変わったかもしれない。だが、今は何もかもが違う」


 獣人である大神は、自身の過去と現在を比較する。

 苦難の過去を経て、今の立場にある自身。

 恵まれた時代にあって、戦いを強いられる親子。


 判断の天秤はつり合いも取れずに揺れ続ける。


「なら、私みたいに殺しても死なないようなのなら、気は楽ですかね?」


 狭山はとりあえず場の空気を壊すことにしたようだった。

 それは彼女の自信と“事実”からの冗談だったのだが――。


「流石にそれはブラックジョークが過ぎるな、狭山一尉」


 大神一佐が部下を窘める。

 “一族で力を持つもの”と、唐突に発生してしまった力に振り回される一家では事情も異なる。


「とはいえ、事実として“巨人”は、狭山一尉のようなエビル・エンハンサーに匹敵する、破壊不能の事象だ」


 大神は机上の機器を操作し、スクリーンに映像を映す。

 砲火の直中にいるハガネの姿がそこにあった。


 幾度もの砲弾の直撃を受け、炎の海の中央にあっても、微動だにしない。

 それを操っているのは若干12歳の子供。

 そして、それを作り出せるのは今は彼のみ。


「――実証試験で通常兵器による有効結果は皆無。我々軍人のメンツは丸潰れ。呆然自失の兵らのメンタルケアで手一杯となっている」


 大神は両手を広げ、お手上げ、というようなしぐさをして見せる。

 無論、冗談だろう。

 しかし聴衆からは笑いも漏れない。


 映像は次の項目へと切り替わっていき、赤い結晶、Dマテリアル。

 そこから矢印がつながる形で工程が示され、青い結晶が大きく映し出される。


「Dドライブ……。個人で携帯可能な、精神力を利用した障壁の発生装置。よくこれだけのものを作られたものだ……」


 大神はその技術を、また作り上げたことへの素直な称賛を漏らす。

 しかし、その開発者である上太郎は笑顔も見せない。

 そこへ、狭山が続ける。


「今でこそ巨人という想定から外れた使い方をされていますが――」


 狭山は片手で拳を作り、それをもう片手で止めて見せる。

 物理的影響が防御される、というイメージでの行動のようだった。


「――正しく使われれば軍事、民間、いずれの分野にあっても事故を、負傷を激減可能。夢の技術ですね」


「……ええ、まさに夢の、夢そのものの技術でした……」


 上太郎は、ここには居ない研究仲間らを思いながら、その成果を、悔やむ。

 仲間と、そしてその子供達あって完成した技術は、今や軍や行政を巻き込む大事件を引き起こしてしまったのだから。


「こんなことになるのなら、いっそ成功しなければよかったのかもしれない……」


 上太郎が後悔を口に出した時だった。


「多々良さん、それは違いますよ」


 大神が、その考えを引き留めた。

 それを受けて上太郎が顔を上げたのを確認し、更に話を続ける。


「軍にいると実感がある話なのですがね。技術というのは、結局はどこかが同じようなものを開発してしまう」


「それは……、よく聞く話ですが」


 大神は椅子に座ったまま、少し身を乗り出す。

 目の前の科学者の弱った精神を、少しでも補強するために。


「その上で、あなたのような良心ある人が完成させ、陽の光が当たる場所へ持ち出した。どこかの団体が独占運用とならないように」


 そこで一度言葉を切って、上太郎が言葉を消化するのを待ってからの、結論。


「そうやって思想や組織に酔わず、理性が勝っているうちは、戦では負けはない」


 言い切ってから、大神は悪いことをした犬のように耳を伏せ、更に少しの身振りを含めておどけながら付け足した。


「……負けないだけで、勝つとは言い切れないのですがね」


 上太郎は、最近出会ったばかりの大神を冷静な司令官と思っていたが、ポーカーフェイスには不向きな性質のようだと感じた。

 実直だが柔軟性もある、好感の持てる軍人。

 それが大神への評価となった。


「さて、演説はここまで。理屈より実際の戦場と、息子さんの事に移りましょう」


 スクリーンに、要塞都市の地図が表示される。

 説明するのは作戦部の技術士官。


「現在、本部であれこれ対策を立案していますが、主に行われているのは巨人の元となる赤い結晶、Dマテリアルの排除です」


 地図の大通りや国道、高速道。

 そのそこかしこに警戒色の点が大小、そして数多く書き込まれていく。

 更に重ねるように押収されたであろうDマテリアルの保管写真。


「警察側によりますと、本日9:00まででの市内での回収、または都市ゲートでの検出などによる押収が約800kg。ありとあらゆる経路で、物資などに混入されて入ってきています」


