表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/87

22

フィラデルフィアの夜に、針金が夢に現れます。

瞼を閉じると、細い針金が浮かび上がってきます。

それは曲がりうねる。

一人でか。いや、それは自分が、自分の心の動きで動いている。

絡まり固まり、目の前は針金で埋まり出す。

黒い。針金の色。

 落ち着こう。

針金は水平に長く伸びました。


 針金を動かします。

丸めて伸ばして、また丸めて伸ばして。

それは長くも短くも、色さえも変えられる。

作ろう。

心の赴くまま。

目の前にあるのは針金だけ。

でも自由だ。

祈るような人を作ろう。トゲのついたような手を作ろう。羽ばたくような鳥を作ろう。

釘を生やしたような山を作ろう。輝くような十字架を作ろう。拳銃のような武器を作ろう。

走り抜けるような馬を作ろう。痛々しいような刃を作ろう。そびえ立つような樹を作ろう。

牢屋のような箱を作ろう。抱き合うような二人を作ろう。心臓のような固まりを作ろう。

そして、鍵のような物を作ろう。

 せめて、この夢の中でだけでも。


 瞼が開きました。

薄暗い部屋です。隙間からわずかに光が差し込み、その人の顔に当たります。

密室。

もう長く出られない、部屋の中。

瞼が開いてしまいました。

 目の前にあれほど自由に、たくさん浮かんでいた針金は消え、部屋にいるのは自分だけ。

あと存在するのは薄い闇。

時折食物が差し入れられるだけの毎日。

自分が何をやったのだろうか?

誰がこんな事をするのだろうか?

なぜ。

いくら考えても分からないままです。


 また瞼を閉じます。

夢を見ようとします。自由な針金の夢を求めて。


 外では。

日々、針金が増えていました。

それは人のような動物のような武器のような、そして苦痛を感じさせるようで、清々しさを与えるような形態を持つ、何かでした。

人々はそれを展示し始めます。その形に感銘さえ受けます。

価格さえ付けられて。

でも、一体どこから現れるのか、いくら見張ってもわからないのでした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