第3章 魔界 33話 調合①
少女たちを助けるために一度きりのスキルを使いました~助けた少女たちは未来の勇者でした~も読んでいただけると幸いです。
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「それは本当か!?」
「はい.....」
何が起きたのか、ゼンは分からなかった。手順は今までと違う部分は1つもない。しかし、今までと唯一違うことがある。
温度だ。
今までは水を温め、発芽するまでと定義していた。発芽する際の詳しい温度などは知らず、発芽したタイミングで種を水から引き上げるという作業を行っていた。
しかし、今回はガレオの規格外の魔法により水の沸点を一瞬で超し、湖にある水を水蒸気に変えてしまった。いわゆる水の温度は確実に100度を超しているということが暗に理解できる。
「ま、まぁー俺様にかかれば? こんなもの余裕だしな?」
語尾に疑問が拭えないところにガレオすら驚いているのがわかる。
「でも、幸運じゃないか? 手間も減るから早くポーションが出来るだろ?」
「そうですね、これでどっと時間が短縮できます」
「おっ、そうなのか? では、俺様も手伝おうではないか!」
「いえ、大丈夫です。ここからは俺の仕事です」
ダンとガレオはまだゼンの力を分かっていなかった。決して武力ではないもう1つの強さを.....。
◇
「まずは、こいつを飲もう」
ゴクゴクとポーションを飲んだ。このポーションは一か月不眠で過ごせるようになるポーションである。これは市販で売られているが、効果が切れたあとの代償があまりにも大きすぎて、ほとんどの人が買うことがない。
しかし、今回は不眠でなければおそらく全員の命は助けられないと判断したゼンは、このポーションを使用することを決意した。
「では、始めるか」
ゼンは最初に脚立を使用して自分の身長より高いフラスコの中にドッキントマトを入れた。そして長棒でドッキントマトを潰した。なぜ潰す必要があるのかというと、セツゴウリと合わせる際に合わせやすくするためである。
次にドッキントマトとの相性が抜群であるセツゴウリを入れ、同じように潰す作業を行う。セツゴウリは表面が棘に覆われているため、厄介なものではあるが、今回は最後は熱で溶かしてしまうため今回は剥かずにそのまま入れた。
そして、不可思議なことが起きて大量に栽培することが出来た仙王米のすりつぶしたものを入れる。これだけの作業であるならば簡単に思えるだろう。しかし、米の王様と言われる食材がそんな簡単なわけがない。すりつぶすときに無洗米という形状のものをしようしなければ、効力が発揮されないのだ。米というものは、多くの外郭を持っているのだ。籾を取り除けば玄米に、糠を取り除けば胚芽米に、残留糠を取り除いて白米に、そして胚芽を取り除いてやっと無洗米に辿り着くのだ。この手間を何千個も行う時間を考えると恐ろしいものであろう。
ゼンは今まで多くの効率的な方法を見つけてきた。しかしこの仙王米だけは見つけることが出来なかった。
今回の鬼門は仙王米の脱穀であり、時間との戦いが幕を開けた。
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