「やりたい放題にしてくれるものだ」


 大神が毒づく。

 軍と警察が警戒しているにもかかわらずにそれだけの事をされている。

 それで自尊心が傷つかないはずもない。


 続いて映像に重ねられたのは、市街地の路上に散らばるDマテリアルの写真。


「他、市内に散布されたものの回収はほぼ完了。発動条件を満たす確率は低くなっています」


 次々と映像は切り替わって、ポスターや告知書類の図案などが表示されていく。


「また自治体協力のもとでの啓発活動も進行中です」


 話がそこまで進んだところで、数少ない警察の列席者が手を挙げて発言する。


「……現状、所持は違法にならないため、言われて素直に廃棄してくれるか、という危惧があります」


 軍の技術士官が頷いて、返す。


「それも含めて、Dマテリアルに関しては、多々良博士発案の対策がありまして、そちらの完成次第、排除も不要になります」


 おお、という歓声が幾人かから上がった。

 そこへ上太郎本人の説明。


「巨人というのはDマテリアルが投影した力場です。出力装置を断ってしまえば出現自体しません」


 そこへ技術士官が続ける。


「対策案に用いる“RBシステム”は現在、本作戦への最適化調整中で、早ければ来月には投入できるはずです」


 来月を遅いとする意見、十分だとする意見がそれぞれ漏れた。

 十分だとするものは、RBシステムというものを取り扱うことへの警戒も織り交ぜて口にする。


「それまでは、我々軍と、央介君……夢幻巨人ハガネによって巨人の襲来を凌ぐしかない、というわけだ」


 そう大神が統括した所に、技術士官が懸念の声を上げる。


「“巨人被害”のケアに関する手配は進めています。ですが、あまり大勢がとなれば露呈します。巨人が倒れる以外の異変が……」


 そこへ返るのは大神の冷徹。


「初期事件では大きな影響があったというが、現在は直接の被害が発生する事例は稀、という話だろう。それに打てる手は打ってある」


 上太郎が説明を重ねる。


「ハガネは初期のDマテリアルによる巨人と比べてエネルギーの制御面を改良し、更に補佐体――佐介も組み込むことで、発生するダメージを軽減してあります。あの事態は……二度と起こさせません」


 上太郎の、大きな後悔を感じさせる説明。

 何が起こったかを資料でのみ知る大神が大きくため息をつく。


「こればかりは数字で測れるものではない。被害者側の強さに委ね、更にアフターケアを徹底するのみだ」


 残る、消化不良。

 しかし、議題は止まらない。


「それでは……次、市内に侵入してきているギガント工作員ですが、未だに逮捕どころか発見すらできていません」


 幾人かが思わずのため息を漏らす中で、警察側の参加者が窮状を説明する。


「対象の装備は、最新鋭の軍用装備の更に上を行っています。我々警察の対処能力を超えている、というのが実情ですよ」


「なるべく軍も補助したが限界だ。技術面以上に情報共有などの法的側面の方が難しい」


 二つの大組織が悲鳴を上げていた。

 人を守るための(しがらみ)が、今は障害になっていた。


「……こういうところでは、軍と警察で分かれているんですね。警察の捜査と軍の作戦、別でしなければならないとは……」


 組織外部の上太郎は、その辺の事情には疎い。

 答えるのは、先ほどからの技術士官。


「だからこその、今回の申請になるわけで」


 今回の申請、それこそが打開の鍵だった。

 丁度オフィスのドアが開き、先ほどのスーツの公務員が申請書類を抱えて戻ってくる。


「お待たせしました。承認が下りましたよ」


 届けられた書類を確認した大神は大きくうなずく。


「うむ、これで多々良博士とご子息といった外部人員、我々自衛軍、そして警察、自治体が一元の管轄で行動できる」


 上太郎にも同じ書類が回され、確認しながら答える。


「……これが、“J.E.T.T.E.R”への加入という話でしたね」


「日本番外技術・戦術専科の各地方部門、Japan Extra Technology and Tactics Expert team at Region.……頭文字でJETTERとなります」


 技術士官は概要を一息に説明。

 更に一般論も加える。


「“番外”の協力者が非常に目立つんで、都道府県ヒーロー隊なんて言われますけどね。まあ報道協定とかも付属しますんで、多々良博士は活動面でも生活面でも楽になるはずですよ」


「よろしく、お願いします……」


 上太郎の一礼を横目に、書類を一通り確認し終わった大神は軍関係者を集めた。


「我々の準備は整った。あとは、たった一人残された少年を、それに頼るしかない大の大人がどこまで支えられるか、だ」




 =珠川 紅利のお話=


 私は、央介くんがハガネに変身するのを見た。

 光に包まれた央介くんを中心に、立体映像のように巨人のハガネが現れた。


 けれど、そのあと、ハガネに運んでもらって避難したシェルターでは、あの戦闘警報の中、どんなことが起こったのかよくわからないまま。

 噂では駅前で怪物が暴れて、軍隊が戦った、というような話だけ。


 翌日、学校に来た央介くん達にこっそり話を聞いてみたけれど、詳しいことは教えてくれなかった。


「央介くん達が悪い人たちをやっつけたんでしょう?」


 私がそう言うと、央介くんは何故か「ごめん」とだけ言って、それ以上は会話が続かなくなった。


 彼らは立派なことをしているのに、悲しそうな顔をしたりするのはどうしてなんだろう?

 私が事情をよく知らないとしても、やっぱり何か噛み合わない部分があると思う。


 二日続いての怪物騒動で、町の人たちはその時こそ大騒ぎになっていた。

 しかし、戦闘警報が流れた割に被害が出たわけでもない。

 いったい何が起こったのだろう? みんなが口にする。


 でも、それから数日した頃、急にメディアがハガネと巨人のことを放送しだした。


 悪い人たち、ギガントが“巨人”を使って暴れはじめたこと。

 ハガネは、軍や警察と協力して巨人と戦っていること。

 あの日、シェルターの外ではハガネと馬の顔をした“巨人”が戦っていたこと。


 ところが、どこの番組でも、中心にいるはずの央介くんと佐介くんのことについては話していなかった。

 やっぱり、そこは秘密の事なのかな?


 私だけが知っている事を置き去りにしつつも、町は公的に普通の事としてヒーローのハガネを応援するような感じになっていく。

 そうして、平穏なままの一週間が経った。



 一時間目後の休み時間。


「おーい、今日も休みかー? そろそろズル休みなんじゃないのかー?」


 長尻尾の狭山さんが、机に付いたカメラレンズを覗き込んで、からかっていた。


 カメラが映像を送っている先は市民病院の病室。

 フルフェイスガスマスクの夏木くんの所へつながっている。


 夏木くんは、あの馬の巨人が現れた翌日から、喘息の重い発作で入院してしまった。

 やっぱり走って帰ったのが、彼の呼吸に悪かったのかも。

 引き止めればよかったかもしれない。


「朝はボイスチャットも無理みたいだぜ」


 狭山さんと仲のいいウサギネコ獣人の男の子、奈良くんがカメラを長い爪でつつく。


「ただの寝坊なんじゃねーのか?」


 狭山さんは疑いの目をカメラに向けた。

 それに、奈良くんが答える。


「昨日のお昼休みに、カメラの向こうにいたんだよ。なんかね、夜中とかから発作が始まって、朝はグッタリだってさ」


 奈良くんは、しょうがないねという感じでお手上げポーズ。

 ふわふわとした歩くぬいぐるみの彼がやると、なんとも可愛らしい。


「うーん……」


 狭山さんが腕を組んで、何か考えている。

 あんまり、物を考えて行動するイメージがない子だけども――。


「病気にならないアタシにはさっぱりわからん!」


 ――イメージ通りの発言だった。

 獣人の子たちは病気やケガとは縁がない。

 ……うらやましい。


「まあオイラ達はそういう体だけど……ルッコはどっちかというとナントカは風邪ひかない系じゃないかな?」


 ルッコは狭山さんのあだ名。

 瑠香子だからルッコ。

 と、ゴツンと音がする。


「殴るぞテメー……」


「殴ってから言うなよぉ!」


 叩かれた頭を押さえながら、奈良くんが抗議の悲鳴。

 狭山さんは、少し直接的な行動が激しい。

 悪い子じゃないんだけども――。


「ちょっと、暴力はやめなさいよ!」


 横から、とげのある声が飛んできた。

 ああ……、真梨ちゃんの目に留まっちゃった。


「あのさ、こういうのは暴力じゃなくて触れ合いっていうんだけどな?」


「叩くのを暴力って言わなくて、何を暴力って言うのよ!? あなたはいつもそう!」


 刑事さんの娘だからか大真面目な真梨ちゃんと狭山さんは犬猿の仲。

 いつもの事といえばそうなんだけども……。


「叩いたアタシが暴力じゃないって言ってるー!」


 あー……、売り言葉に買い言葉。


「いや、オイラが一言多かっただけだよ……」


 話の中心だったはずの奈良くんが何とか仲裁に入ろうとするけど、

 これは、もう――。


「あなたの力は危ないから! そういう風にしてはいけないって言われてるでしょう!」


「アタシの力がなんだって? 言ってみなよ、警察の娘が体質差別かぁ?」


 どうにも、できない。

 仮に、私が車椅子じゃなくても、どうにもできない。

 クラスのみんなも、これはダメだと遠巻きになってる。


 先生、早く、来て。


 私が祈るような気持ちになった時に前に誰かが進み出た。

 小柄な子。


 ――右目隠れの佐介くん。


「あのさ、二人の関係知らないから聞くけど、このまま引っ叩き合いとかになるの?」


 あれ? 佐介くんがここで出てきて、央介くんは?

