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 フィラデルフィアの夜に犬が鳴き叫びます。

何かに気付いてほしいかのように。


 ある夜の事。

犬が突如ハッと目覚め、叫び始めました。

ただその犬は壁の方向を向いて鳴くばかり。

すると近くの家の犬も鳴き始める。

それは次々に鳴き声は拡散していく。

同心円状に広がる叫び声は、一点に向かっている。


野良犬が一匹、走っていくのが見えます。

その犬に続々と続いていくのも。

それは犬たちが鳴き吠える方向。

その方向へは繋がれていない犬たちが吠え叫び続け走っていく。

向かうのは街の中心。うなり上げ、駆けていく。

人々もまたその方向へ。

時に犬を連れ、時に各種の道具を携えて。

何があるか、何が起こっているかわからないがために。


犬たちと人々が向かう先。

八方から集まる警戒心と好奇心は、空き地となった空間に集まる。

人々は明りを照らし武器を持ち警戒し、犬たちは吠えながら鼻を地面つける。

一匹の犬が急に怯え、驚く。

人々のライトが一斉に照らすと、何かが蠢めいている。

何かのゴミ?

風のないこの日、動くはずもない。

犬が各所で怯え、驚く声を出す。

そこにはどれも、蠢く何かが絡み運ぶ、小さなゴミがありました。


ワン。

ある犬が通る声を出します。その一声をきっかけに。

犬たちはタガが外れたかのように吠え続ける。

今までと比べる事が出来ない、犬の鳴き声の濁流は明らかに何かを訴える。

犬たちが鳴きわめく一点、そこへゴミが集まっていく。

そして形作られていく。

様々なゴミに、そのゴミに絡み運ぶ針金がその場所に。

地面から少し浮かびながら、でき上がっていく。

小さな子供の姿を。


大きさは赤ん坊くらい。

遠目には本物と見えなくもない、赤ん坊が作られ、でき上がっていく。

吠え続ける犬たちと、茫然と武器を構える事ができない人々の前で。

そうして、でき上がってしまいました。

生まれてしまった。

ゴミと針金でできた赤ん坊が。


すると。

その赤ん坊は、地面へ溶けていくように、消えました。



いつの間にか、太陽が昇っています。

犬たちは黙り、一点を見ています。

スコップを持った人が、意を決してその場所を掘り出します。

少し掘ると、掘り当てました。

死んでいる人がいたのです。

それは本物の人間の死体で、妊婦でありました。

何があったのか、誰なのかわかりません。

その死体のすぐ側、あの赤ん坊がいたのです。

その死体に護られるように、護るように。

すぐに棺が用意され、二人を共に入れました。

犬たちはそれを見届けると、元の住処へ戻っていったのです。


あの妊婦の死体とゴミと針金の赤ん坊は一体誰で、何だったのか未だ判然としません。

ただあの二人を葬った墓地に、犬たちが集うことは事実でした。


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