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フィラデルフィアの夜に、小さな呟きが続いていきます。

下水道のパイプの中、黒い手に握られた物に向かい、延々と呟いています。

彼は顔に塗料を塗り付け、色とりどりの破片を衣服に縫い付けからみつけた、異様な出で立ちをしていました。

 呪術師。

祖先の地から遠く離れたここで、祖先の様に、祖父のように、父のように、呪いを。

 口にしていた言葉を止め、手にしていた物を、置きます。

それはプラスチック片に針金を何重にも巻き付かせた、人間がもだえるような物体でした。

何か満足そうに、薄明かりの中、笑みを浮かべ、また何かを手にします。

 ドライバー、道端に落ちていたもの。

 再び呟きを始めました。


 聞き取れない、途切れる事の無い言葉が、呪いがドライバーに向かいます。

怒り。

誰かが見たのなら、彼からその口から感じさせるのはそれ一つだけでしょう。

 光の無い臭気だけが支配するここで、彼は呪いをかけているのです。

 針金を手にしました。

より言葉が大きくなります。

激しく手を動かし針金をドライバーに巻いていきました。

 取っ手の先端だけを残し、全て針金で巻いていきます。

またしても執拗なほどに巻いていき、そして針金を外へ棘のように突き出します。

そして十字架のような、頭を残し傷付けられたような罪人のような、全身縛られた彼自身のような、物体でした。


 また何か満足げに、それを置きました。

今度は拾った短い鉄パイプを手にまた同じような呪いをかけていったのです。



 フィラデルフィアの街に、それは置かれていました。

茂みに、物陰に、排水溝の中に、誰も気付かないであろう場所に。

 ゴミ捨て場に置かれていたそれを、彼が作った呪いを込めた物体を見つけた手がありました。

興味深く見ます。

どこかにないか、探し始めました。

 ひどく目ざとく次々に見つけ出していきました。

まるで呼ばれているかのように。

何かを察知するかのように。


 何百と似たような物が見つかりました

見つけてくれと言わんばかりの雰囲気を漂わせ、ゴミの塊でしか無いはずのそれは、人々を引きつけて止みません。





 彼は、呪いを口にあれらの物体を作り続けた彼は、どう思ったのでしょうか。

彼の呪いは、人々を驚嘆させ、あとは何も無いのでした。


 本当に何も起こらなかったのでした。


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