表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/87

51

「3日で書け! 第33回文学フリマ東京開催記念企画」(脊椎企画/渡辺八畳)にて「痛くない」というお題にそって書いた作品です。

フィラデルフィアの夜に、針金と踊ります。


 病院。

電子音が心拍を微かに知らせる、重篤の患者。

全身はコードにチューブが巻き付くかのように覆っている。意識をずっと失ったまま。

 でも一時、意識を明瞭に取り戻したのです。


 意識は澄み渡り、今の自分の状況ははっきり知ります。

声は出せず、体は動かず、誰もいません。感じるのは痛み。心以外を動かせば、たちまち襲われる。

 取り戻した意識はもうすぐ途切れ、体も心も動くことはありません。

ぼやけていきます。心が。視界が。痛みと共に。

体にまとわりついているコードとチューブが、一人でに蠢いている感覚だけが強く感じ始める。


 いや、動いている。

コードとチューブの中の針金がそれらから皮を脱ぐ様に出てきている。

それらは体に絡み纏わり支え始める。不思議に苦痛が癒え、体が動く。

ああ、動く。

ああ、動く。

体が動く。

誰もいない、誰も知る事のない、真っ暗闇の狭い病室のベッドの上。

最高、最後のステージに。

膨大な針金を振り回し、海の様な針金に支えられ。

舞い踊る。


 朝。

真っ白な病室。その人は昨日と全く同じベッドの上で眠っています。

ただ、一体誰が書いたのか、一文が大きくあったのです。


痛くない 私は踊る 光の中


壁に針金を張り付けて。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