第3章 魔界 40話 人道
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「人間、そこに座れ」
ゼンは魔王に引きずられたままある一室に来た。今までの殺風景の部屋ではなく、人形や色とりどりの花がいっぱい飾っているそんな女の子らしいそんな部屋に連れてこられた。
「あ、あの.....」
「いいから座れ」
ゼンは魔王の威圧により言葉を遮られた。そして、言葉の通りゼンは椅子に座った。
「今から治療をするが、我もあまり得意ではないのだ.....だから長くなってしまう」
「あ、ありがとうございます.....」
回復をしている間、とても気まずい雰囲気が流れた。それは種族間の隔てりなどが理由ではなく、単に魔王がゼンに対して以前ひどい扱いをしていたためである。
しかし、この地獄の沈黙は魔王によって破られた。
「お前は何故そこまでして我らを助けてくれた? 見捨てることも出来たであろうに.....」
暗い表情で語り始めた魔王には以前の行動の謝罪の意の現れも示されていた。
「それは単に苦しんでいる者がいたからですよ」
「それが魔族であってもか?」
そう、誰もが拭えない疑問である。敵対種族である者を助けるという行為は自身の種族の裏切り者として扱われる。それは人間だけはない。魔族でも同じことなのだ。だからこそ、ゼンという異質の存在に魔王は聞かざるを得なかった。
しかし、ゼンのいうことは決まっていた。
「種族って関係ありますか?」
「え」
魔王は拍子抜けの反応をしてしまった。そして、ゼンは言葉を続ける。
「容姿が違うから見捨てる? 馬鹿じゃないですか??」
「なっ.......!」
初めてのゼンの罵倒。これは魔王にだけに対して言っているのではなった。このおかしな世界に対してでもあった。
「苦しんでいる者がいたら手を差し伸べる、それが俺の人道です」
その眼には、ゼンの曲がることのない固い意志が見受けられた。
「ふ.......」
「ふ?」
「ふはははははは!!」
「ええええ.......」
魔王は思わず笑ってしまった。ゼンによって、今まで自分が行っていたことが愚かなことだと今更ながら気づかされた。
「ありがとう人間。いや、ゼンよ、この上ない感謝と謝罪を送りたい」
そう言い、魔王は頭を深く下げた。ゼンという魔族の英雄に、そして自身を気づかせてくれた恩人に対して。
このとき、ヒト族が魔族の英雄となった瞬間であった。
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