 ……教室に、居ない?


「なんだよ転校生、横から出てくんなよ」


 狭山さんは、もう全方位へ攻撃態勢になっているみたい。

 それぐらいはクラスにきて日の浅い、ロボット的な何かの佐介くんでも十分わかると思うけど……。


「女の子のケンカを面白がる趣味がないからさ、邪魔しにきた」


 ――佐介くん。

 それは、火に油じゃないの……?


「そーかそーか……、転校生。兄弟そろって気取った所が気分悪いって思ってたところだ」


「だから暴力はよしなさいって!」


 握り拳を構えた狭山さんに向かって、真梨ちゃんが佐介くんの陰から繰り返す。

 佐介くんが強いことはわかってるけど、目立ってケンカなんて……。


 そう思って、何も言えない間に、握りこぶしを用意して構えていた狭山さんの腕に、佐介くんの腕が絡まっていた。


「うぎっ!?」


 狭山さんが、慌てた?

 いかにも殴り掛かりそうだった狭山さんは、身動き一つしない――できない?

 佐介くんは、それほど力を入れているようには見えないけれど……。


「……力はあるけど型は習ってないんじゃない? 狭山の隊長さんなら、すぐに返し技できると思うけど?」


「ちょ、てめ、なんでかーちゃんが出てくるんだよ!? 手を、放しやがれ!!」


 狭山さんは必死になって振り解こうとしているが、身長差で小さい佐介くんが全く動かない。

 この間、鉄砲を弾いたのと同じ? それとも何か柔道の技のようなもの?


「放したら殴られそうじゃん?」


「放さなくても、もう片手が空いて……」


 その時、教室に一際高い影が入ってきた。


「狭山さん!」


 先生が来た!

 ――その隣に、小柄なアンテナ前髪、央介くん。


 ああ、なるほど。

 こっちを佐介くんに任せて、先生を呼びに行ってたんだ。

 央介くんと佐介くんは、何か通じ合ってるみたいな話していたもんね。


 ……でも、央介くん。

 狭山さんと直接組み合ってる佐介くんを見て、少し眉間にシワ寄せてる。


「狭山さん。ちゃんと状況映像付きで、ご家族に相談しますからね!?」


「あ、あの、違うよ、先生。これは、その……」


 しどろもどろの狭山さんは珍しい。

 そもそもほとんどのみんなは狭山さんとのケンカは避けるから、今回みたいにはならない。


「多々良くん……佐介くんも!」


「ええー。先生がくるまでケンカの仲裁してただけなのに」


 先生のお叱りは佐介くんにも。

 央介くん、ちゃんと状況伝えたのかな?


「……え? ……ええと、ちゃんと映像で確認します。いいですね!」


「はあい」


 佐介くんのゆるい感じの答えを受けてから、先生は佐介くんと狭山さんを連れていく。

 とりあえず今は収まったみたい。


 毒気を抜かれた真梨ちゃんが、その場に残されて。


 ――違うかな。

 あれは、佐介くんがカッコいいと思ってる感じ。


 真梨ちゃん。

 気が強いわりに、お姫様を助けに来てくれる王子様とかのお話、大好きだったもんね。


 幼稚園の頃、おままごとではいつも綺麗に飾ったお人形さんを連れていて、お姫様役のお人形さんを助ける正義の王子様が真梨ちゃん。

 でも、ずっと見ているうちにお姫様になりたがっていたのは彼女自身だってわかるようになった。

 そういう風にしてあげる前に、おままごとなんてしなくなっちゃったけど。


 ――小学校に上がっても私とは仲良しで、サッカーでもドッヂボールでもいい勝負。

 私が足を無くした時にも、何度もお見舞いに来てくれて。


 でも、車椅子になった私と、活動的なままの真梨ちゃん。

 休み時間とかの過ごし方は違うようになって、最近は一緒に遊ばなくなったような気がする。


 ケンカのもやもやした空気を追い出すようにチャイムが鳴った。

 先生がいないまま、授業時間が始まる。



 ――その日のお昼過ぎ、巨人が来た。

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