バイトな日々 〜One of 生徒会な日々〜
主役はカイとレイの……はず。
俺って結構まともだと思う。
最近すごくそう感じるんだよ。
周りにはサディスト、すぐ怒る、電波、クール……などなどの濃いメンバーが勢ぞろい。
でもまともが一人の場合ってその一人がまともじゃなくなっちゃうんだよね……
この理不尽な世の中に鉄槌を!!
「バカなこと言ってないで仕事して」
「すいませんでした」
俺は蛟刃カイという。
え?変な名前だって?よしてくれよ、本編見れば理由が分かるからさ。
まあそんなことはともかく、俺は今バイト中だ。
ちなみにどこで働いているかと言うと、「デザート・イン・オアシス」という喫茶店だ。
もちろん店長であるマスター(名前不明)もいる。
「……」
で、俺の隣の無口な女は風見レイと言う。
さっき俺に注意した女だ。
この女とは同じ学校で同じクラス。
まあいわゆる友人というやつだ。
元々俺がこの喫茶店で働いているのもこいつに誘われたからだし。
「カイ!これを6番テーブルに持っていけ!」
「は、はい!」
俺に命令したのがこの店のマスター(名前不明)である。
特徴は無精ひげ。
正直只の浮浪者みたいだ。
まあそんなことを言いながら俺は6番テーブルに料理を持っていく。
仕事だからだ。
「はい、シーザーサラダとオニオングラタンスープです」
俺は淡々と述べてテーブルにメニューを置く。
「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
「はい」
そう客とやり取りして、俺はまたカウンターのほうへ戻っていく。
「カイ。レジお願い」
「はいよ」
しかしすぐにレイに頼まれて俺はレジに向かう。
かなり忙しいバイトだ。
俺は今日もバイトをやりきったのだった……
「マスター!!」
俺は閉店後、テーブルをダンと叩いてマスターに詰め寄った。
「あん?」
チンピラみたいな声を出すマスター。
「正直に言いましょう!この店は従業員不足です!」
「……それが?」
「それが?じゃないでしょうが!」
俺はマスターにさらに詰め寄る。
「男同士の絡み合いはその程度にしておいたら?」
「君は黙っててよ!」
レイの発言に突っ込む俺。
「不足っていってもな〜……バイトで雇っているのはお前達と後二人だけだし」
ちなみに後二人はもちろん俺も会ったことがある。
「そう感じても仕方ないかもしれないが……我慢しろ」
「出来るか!」
「やれば出来る!」
「やっても不可能なことくらいあるわぁぁ!!」
俺は声を荒げる。
しかし語尾で声が上ずった。
「しょうがねえな……でもよ、ここにバイト志願する奴あんまりいねーぞ?」
「そりゃあ給料安いからでしょ」
レイが至極的を得た答えを言う。
「だから給料上げれば……」
「君には何だか不純な動機が見えるね!」
レイの発言に一応ツッコんでみたが、間違ってはいない解答である。
「じゃあカイ、あなたは考えあるの?」
レイが逆に訊き返してきた。
「いや……その……」
すいません。ツッコミしているばかりで何も考えていません。
「分かった分かった!お前達も後二人も週3日のバイトだ。分かるな?」
「ああ」
「ならば二人ずつだけ増やそう。それでいいな?」
「え!?増やしてくれるんですか!?」
俺はマスターの発言に目を輝かせた。
「あのな、勧誘はお前達でやれ。面倒くさい」
「ひどっ!」
「文句言ってるのはお前らなんだから」
「私は言ってない」
ちゃっかり自分だけ逃げるレイ。
「……分かりました!勧誘します!」
こうして俺と一応レイの勧誘活動が始まったのだった。
「で、案あるか?」
俺はレイに相談する。
「チラシ配り、公式サイト設立、張り紙、街頭演説、CDデビュー、プロレスデビュー……」
「何か変なものも混じっているけどいっぱいあるね」
「国会で議題にしてもらう、衛星放送をジャックする、どげんとせんといかんを使う……」
「もういいから!分かった分かった!」
最早全然現実味無くなっているし。
「まずはビラ配りしようと思うんだ」
「どうぞ。一人で」
「一人かよ!お前はやらねえの!?」
俺は相変わらず冷たいレイに熱意を伝えた。
「買収されたらやる」
「ひっでぇ!しかも自分で買収なんて普通は言わないし!」
俺はレイとの温度差を感じた。
俺が35度あとしたらレイはセルシウスの絶対零度だろう。
「ああ!もう一人でやる!」
俺はさっさと家に帰ることにした。
……レイが追いかけてくれることを期待したのだが、来なかった。
こうなったら俺一人でギャフンと言わせてやる!
俺は半ば意地になることにした。
そして俺はビラを製作し……
「ダ、ダメだ……全然センスがねえ!!」
俺は頭を抱えた。
親友や先輩、後輩、幼馴染の全てに相談しても忙しいらしく手伝ってもらえなかった。
「まずいぞ……大見得切ったのに……」
俺は悪魔に笑われているシーンを想像した。
レイが俺を見て冷たくフッと笑って……
「だ〜〜〜〜!!!まだ諦めちゃダメだ!センスがなくても……俺には行動力がある!!」
俺は夜中に大声を出した。
「うるさい!」
「す、すいませ〜ん!」
案の定隣に住んでいる人に怒られた。
勢いを少しそがれたが、やる気だけはマックスだった。
「やるぞ!まずはデザインからだ!」
俺はペンを紙に向けた。
そしてアルバイト募集と書いた。
「……インパクトが無いな……」
俺は首を捻った。
何かこの店で働きたい、と思わせるように出来ないかな?
