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フィラデルフィアの夜に、稲妻が落ちます。


 何も見えない夜の事です。

酷く静まり、いつもある喧噪さえ聞こえてきません。

じっとりと湿った空気が重りとして圧し掛かってきます。



 光。

突如として。



 光。轟音。

稲光が落ちた。

 雷。

突如として大雨が降り注ぎ、稲妻もまた爆弾の如く着弾する。

 雷

何かが、煌めいた。

 雷。

何かが、うねり、歪み、この地の土の中から出てくる。光を帯びて。

 雷。

輝く細長い何かが稲妻の弾着のたびに、見える。

 雷。

蛇の、蛞蝓の、蚯蚓の、蛭の、その如くのたうち、這いずり。

 雷。

蛇の、蛞蝓の、蚯蚓の、蛭の、その如くのたうち、這いずり回り蠢き犇き。

 雷。

這いずり周り蠢き犇き、何かを形作ろうとしている。


 稲光が雷光が、白銀に反射させる。

這いずり回り蠢き、細い細い銀色の針金が何かの意思に従い、動く。

それは、十本の棒を作り。

十本の棒の土台を作り上げ。

 合掌した。


 大きな雷鳴。雷光。稲光。轟音。

合掌する、祈りを捧げる手の形が、ぬかるんだ土の上に作り上げられています。

その向こうには人の顔に見える汚れが、壁に描かれていました。

煤と汚れとカビによって、まるで誰かが描写したかのような、悲しそうな、微笑んでいるかのような、御顔が。

大雨が涙として、全てを流し去ろうとするかのようです。

 大きな雷、稲妻が漆黒の中、照らし続けました。




 光。

朝日が、一筋入り込みます。

澄んだ空気の中、祈る何者かの顔と手がそこにはありました。

 誰もまだ見つけていない、祈りが。

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