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フィラデルフィアの夜に、針金が転がります。

それは街の生け垣の下にありました。

それは針金を卵形に丸めたもの。

誰にも気付かれず、転がっています。


転がっています。


ただ、転がっています。


そのはずでした。



 ころん。

歩道に、卵形の針金が転がります。

人々の雑踏は何のためらいも無しに踏み潰そう、そうした時。

 足が止まります。

ひぃ、と声と共に。

どこかしこに、止まる足と声が。

 足下にあるのは、針金。卵形の。

でも、そこから伸びるのは、釘。

鋭く、天を向く、釘。

まるで卵から生まれ出るように。

 そんな卵が、いつの間にか歩道に転がり散らばっていたのです。


 それらは誰かのいたずらと、捨てられ雑踏が続くも。

ひぃ、と声。

またしても卵。伸びる大きな釘。

いくら拾っても、転がっている卵が。

鋭い釘と供に。


 ある男が、生け垣の下を覗く。

そこにはびっしりと、卵。

生け垣の中まで、空間なく積み上がる、卵。

無機質な、命も、優しさも感じさせない、針金の。

少しの隙間も無く巻き付けられ作られた卵が。

長い、鋭い、釘を生むかのように、伸ばして。


 そして男ははっきりと見たと言います。

一つの卵から、もう一つ、卵が産まれてきたと。

 悪意を持ったような釘を突き出して。





 ある日、誰かが野鳥の巣を落としたと言います。

その時、卵が儚く砕けたそうです。

あの生け垣の辺りで。





 生け垣の下には今、何もありません。

毎日点検され、きれいなままになっています。

ただ針金が、誰かが掃き集めるかのようにいつも集まっていきているのです。


 ある日の事、誰かの足が止まり、声がします。

ひぃ、と。

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