第1章 出会い 2話 『崋山烈火』の復活
1年の月日が経ったある日、ゼンと治療羊はポーションの材料を取りに行っていた。その間、王都で仲のいいポーション屋のおばちゃんに家を預けていた。
「メェーちゃん! 待ってよ~」
メェーちゃんとは治療羊である。なぜゼンと治療羊が探索に出ているのかというと少し時が遡る。
「メェーちゃん、ホシピッピの爪はいつもどこから持ってきてくれるの?」
この何気ない一言が治療羊を動かした。治療羊はゼンの服を口で引っ張って、ホシピッピの爪がある場所へと誘導したのだ。誘導された場所はいわゆる寝床であった。
「こ、これはヤバいんじゃない.....?」
そんなことをゼンは思っていたが、治療羊は何事もないかのようにホシピッピの寝床に入り、落ちている爪を咥えて、ゼンの元へと再び戻ってきた。
「こういうことだったのか.......」
何かうれしいような申し訳ないような色々な感情が混ざっていた。
◇
「—————————————んっ。こ、ここは?」
見知らぬ天井に『崋山烈火』のうちの1人剣姫レイはつぶやいた。
「ここで、治療を行ってもらっていたのよ私たち」
そう言うのは聖女マリーであった。彼女もついさっき起きたのだが、この状況をすぐに理解できた。
「でも、私たち死んだんじゃなかったの?」
「えぇ、みんな死んだ..........」
賢者エリも同様に起きていた。しかし、『崋山烈火』のメンバーは3人はほぼ同じタイミングで起きたから、なぜ生き返ったのかが理解できていなかった。しかし、1人だけ1日前、武神リンはゼンが家を預けたときにちょうど目を覚まし、ゼンとはすれ違いの形となっていた。
「じゃあ、どうやって.......」
「こっちに来て」
リンは他3人をある部屋へと誘導した。
「なによ、これ.......」
「どれだけ私たちを.......」
「すごい........」
レイ、マリー、エリは目を奪われた。そこにはびっしりとポーションが並んでおり、資料や本、また材料が溢れかえっていた。そして、聖水の中にある、薬草にみなの目が行った。
「これって、まさか!」
「そうだよ、これ『蘇生の薬草』なの」
「嘘ですよね......?」
「ほんと.......これ『蘇生の薬草』........」
レイたちは驚きを隠せなかった。『蘇生の薬草』がどれだけの価値を示しているのかが知らないはずがない。どの国も喉から手が出るほど欲しがる代物だ。それをなぜ誰かもわからぬ自分たちに使ったのか、それが不思議でたまらなかったレイたちは、すぐに治した本人に会わせてほしいとリンに言った。感謝の気持ちとこれを使ってしまった理由を聞き出すために。しかし、
「その人は今いないよ」
「え!? なんで!?」
「お礼もできないなんて......」
「悲しい........」
「じゃあ、わたしが説明しましょうかのぉ」
腰が曲がり切ったおばあちゃんが扉から出てきた」。
「ま、まさかあなたが!!!」
「違いますぞ、貴方たちを治したのはゼンという少年だのぉ」
「「「ゼン?」」」
「まぁ、知らないのも無理はないのぉ。ゼンくんはEランクの冒険者だからほとんど知らないかものぉ」
「「「「Eランク!!??」」」」
『崋山烈火』のメンバー全員が驚いた。リンもゼンについては名前だけは聞いたが、それ以上は他の人たちが起きてからということだった。『崋山烈火』の全員はてっきりSランクの冒険者でダンジョン攻略商品でゲットした戦利品が『蘇生の薬草』なのかと思っていたのだ。
「しかし、調合師の腕は国でおそらくゼンくんを超す者はいないだろうのぉ」
「そんなすごいひとが......」
「でも、『蘇生の薬草』だけでは、内臓が治りません! これでは私たちは一生眠ったままのはずです! いったいどうやってゼン様は私たちを完全回復させたのですか!!??」
聖女のマリーはさすがと言うべきか、ポーションについて詳しく知っていた。だから、どうやって治したのかが気になっていたのだ。
「その答えはこれじゃのぉ」
そしておばあさんが取り出したのは、あるポーションだった。しかし、みんなはそのすごさがわからなかった。
ある1人を除いて....。
「なんなんですかこのポーションは.......」
驚いて、腰を抜かしながらマリーが言ったためみんな何事かと思った。
「どうしたのよマリー」
「なにこれ.........」
「マリーがここまで驚くってことは、ヤバいのかこれ」
マリーは、コク、コクと頷いた。マリーは世界でたった1人の聖女であり、回復に関しては彼女の右に出るものはいないのだ。その聖女にここまで言わせるのだから、そうとうヤバいのだろうと思った。
「こ、これ、フルポーションの5倍は回復力がある.......」
「「「え」」」
「ゼン様はこれを作っておられたのですか!?」
「そうのぉ、毎日貴方たちに飲ませていたらしいのぉ」
「「「「毎日!!??」」」」
「ゼンくんは時々、うちの店に来ては泣いておったのぉ、これで起きなかったら自分のせいだって」
「ゼン様はなぜそこまで......」
「わたしも知らないけど、ゼンくんは困っている人がいたら助ける人だからのぉ」
『崋山烈火』の全員は感謝のあまり全員が泣いていた。見知らぬ自分のために泣いてくれるゼン、そして、良質なポーションを作り毎日飲ませていたことすべてに関して感謝であった。
そして、既に、彼女たちの心の中にある感情が芽生えだしたことに、彼女たちはまだ知らない。
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