第2章 緑山 13話 エルフ
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「何でこんなことに.....」
現在ゼンは牢屋に入っている。ここに入って半日は経っていた。食事も何も出されず、ましては水すらも出されなかった。
「まさか、エルフ族の住処だったとは.....」
エルフ族とは、耳が長く【古代魔法】に特化した人種である。このエルフという人種がゼンを牢屋に閉じ込めた理由である。現在、エルフ族と人族は険悪な関係が続いている。理由は実に明快であり、エルフの見た目の美しさ故の性的行為が原因である。
エルフとは生涯をともにしたいと思った者にのみ、自身の体を預けるという行為が許されるのだ。しかし、人族はそれを知らずに奴隷としてエルフ族を拉致し、性的処理をさせていた。
この行為がエルフ族の逆鱗に触れてしまい、誰も手が付けられないような険悪な関係が続いてしまっているのだ。
「今日のところは寝るか.....」
ゼンは緑山で色々な材料を採取したことによる疲労が溜まっていたため、すぐ眠りにつけた。
◇
「——————————————ん...あ、あさか」
まぶしい光がゼンの目を刺激し、ゼンの意識は覚醒する。すると、
「シェル様の容態が心配だよな...」
「不治の病だろ? まさかシェル様がかかっちまうなんて...」
「体中にあるあの赤い斑点が見ててかわいそうだよな...」
「最近、吐血をする回数が増えてきたそうだ...」
ゼンはたまたま警備に当たっていたエルフ族の人たちの会話を耳にした。
(赤い斑点に吐血...まさかっ!)
「その人もしかして、唇とか紫色をしていませんでしたか!?」
ゼンは何かに気づいた、いや焦っているようだった。
「な、なんでそれを知っているんだ!」
ゼンはこの言葉を聞いて確信した。不治の病なんて、根っからの嘘であること。また、この病気を治療しなくちゃ確実に死に至るということ。
「それは不治の病ではありません。その病気は治せますよ」
「「え?」」
ゼンは必死に警備兵を説得した。最初は聞く耳を持たなかったが、病人本人を見てもいないのに、次々と症状を当てているゼンに警備兵たちは、お互いを見てコクンッと頷いた。
「人族よ、本当に治せるんだな?」
「はい!」
「お前をここから出す! 薬は何日あればできるか?」
「素材集めに手間がかかると1週間、かからないと3日です」
「そうか...なら、俺らが手伝ってやる」
「え」
ゼンは警部兵から信じられない言葉が飛び、思わず間抜け顔を晒していた。
「だから! 俺らが手伝ってやるって言ってるだろうが! それなら、3日でできるだろ?」
「あ、ありがとうございます! 兵士さん!」
「リロだ」
「え」
「リロだって言ってるだろうが!」
ゼンに向かって荒い自己紹介をしてきた大柄な男性エルフはリロである。
「ウヨです」
もう1人の小柄な男性エルフはウヨである。
「ゼンです」
「じゃあ、素材集めに行くぞ!」
ゼン、リロ、ウヨは牢屋を後にした。
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