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朝の激闘シリーズ

朝の激闘

作者: 光が丘 新

 今日は水曜日。忙しかった仕事が一区切りつき、久しぶりの休日だ。


 朝から天丼が食べたくなった私は、朝から営業している料理店を探していた。時刻は午前9時。さすがに朝から天丼を提供してくれる料理店はなかなか見つからなかった。30分くらい探して、諦めかけたそのとき、駅前のロータリーに面した立ち食いそば屋の店頭に、「天丼」というのぼりが立っているのを発見した。


 おっと、これは幸運だ。立ち食いそば屋で天丼を見かけることはあまりない。どんなものか是非とも味わってみたい。


 店の入口のドアは開けっ放しで、入口のすぐ横には食券の販売機が置いてある。さて、天丼は…、これだ。券売機のボタンに貼られた天丼の写真を見ると、これは実に美味しそうである。値段は500円。値段も手頃だ。


 すぐに1000円紙幣を券売機に挿入し、天丼のボタンを押した。しかし、食券が出てこない。何度もボタンを押したが、全く反応しない。「すみません、天丼のボタンを押してるんですけど食券が出てこないのですが…」 厨房にいる店員さんに声をかけた。


 「ああ、すみません、天丼はランチタイムだけなんです。ランチタイムは11:30からなんですよ」 なんてことだ。だったらあんなのぼりを店頭に出すんじゃないよ!腹が立ったが、すぐに券売機の返却ボタンを押し、店員さんに会釈してその店を後にした。


 さて、どうしたのもか。さっきの立ち食いそば屋のおかげで、もう私の胃袋は天丼を受け入れる準備がすっかり出来上がってしまっている。こんなことならあののぼりを見つけなければよかった。こうなったら今日の朝食は絶対に天丼にするしかない。


 僕はまた天丼を探し、街を()()()()()


 時刻は午前10時30分。もう随分探したが一向に天丼をいただけそうな店は見つからない。駅前通りをぬけると、片側3車線の広い国道に出た。すると、道の反対側に天丼の看板が! そこには「天丼専門店」という文字が書かれていた。私は急いで横断歩道を探し、歩行者信号が青に変わった瞬間に天丼専門店へめがけて走り出した。


 さて、問題は営業時間である。これで営業時間外であれば、天丼専門店の看板を見つけた喜びは、文字通り「ぬか喜び」に終わってしまう。恐る恐るお店の入口に目をやる。入口のガラスドアに書かれている営業時間は…、「AM10:30~PM11:00」 うおおお! やった! 私は天丼との戦いに打ち勝ったのだ! 私は拳を握りしめ、天に向かって突き上げた。


 では、念願の天丼をゆっくりと味わうことにしよう。入口の自動ドアには「ここに触れてください」の文字。はやる気持ちを抑え、私はその文字が書かれたセンサー部分を右手でさっと触った。だが、ドアは開く気配がない。うむ、たまにドアセンサーの()()が悪いことがあるのは承知している。今度はしっかり、ゆっくり、念入りにセンサー部に触れてみた。「…?」 やはりそのドアには開く気配がなかった。


 あれ? なんで? どうして開かないの? ちょっとパニック気味になる私だったが、ここは少し冷静になってみよう。これはおそらくドアの故障だ、そう考えた私は店内の従業員にそれを伝えようとドアを何度か叩いてみた。しかし、店内からは何の反応もない。ん~、これは困った。そのとき、ふと顔を上げると、店の看板が目に入った。すると、看板の左下、そこに驚愕の文字が描かれていた。


 「天丼専門店 営業時間AM10:30~PM11:00 定休日 毎週()()()


 私は天丼を諦めた。私は天丼に負けたのだ。仕方ない、今日の朝食はかつ丼にしよう。私はかつ丼を求めて街を()()()()ことにした。時刻はもうすぐ午前11時30分になろうとしていた。

 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 天丼を求めて駆け回るところがリアルだと感じました。 どうしても食べたくなるもの、というのは、時折ありますよね。
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