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フィラデルフィアの夜に、針金が飛び出しました。

それはまっすぐピストルへと向かっていきます。

それは男たちが構えた殺意。今、拘束されたもの。

 顔を隠した名の無い英雄によるもの。

飛び出したのは、その英雄の指先。


 フィラデルフィアの夜、それは無法の夜。

罪を重ねる男たちが、さらなる罪を重ねていく。

金のために殺意を向け、殺意のために銃を向ける。

そんな夜に、目も口も開けない黒い覆面の人物が、音もなく、どこと言う事も無く、現れ出す。

指先より針金を出し、縛り付ける。

ピストルを、足を、手を、体を、車まで。

明るくなるやいなくなり、ただ針金だけを残す。


 誰なのか分からないまま。


 ある夜です。

針金が飛び、一人の男を縛った時。

 銃弾が、覆面を破ります。

それは目にも止まらない早さで、次々と。

 備え付けられた機関銃。

薬莢が無限のように飛び散っていき、その分、英雄に穴を開けていきます。

どれほど経ったでしょう。

 血は出なかったままで。


 英雄が倒れた、その場所。

また人影が見えます。

明かりに照らされるそれは、接着剤で寄せ集めたような針金の塊でした。

 ざあああああああああ、と音と共に崩れていき、針金が、蟲の様に地面を這っていきます。

それはもう地面を埋め尽くす量が、四方八方へと。




 日が上がり、昼になり、もう一度そこを見ます。

針金は動かず、大分その数もありません。

 ただ、不可思議な形にそこら中に絡みつき、どうやってもほどけない状態でした。




 フィラデルフィアの夜。

無法を重ねる男たちは、暗い物陰を覗こうとはしません。

 ふと気付いたら、針金が何かに絡みついているのですから。

それは一瞬でも視界に入ると、目に付き心に捕らわれるそれが。それらが。

いつの間にか、存在するのですから。


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