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フィラデルフィアの夜に、描かれ続けています。


 夜の繁華街。

そこではいくつものネオンが輝き点滅を繰り替えしています。

中でも特に大きなネオンは繰り返す点滅もあり多くの人の目に飛び込んでいます。

その光は誰も見ない方向へも投げかけながら。


 光は行く。

ひとつの隙間へ。狭い路地。

一瞬だけ照らしながら、次には消え去りながら。

 そんな路地にも窓がある。

不思議に大きい窓。その窓からは手が届く距離の壁しか見えない、使われない窓。

そこにも光はひととき差し込んでくる。

何度も何度もひとときだけ慈悲の如く差し込み、同じ時間だけ漆黒を与える。

 光があるその時、針金が走ります。


 針金が走り出すのです。

その大きな窓の表面を。

光。

今、絵筆の様に高速の針金が稲妻の速度で窓に人の顔を描き上げた。

漆黒。

光。

さっきあった絵は消えている。

今、またしても針金が走り出す。今度は粘土の様に盛り上がる。

心臓だ。

血管まで緻密に瞬時に再現され、拍動をした。

漆黒。

光。

あの見事な心臓は姿を消している。

まっさらな窓だけが今ある。

そこに、硬そうな針金が窓枠の八方から走り出す。

描き出す。作り出す。

半ば盛り上がる花。

絵画のようで彫刻の様でもある。

瑞々しい花。無機質な針金が作り上げた。

誰も見ないのに。消えるのに。

漆黒。

光。

また、誰も見ない窓には何もない。

 でもまた針金が走り出す。


 繁華街。

多くの人が繰り出す明るい世界に、誰も見ない空間があります。

光と漆黒が繰り返す狭い路地に、針金が気づかれることもなく、誰かに向ける訳でもなく、

針金がひたすら描き、作り続けています。

大きいだけの使われる事のない、まっさらな窓の上で。


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