第2章 緑山 22話 最悪の兆候
遅れてしまってすいません!
「え」
「私と結婚してください!」
ゼンはシェルの告白、いや求婚に戸惑っていた。以前はマリーに告白はされたが求婚はされていなかった。初めての体験でゼンの思考は停止していた。
「ゼン様、答えを聞かせてください」
返事が待ち遠しいのか、シェルはゼンを返事を唆した。シェルの顔は湯でたタコと同じくらい真っ赤であり、モジモジとしている姿が恋する乙女という感じで可愛らしい。
たかが、数十秒の沈黙がこの2人には数時間並みの時間を感じさせた。そして、ゼンは言葉を紡ぎだした。
「ごめんなさい」
この6文字がどんな思いが乗っているのかにシェルにはだいたいわかっていた。
「他に告白されている人がいるのですね?」
「はい.....」
ゼンは自分の置かれている状況を見事に当てられたことにゼンは二つ返事しかできなかった。
「そう思ってました。だって、こんな優しくてかっこいい人を放っておくなんてありえませんもの」
ゼンは生まれてからあまり褒められていないため、耐性が付いていない。そのため、シェルの意図しなった誉め言葉にすらゼンは反応してしまい、顔を赤くし俯いてしまった。
「だから何ですか?」
シェルの口調が急に真剣になり始めた。
「それが何だって言うんですか? それぐらいで私が諦めるとお思いですか?」
「.....................」
無言のゼンにシェルの言葉はマシンガンのように続けた。
「私は真剣にあなたに恋をしています。振られたからって何ですか? 私に惚れさせればいい話じゃないですか」
「だから、覚悟してくださいねゼン様♡」
ちゅっ。
「なっ!?」
シェルはゼンの頬に誓いのキスをした。自分がゼンを虜にさせるという誓いを。
◇
「ゼン殿ーー!!」
「ゼンーーー!!」
「ゼン様!!!」
『崋山烈火』の一同はゼンを探して5日が経過した。ゼンが採取をしてくると行ったきり、戻ってこなかったのだ。最初は彼女たちは待っていたが、一向に戻らないゼンを心配して見に行ってみると、姿がなかったのだ。
それからは、死に物狂いで彼女たちは捜索を続けた。
「ゼン様に手を出したやつは地の果てまで追って、私が葬り去ってやるわ」
「いや、あんたは治す側でしょ」
この5日間で精神的にも体力的にも限界が来ていた。その中で一番おかしくなってしまったのがマリーであった。おそらくゼンとの触れ合いがなくなり、不安と寂しさ、また恋しさが募っているのだ。
「なら、もうあそこしかない........」
エリの捜索魔法で緑山を隈なく探しても、見つかる気配がなかった。しかし、エリの捜索魔法で一か所だけ何も映らなかった場所があったのだ。
捜索魔法は言わば、衛星写真と同じだ。上空からの映像をエリの脳内に移しているだけなのだ。そのため当然、木や草などが映るはずなのだが、一か所だけ何も映らない場所があったのだ。
「そうね」
「あぁ」
「行って、皆殺しですわ!」
「いや、だからあんたは治す側でしょ!?」
そして、彼女たちはエリを先頭に歩み始めた。そして、彼女たちはまだ知らない。このあと、壮絶な修羅場を迎えることを。
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