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 フィラデルフィアの夜に、針金が夢を描いていきました。

何の目的も無く、ただただ彩っていくままに。


 開かなくなったドアを無理矢理こじ開け、数人が部屋に入っていきました。

いなくなった男を捜すためでした。

しかし見つけてしまった物は、夢。

部屋を、きっと孤独な男の人生を、彩ったもの。

 極彩色の、人形たちの。


 暗く静かで、色の無い部屋。

そんな部屋に入り目にした物は、積み上げられた、紙がべこべこした本。

何かが挟まっています。

 一冊、開いてみると。

原色。

部屋が、開いた一冊だけで輝き出す。

 そして、本の上で踊りだす。

針金が。人の形をした、不格好な針金が。

樹脂を塗られ、鮮やかな人間が、そこに。

現実には無い世界で、踊る。


 周囲を見渡せば、壁一面大量に積み上げられてます。

そんな本が。

もう一冊。

友人と思しき人と、冒険に。

もう一冊。

恋人と思しき人と、踊る。空の上で。

もう一冊。

平和な世界。数え切れない程の人形の、針金の人間と。

踊り、歌を唄う。


 机の上に、さらに一冊。

それは落ち着いた色合いでした。

人形は酷くくすんだ赤色で、灰色の中に。

じっと、座っていました。

細い、隙間だらけの姿で。


 きっと、それが男の実際の姿だったのでしょう。

灰色の世界に、そんなくすんだ赤い針金人形が、ぽつんといるばかり。

いくら、ページをめくっても。

 最後に針金を貼り付けたと考えられるページです。

何も無い、世界。白。

そこに、いました。


 黒い姿で、手を振って。


 あとは、その後に続くページには何もありませんでした。



 きっともう見つからないと、部屋に入った者たちは思います。

ただ最後、すっくと元気に手を振った姿が、そんな針金人形が、心に残りました。




 その後、その本を開くと、酔いしれると、評判を呼びます。

孤独な男の極彩色の夢と、踊る針金人形に。


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