22
フィラデルフィアの夜に、針金が夢に現れます。
瞼を閉じると、細い針金が浮かび上がってきます。
それは曲がりうねる。
一人でか。いや、それは自分が、自分の心の動きで動いている。
絡まり固まり、目の前は針金で埋まり出す。
黒い。針金の色。
落ち着こう。
針金は水平に長く伸びました。
針金を動かします。
丸めて伸ばして、また丸めて伸ばして。
それは長くも短くも、色さえも変えられる。
作ろう。
心の赴くまま。
目の前にあるのは針金だけ。
でも自由だ。
祈るような人を作ろう。トゲのついたような手を作ろう。羽ばたくような鳥を作ろう。
釘を生やしたような山を作ろう。輝くような十字架を作ろう。拳銃のような武器を作ろう。
走り抜けるような馬を作ろう。痛々しいような刃を作ろう。そびえ立つような樹を作ろう。
牢屋のような箱を作ろう。抱き合うような二人を作ろう。心臓のような固まりを作ろう。
そして、鍵のような物を作ろう。
せめて、この夢の中でだけでも。
瞼が開きました。
薄暗い部屋です。隙間からわずかに光が差し込み、その人の顔に当たります。
密室。
もう長く出られない、部屋の中。
瞼が開いてしまいました。
目の前にあれほど自由に、たくさん浮かんでいた針金は消え、部屋にいるのは自分だけ。
あと存在するのは薄い闇。
時折食物が差し入れられるだけの毎日。
自分が何をやったのだろうか?
誰がこんな事をするのだろうか?
なぜ。
いくら考えても分からないままです。
また瞼を閉じます。
夢を見ようとします。自由な針金の夢を求めて。
外では。
日々、針金が増えていました。
それは人のような動物のような武器のような、そして苦痛を感じさせるようで、清々しさを与えるような形態を持つ、何かでした。
人々はそれを展示し始めます。その形に感銘さえ受けます。
価格さえ付けられて。
でも、一体どこから現れるのか、いくら見張ってもわからないのでした。




