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 フィラデルフィアの夜に、針金が咲きます。

それは針金による花です。

種が弾丸の。


 それは街角。

店先の骨董屋で動く影がありました。手紙を書いている様子。

でもそれは生きている者の影ではなく、歯車による人形でした。

ぜんまいが巻かれ意志無く動く少女が微かな明かりの下、眠たげな表情を浮かべ、インクの付いていない羽ペンをゆっくりゆっくり動かしています。

 人気もなく、街角で、ただ動いていました。

毎日毎日ぜんまいは巻かれ動くも、今日はあまりにも多く巻いたのか未だ動き続けます。

 インクのないペンで、長い物語でも書くかように。


 静寂が、失われました。

火薬が細い筒の中で爆発する音が次々に鳴り響きます。

サイレンが鳴り響き、わめき、騒ぎ、泣き叫びます。

 少女が眠たげなまま。

うめく声、最後の光を失う人が道々に溢れ、血生臭さがこみ上がってきます。

排水溝に次々に汚物が流れ込んでいきまあいた。

 ゆっくりゆっくり、羽ペンが動きつつ。

夜を切り裂くように、音が轟きこだまします。

形容しようのない声が、怪物のごとく張り上げ、街が壊れていったのです。

 長い物語でも書くかのように。


 ひとつふたつみっつ。

音がしました。

音と声がようやく静まって少し経った頃に。

 ボスボスバス、と。

羽ペンの動きが止まりました。

 黒い機械油が、筆先に滴ります。

少女に穴が開き、そこから洩れています。


 みっつ、少女に穴が穿たれました。

目の前の、惨劇の人物のひとつになりました。



 花が。

日が昇り、朝、少女の体より、開かれた穴より。

みっつの花が。

 少女の体から、針金の花が。

どれほど多くの針金が使われていたのか、弾丸の衝撃で針金がぐちゃぐちゃに編み込まれ、ラッパのような大きな花が咲いています。

 しかも多様な素材と油の為に、色鮮やかに。


 しかし、彼女の動きにそれほどの量の針金が、素材が、果たして必要だったのか。

そして偶然だったのか。

彼女の筆ペンの先。

「END BYE」とあったのは。


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