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フィラデルフィアの夜に、流星が輝きます。


 真っ暗な夜に、闇を切り裂くような一つの光が映え、それは明るい街からでも見えました。

それは大きく、多くの人が見上げ、口々に願い事を唱えたのです。

流星は願い事をひとしきり浴びると、最後強く輝いて消えていきました。

人々は消えてしまった事を惜しみましたが、たくさんの願いを祈る事が出来たのです。


 流星の光。

それは多くの鈍い光沢を反射させた。

 フィラデルフィア、その夜に手が動きだす。

それは墓場。

墓場に、かすかに光沢を放つ何かが蠢きだす。

毛虫の様に、蚯蚓の如く、大蛇にも見える。

それらが地面を這い、何かを暗闇の中で絡み、捻じり、捩り、曲がり、何かを作り出していく。

それは、流星の光によって照らし出された。

 墓場の地面に直接生えた、両の腕。

光を両手で受け止める。

 それは祈るようでもありました。


 針金が動き出します。

両の腕を作る針金たちとは別に、不法に廃棄されたゴミから、最後の力を振り絞る様に。

名もない墓に生えた両の腕はそれらをやさしくつまみ上げ、形を変えてさせていった。

電気ケーブルの銅線の花。

小さな針金をいくつもつなげて作り上げた樹木。

友達だと言いたげな幾つもの小さな工具を引きずってきた針金の、聖人の像。

飛び跳ねてきた多くのバネを使った、塔。

誰かの名前をいくつも描き上げた、針金が集まってできた本。

いくつもいくつも、這い出してきた針金の願いを叶えるかのように、両の腕はやさしく、かつ素早く針金たちをもって作り上げていったのです。

絡め、捻じり、捩り、曲げて。


 日が、昇りました。

誰も来ない、身元が分からない人ばかりが埋葬された墓に、姿を変えた無数の針金たちが並んでいました。

それはどれも堂々と、胸を張って誇っているかの様。

そしてその中に。

地面から生えつつ両の手を合わし、祈りを捧げている針金の像がありました。


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