第1章 出会い 10話 成敗
ブックマーク8500ありがとうございます!!日間ランキング1位、週間ランキング1位、月間ランキング11位ありがとうございます!! 今回はガンへの制裁の話です!
「よぉ、Eランクのガキ、お前よく生きてたな」
「ははははは、やめなってガン」
以前、ゼンをボコボコにしたガンがまた現れたのだ。
「あの.....なんでしょうか.....」
「ゼン様? 震えが.....」
ゼンは体の震えを止めることが出来なかった。歯が殆ど折れ、意識がなくなるほど殴られたら、誰だってトラウマになるのが当たり前だ。
ゼンの異常な震えで『崋山烈火』の一同は、ガンがこの震えの原因だとすぐに理解できた。
「あれ? マリーさんじゃないすか! どうしてここに?」
ガンはマリーの姿に気が付くと、すぐさまマリーの目の前に行き、猛烈にアピールを始める。そう、ガンはマリーが好きなのである。もはや恐怖とも思えるほどの執着心に聖女の彼女ですら怖いと思うくらいだ。
「何の用ですか?」
「未来の妻になる人物と話すのは当たり前のことじゃないですか!」
「そういうのやめてもらえますか?」
ガンはマリーからは想像できないような迷惑そうな顔を向けられた。
「ゼン様? 大丈夫ですか?」
「は、はい。大丈夫です」
マリーはゼンの手を握り、安心させようとしていた。しかし、ガンはこの状況が気に食わなかった。
「てめぇ! Eランクのガキがマリーさんに近づくんじゃねーよ! また殴るぞ!」
ガンはゼンの胸倉を掴み、体を宙にあげた。しかし、ガンはこの行為の重大さに気づくのが遅かった。気付いたときには、既にガンの腕は宙を舞っていた後だった。
「がぁああああああああああ!!」
「ゼンを殴ったのは貴様なのね」
ものすごい殺気を出しながら剣姫レイはガンを、猛獣の如く睨め付けていた。
ガンはものすごい痛みに耐えながら、なんとか言葉を紡ぎだす。
「そ、それは...そう、あいつから仕掛けてきたんだ」
「ほう?」
「ほ...ほんとだ。信じてくれ」
「エリ頼むわ」
「うん.........」
エリは【天空口 心声】と詠唱し、空中に大きな口が現れた。すると、突然大きな口が動き出した。
『チョロいな、本当はむしゃくしゃしてただけだけど、どうせバレねぇし、これが終わったらもう一回殴ろ』
驚くべきことに、空中にある大きな口はガンの口と連動して動いたのだ。しかし、決してガンは自分の意志で言ったわけではない。
エリの放った【天空口 心声】は、対象にした相手の心の声を強制的に言わせるという極悪非道の魔法である。もちろん、これを使用できるのは、賢者エリのみだ。
「お、おい! 何で勝手に言ったんだ!?」
「やっぱり、貴様か」
ガンは心で思っていたことを口から勝手に出てしまったことに驚いていた。
「そ、そうだ! 俺が殴ったんだよ!」
「じゃあ、同じことしてやるよ」
「で、でもよ、あんたらだって暴言吐いてたじゃねぇか! なら、殴ってもいいじゃねぇか!」
「貴様の言うことは、尤もだ」
「なら—————————————」
「だが、私たちは決めたのだ。今まで弱いだけで傷つけてしまった人たちに謝ろうと」
『崋山烈火』の一同は、ゼンが就寝した自宅で話し合ったことがあった。それは今後についてであった。
彼女たちの意見はすぐに一致した。ゼンにひたすら協力すること、また、自分たちが傷つけてしまった人たちに謝りに行くことだ。そんな簡単に許してもらえるなんて、彼女たちは思っていなかった。それでも、ゼンを通じて感じたことがあったのだ。
人は強さだけではないということ。
「私がコロス........」
「待ってください! 反省しているなら殺さないでください」
「そ、そうだ! もう反省している! だからやめてくれ!!」
ゼンは彼女たちに言った。ガンもそれに続く。
「ゼンがそういうなら........」
しかし、【天空口 心声】はまだ続いていた。
『反省するわけねぇだろ! こんな社会の汚染物は、殴られるためだけに生きているんだよ!』
彼女たちは許せなかった。一切の反省の色が見られない、そしていつまでも自分たちの恩人をバカにするガンに対して。
【古流術 殴】
リンは武術の達人である。古流術とは武神が初めて使ったと言われている流派で、武の神髄があるとも言われている。世界で古流術が使用できるのは、リンだけだ。
リンの拳はガンの顔面にクリーンヒット。本当なら、顔面をぐしゃぐしゃに出来たが、リンはゼンの意志を尊重しようと考え、一番弱い力で打ち込んだ。
それでも、歯がほとんど壊れるほどの威力で打ち込まれたため、ガンは程なくして気絶した。