「美人従業員と一緒にバイト!……これじゃあいかがわしい店みたいだ」
それにレイに何て言われるか……
そしてまた首を捻る。
「楽しくバイトをしよう!」
これならいいぞ!
俺は楽しくバイトをしよう!と書いた。
「次は……」
何かインパクト無いかな〜……
「料理がうまくなります!……俺全然上手くなってねえよ」
俺は自分とレイの料理の腕を思い出した。
俺は一人暮らしだから大丈夫だとしても、レイは一人暮らしの癖にすごく下手である。
「う〜ん……初心者大歓迎!」
これでいくか。
俺は初心者大歓迎!と書いた。
「でもな〜……」
何かありきたりなものばっかりだよな……
何かあの店の個性を考えて書きたいものだ。
俺は悩んだ。
時刻は深夜0時を過ぎた。
良い子はすでに寝る時間。
ニートは起きる時間。
俺はあまり回転しなくなった頭を強引に自転させる。
「特徴特徴……」
マスターの髭が無精ひげ……剃ればなくなる。
明るい雰囲気……ありきたり。
客との距離が近い……そうか?
料理の腕が上手くなる……さっき考えた。相当眠いらしい。
「あ、やべえ……眠くなってきた……ちゃんとアルバイト募集って書かないと……」
俺はうつらうつらしながら書いてそのまま机に顔を伏せるのだった。
「ん?」
俺が目を開けると、外はもう明るかった。
「うお〜〜〜!!もう朝かよ!」
どうやら机に伏して一夜を過ごしたらしい。
「コピーとっていかねえと!」
俺は急いで支度をして昨日書いた下書きをコピーしに、コンビニに向かった。
ちなみに今日は日曜日なので学校は無し。
バイトはあり。
なので午前中しか暇が無い。
「早くコピーして勧誘しないと!」
俺はコピーした後、急いで街頭に行った。
「バイト募集中で〜す」
俺は駅前でビラを配る。
しかし休日ということで、朝っぱらから人はあんまりいない。
俺は空振りし続けた。
しかも時々貰う人もクスクス笑うだけ。
何がそんなにおかしいのか訳がわからない。
「はぁ……」
バイトまで残り1時間。
このままでは埒が明かない。
俺は不意に場所を変えようとした。
ドン
「キャッ!」
「うわっ!」
俺と誰かが衝突してしまった。
「気ぃつけぇや?」
「あ、はい。すいません」
相手は派手な格好をした女性だった。関西弁の。
「まあええわ。ん?何配っとるんや?」
その女性がビラに興味を示してくれた。
怪我の功名ってやつか!
「あ、これはバイト募集です。この先の商店街にある「デザート・イン・オアシス」っていう喫茶店なんですけど……」
俺は女性にそう説明した。
「アハハハ!腹痛うわ!」
「へ?」
するとビラを見た女性が大笑いし始めた。
「こりゃあええわ!中々楽しそうなバイトや!」
まだ女性の大笑いは続く。
「ここに引越ししてきていきなりそなオモロイもの見れるたぁね!」
「あ、あの何が面白いんでしょうか?」
俺は不思議になって訊いてみた。
「分からへんの?なら一番上見てみ」
女性が指差した先には……
「アルバート募集……一個人募集してどうすんや!アハハハハ!」
「し、しまった……」
どうやら昨日眠すぎて最後の最後に失敗したらしい。
俺の顔が恥ずかしさで真っ赤に染まる。
「まあまあ!落ち込まんでええよ!」
その女性が背中をバンバンと叩く。
多分年上だろう。
ていうかこのテンションがすごく大阪人らしい。
「ウチが入ったるわ!このバイトに!」
「え!?」
俺はその女性を凝視した。
「何や、じっと見て、照れるわ!」
「す、すいません!」
「で、どこや?案内してや」
「は、はい!」
俺はこの人のペースに振り回されながらも何とかオアシスまで案内できた。
それにしても……やった!
レイの奴をこれでギャフンと言わせるぜ!
俺は意気揚々と店内に入った。
「どうだレイ!一人つかまえ……」
俺はレイに自慢しようとしたのだが、店内の光景を見て声を失った。
「あれ?カイどうしたの。私はインターネットで“3人”連れてきたのだけれど」
「う……」
レイはあえて3人を強調して俺に言ってきた。
まさかレイはインターネットのスレッドとか使ったのか……
至極効率のいい方法だ。
「まあいいわ。あなたが最後の“1人”を連れて来てくれたから手間が省けたわ」
「うう……」
俺の心にいろいろ突き刺さる。
「じゃあ4人揃ったからいろいろ説明するぞ」
マスターが4人を集めた。
「何やか知らんけど、ほな、元気出せや」
「ほっといてくれ……」
俺は結局レイに勝つことが出来なかった。
……元々勝負なんてしてませんけどね。
クッ……次こそレイをギャフンと言わせて……!
一応短編投稿です。